利用者が集まらない放課後等デイサービスの傾向と対策


療育アドバイザーの松本太一です。

今回は放課後等デイサービスを経営されている、または、これから経営されようとしている方へ向けた記事です。

いよいよ淘汰が始まった放課後等デイサービス業界

今年に入り、開設間もない放課後等デイサービスの苦境、あるいは撤退を耳にすることが多くなりました。具体的にはすでに多くの放デイがある大都市圏で新規参入したものの、競争が激しく利用者が集まらない、という状況が多いようです。

近年、放課後等デイサービスの開設の勢いは凄まじいものがあり、いずれ淘汰が始まると予想してはいましたが、思ったより早くその段階に入ってきている様子です。

しかし、私の知っている事業所さんで、競争が激しい大都市圏においても、開設後一ヶ月で満員になった所があります。あるいは、すでに人気の放デイが新たな事業所を開設したとき、開所前から数十人の待機者が生まれたという話も聞きます。

つまり、選ばれる事業所と、そうでない事業所がある、ということです。

両者の分かれ目はなんでしょうか。

利用者が集まらない理由

新規開設したのに人が集まってこない・・・。私が見聞きした話を総合すると、苦境に立たされる放課後等デイサービスには、ある共通の傾向が見られます。

それは「利用児に提供するプログラムを用意せずに開所している」ことです。

施設の広さや人材配置といった、法律で定められた最低要件を満たしただけで、即開所に踏み切ってしまう。プログラムは、開所後、利用者が増えてきたら追々考えていけば良いや、という考え方です。

放課後等デイサービスの供給が需要に追いついていなかった時は、このような考えでも、子どもを預かってもらえるというだけで、親御さんは契約してくれました。

しかし、近隣の事業所数が増え、親御さんが子どもを通わせる事業所を選べるようになっている状況では、開設当初から他の事業所と差別化できていなければ利用者は集まりません。

そのことをもう少し詳しく解説します。

最初の体験利用者を感動させる

過去に複数の放デイと関わらせていただいた経験からすると、新規利用者獲得のための最も効果のある宣伝は、親御さんの口コミです。

幸先の良いスタートを切れた事業所は、最初に施設を見学しにきた親御さんを「ファン」につけていることが多いです。その親御さんがインフルエンサーとなって、学校やママコミュニティの中で、他の親御さんに紹介してくれ、そこから数珠繋がりに新規申込が入ってくるのです。

従って、利用者を獲得するためには、開所前からきちんとしたプログラムを用意し、最初に見学・体験に来てくれた親子がそのプログラムに満足し事業所のファンになってもらうことが、必要になります。

裏を返せばプログラムが準備出来ていない状態で利用者をお迎えすることは大変なリスクです。自分たちが不十分なプログラムしか提供できないことが、事業所を見学した親御さんを通じて地域のコミュニティに知れ渡る可能性が高いからです。

そうなってから慌ててプログラム構築に力を入れても、確立したマイナスの評判を挽回することは大変に困難です。

なぜプログラムを準備しないのか

これほどのリスクがありながら、プログラムを用意しないまま放課後等デイサービスを開設してしまうケースが後を絶たないのはなぜでしょうか。

このようなケースでは、放課後等デイサービスの経営者の方が、利用者に満足してもらえるプログラムの”レベル感”を理解していないことが多いと感じています。

放課後等デイサービスでは、小学生から高校生までの障害のあるお子さんを日に10人程度お預かりします。この発達段階も障害特性も様々なお子さんたちに、安全にしかも有意義な時間を過ごしてもらうために、どんなプログラムを用意すればいいのか。そのプログラムを実施するためには、どんな設備や教材が必要なのか、スタッフにはどんな研修を受けさせる必要があるのか。そして、トータルでどれだけのコストがかかるのか。

ここの見極めは、特に他業種から参入して来た人の場合、判断が難しいところです。その結果でてくるのが、「わからないものに金をかけるわけにはいかない」という消極的な経営判断です。

それが先に述べた「とりあえずは最低限のところから始めてみよう、プログラムは利用者が集まってから追々開発しよう」という発想に繋がります。

しかし、競争状態に入っている地域に新規参入する場合、こうした考えが自殺行為であることは先に述べた通りです。

とにかく現場に入る

自分の事業所が提供するプログラムのレベル感を判断できないというのは、飲食店に例えれば自分の店で提供している食事が美味しいのか不味いのかわからない、という状況です。

普通なら考えられないことですが、こうしたことがまま起きるのが障害のあるお子さんを対象とした放課後等デイサービスの難しさだと思います。

では、経営者はどうしたら利用者に満足してもらえるプログラムの”レベル感”をつかむことができるのでしょうか。

誰にでもでき、すぐにでき、しかもお金のかからない方法があります。「現場に入る」ことです。

もしあなたがこれから自分の放デイを構えようとしているなら、その前にぜひとも他の放デイで働く経験を持つべきです。すでに自分の事業所があるなら、今すぐにでも現場に入ることです。

現場で障害のある子どもたちと向き合うことで、一日に発達障害のあるお子さんを10人お預かりするためにどれだけの態勢を用意しなければならなのか、肌感覚でつかむことができます。

また、親御さんたちと話をすることによって、自分たちにどれくらいのことが求められているのか、掴めるようになります。

同時に、自らスタッフの一員として働くことで、様々な要請に対し、自分たちがどこまで応えられるのかも、見えてくるはずです。

こうした現場の経験を通じて、

「こうすればもっと質を高められるのではないか」

「この部分はもっと効率化できるのではないか」

といった発想、あるいは、

「この部分は自分たちの経験や知識では解決できない」

「こんな教材が必要だ」

といった課題感も生まれてきます。

こうした発想や課題感ができあがってくれば、自身の事業所を開設するにあたって新しいプログラムを開発するときでも、どれくらいのコストをかければ満足してもらえるプログラムができるか、見込みがつきやすくなります。