傾聴する/辛い出来事を告白する 「アンゲーム」


ゲームではないゲーム

今回ご紹介する「アンゲーム」は、一人ずつ順番にカードをめくり、そこに書かれた質問に答えていくというゲームです。

英語で書くと”ungame”、つまり「ゲームではない」という意味です。その名の通り、ルールはあるものの勝敗や順位はなく、ゲームというよりはコミュニケーションツールに近いかもしれません。

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質問の内容は「お休みの日は何をしていますか?」といった気軽なものから、「友達とケンカしたときにどんな気持ちになりますか?」といったように、感情を深く掘り下げるものまであります。

なお、「アンゲーム」には今回ご紹介する「子ども向け」以外に、「ティーン向け」「全年齢向け」があり、それぞれ質問の内容が違います。プレイする人の年齢対象にあったものを選ぶとよいでしょう。

「子ども向け」は、5~12歳向けとありますが、私がお子さんたちにプレイしてもらった経験では、実際の対象年齢はもっと高く、8歳~18歳程度ではないかと思います。(「アンゲーム」はアメリカ生まれのゲームですから、日米の文化の差がこうしたズレを生み出しているのかもしれません。)

 

 

傾聴することを学ぶ

「アンゲーム」では、一人ずつカードをめくってそこに書かれたお題に答えていくのですが、そのとき、他の話をせず相手の話を傾聴することが求められます

傾聴するというルールがあることによって、話をするお子さんは、自分の話をじっくり聴いてもらえたという経験ができます。その経験は、次に自分が話を聴く番になったとき、相手の話を聴けることに繋がっていきます。

そうは言っても、発達障害のあるお子さんたちは相手の話にじっと耳を傾けるのは苦手な場合が多く、つい質問を投げかけたり意見を挟んでしまいがちです。幸いなことに「アンゲーム」には「質問・コメントカード」が一定数含まれており、このカードを引いた時は他の人の話に質問したり、自分の感想を述べることができます。そのため子どもたちは退屈せずに取組むことができるのです。

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子どもたちの親密度によって質問をレベル分けする

「アンゲーム」の質問カードはパート1とパート2に分かれており、パート1は気軽に答えられる質問、パート2は深刻な感情や価値観に関わる内容が含まれています。

傾聴のトレーニングとして使う場合は、一人の話が長くなったり、深刻になりすぎないよう、原則として、パート1のみを使います。

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「仲良しの友達のことを教えてください。」「びっくりする時って、どんなとき?」など、気軽な質問が多いパート1。

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「あなたは、悲しいときどうしますか」「自分がどんな性格だとおもいますか」など、感情や自己認知に踏み込む質問が多いパート2。導入は慎重に。

 

パート2の導入は慎重に

パート2は、過去の辛い出来事やネガティブな感情を呼び起こす質問を含むため、お子さんへの適用は慎重になるべきだと考えています。

具体的には、以下の二つの条件が揃っている場合のみ、パート2を使います。

  1. 指導者に心理カウンセリングの経験・知識がある
  2. 参加する子どもたちの間に信頼関係が確立されている

発達障害のあるお子さんの多くは、学校などで過去に辛い経験をしている場合が多いのですが、「アンゲーム」パート2には、「友だちから無視されたら、どんな気分になると思う?」など、辛い経験に直接触れる質問が含まれます。そのため、お子さんが質問に答えている感情がコントロールできなくなり、取り乱してしまうことがあります。

そのようなときは、別室に移動させてお子さんの気持ちが落ち着くのを待ちますが、このとき指導者にカウンセリングの経験がないと、取り乱した子と、その姿を見たほかの子の双方に対して、適切なフォローをすることができません。

別のゲームで信頼関係を作っておく

またパート2の導入にあたっては、参加する子どもたちの間に信頼関係を作っておくことも欠かせません。それがないと、お子さんが苦しい思いを勇気を出して告白したとき、他の子がきちんと聴いていなかったり、茶化すような発言をすることがあり、話したお子さんをさらに傷つけることになりかねないからです。

お子さん同士の信頼関係を作るためには、予め「アンゲーム」パート1を使い、気軽な質問でお互いの理解を深めるのが良いでしょう。

しかし、同じゲームばかりで飽きられてしまう可能性があるので、以前紹介した「かたろーぐ」のように、別のゲームでお互いの関係を深められるとなおベターです。

ランキングのお題は自由に設定できる。パッケージには見本として「食べもの」「おしごと」「おもちゃ」「たのしいこと」をまとめたシートが付属するので、まずはこれを使って遊んでみるとよい。

相手の好きなものを当てっこする「かたろーぐ」。このゲームで子ども同士の関係を深めてから、深い話し合いへと繋げていく。

「辛い出来事を聴いてもらえた」という経験は一生モノ

「アンゲーム」パート2の導入には慎重になるべきなのですが、それでも上で述べた条件が揃えば、ぜひチャレンジしていただきたいゲームです。

なぜなら、「アンゲーム」パート2では、「自分がそれまで言えなかった辛い出来事や思いを、他の子たちに聴いてもらえた」という他に代えがたい経験ができるからです。

大人が子どもの苦しい思いを聴いてあげられる機会は他にもあるでしょうが、そこにはどうしても大人対子どもの上下関係が含まれてしまいます。

それだけに、過去に辛い出来事を経験したお子さんにとっては「対等の立場である他の子どもたちに勇気を持って自分の苦しい気持ちを告白したら、受け入れてもらえた」という経験は、一生モノの価値があります。

こうした経験があれば、お子さんが成人してから自分だけで解決できない悩みに直面したとき、他の人に打ち明けること勇気を持つことができるでしょう。

 

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