複数のゲームを組み合わせて、発達障害のあるお子さんに「臨機応変」をトレーニング


前回、前々回でご紹介してきたヒットマンガディクシット

一回の療育でこの二つを連続してプレイさせるのは、発達障害のあるお子さんが苦手な「臨機応変」を学んでもらう上で有効です。

目的の変化に気付けるか

ヒットマンガとディクシットは、「与えられたカードに描かれた絵を元に言葉を作る」という手続きこそ似ていますが、ヒットマンガの目的が「わかりやすいセリフを作る」ことであるのに対し、ディクシットのそれは「わかりやすすぎずわかりにくすぎないお話を作る」であり、違っています。

この二つのゲームを連続してプレイしてもらうことでで、「手続きは同じままで目的が変化する」という状況を作りだすことで、発達障害のお子さんがしばしば苦手とする、目的の変化にあわせた柔軟な対応をトレーニングすることができます。

実際にやってみると、両者の目的の違いを事前に説明したにもかかわらず、変化に対応できないお子さんが一定割合出てくることがわかります。たとえば、ヒットマンガで「わかりやすいセリフを考える」という目的を引きずったまま、ディクシットでも同じくわかりやすいお話を言って、不利になってしまうことがあります。

ヒットマンガでは「わかりやすいセリフ」を考えるが・・・

ヒットマンガでは「わかりやすいセリフ」を考えるが・・・

ディクシットでは「わかりやすすぎずわかりにくすぎないお話」を考えなくてはならない。この変化に対応できない子もいる。

ディクシットでは「わかりやすすぎずわかりにくすぎないお話」を考えなくてはならない。この変化に対応できない子もいる。

「自分ルール」への固執を和らげる

目的の変化に対応できない理由の一つは、注意散漫で事前の指導者の説明をきちんと聞いていなかったことです。この場合、再度説明すれば「あっそうか」と気付いて、以後は修正できる場合がほとんどです。

もう一つはこだわりの症状から、一度確立した自分なりのルールに固執しているケースです。ASD(自閉症スペクトラム障害)のお子さんに多いです。注意散漫のケースと異なり、なんど指摘しても修正が効きません。

この場合の望ましい対応は、何もしないことです。その場合、お子さんはゲームの目的にそぐわない行動をしているので、当然負けます。

その結果生まれるお子さんの「負けて悔しい」「次は勝ちたい」という気持ちに寄り添う形で、指導者はお子さんに望ましい行動を促すことができます。

今回のケースでいえば、ゲームが終わった後、時間を見つけて本人にこのような声掛けをします。

「◯◯君、さっきのディクシット、負けちゃって残念だったね。君が負けた理由、先生見ててわかったんだけど、知りたい?」

こう問いかければ、お子さんは必ず聞きたがります。そうしたら、なるたけ具体的に答えます。

「さっきヒットマンガやったよね。そこでわかりやすいセリフ言ったら、そこそこうまく行ったでしょ。だから、◯◯君はディクシットでも同じようにやってみた。ところが、ディクシットは『わかりにくすぎずわかりやすすぎないセリフ』を言わないと勝てないんだよ」と、ここまで言えばお子さんは納得し、次からは目的に沿った行動を取れるようになります。

注意や叱責をしなくて済む

一般的な指導では、お子さんが目的から外れた行動をとったときは指導者が注意や叱責をして行動を正そうとするものですが、アナログゲーム療育では、お子さんが課題(ゲーム)の目的から外れた行動を取ったとき、その代償は「ゲームの敗北」という形でお子さん自身に返ってきます。

そのため、お子さんが目的にそぐわない行動をとったとしても、指導者は叱責や注意をしなくてすみます。むしろ言葉がけを通じて、失敗を取り返すのを一緒に手伝ってくれるパートナーになれます。

 

 言葉がけの内容とタイミングが重要

自分ルールへの固執は障害特性による部分が大きく、一度や二度の指導でお子さんが同じ失敗を繰り返さなくなると期待するのは現実的ではありません。

そこで、しばらく日を開けてから、別のゲーム同士を組み合わせて同じような目的の変化への対応力を問うトレーニングをします。すると、やっぱり目的の変化についていけずルールに固執してしまう場面が見られたります。

そのとき、「あれ?前にヒットマンガとディクシットやったときも同じような失敗していなかったっけ?」と柔らかく言葉がけします。そうすればお子さんは前回の失敗と修正パターンを思い出し、以前よりもスムーズに目的に沿った行動を取れるようになります。

このような試行錯誤の経験を繰り返していく過程で、最終的に「今この場で自分に求められていることはなんだろう?」ということを自ら考える力を身につけてもらうことが指導の目標となります。