協力して一つのゴールを目指す 「禁断の砂漠」

協力ゲームでコミュニケーション力を高める

ゲームというと勝敗や順位を競うものばかりと思われがちですが、プレイヤー同士が協力して一つのゴールを目指す 「協力ゲーム」と呼ばれるタイプのゲームがあります。

こうしたゲームは、対戦型のゲームとちがってお互いの思惑や手の内を隠す必要がないため、闊達なコミュニケーションを促せるのが利点です。

今回は「協力ゲーム」の一つ、「禁断の砂漠」をご紹介します。

古代文明が残した飛行機械を発掘し、砂漠を脱出せよ!

冒険者のチームが、古代の砂漠都市を発掘し、太陽光で動くと噂される伝説の飛行機械を修復する任務に送り込まれました。しかし、目的地に着く少し前、予想外の砂嵐に襲われてヘリコプターが墜落してしまいます。

素早く都市を発掘して飛行機械の部品を発見し、脱出のために修理することが唯一の生き残る希望なのです。(説明書より)

「禁断の砂漠」の目的は、砂漠に埋もれた古代都市を発掘し、失われた文明の飛行機械の部品を集めて脱出すること。

まるで映画のようなストーリーを背景に、ドラマチックな展開が次から次へと起こるエキサイティングなゲームです。

古代文明のテーマにした美しいアートワークが子どもたちの冒険心をかきたてる。

砂漠に眠る古代文明テーマにした美しいコンポーネントが、プレイヤーたちの冒険心をかきたてる。

 

しかし、部品を集めるまえにフィールドが砂に埋もれてしまったり、持っている水筒の水が尽きてしまうとゲームオーバー。そうならないために、プレイヤーたちは協力しあって砂を除去したりオアシスで水を補給しつつ、部品探しを続けなければなりません。

_DSC0668

ゲーム開始時の配置。「禁断の砂漠」では、ボードの代わりにカードがフィールドを構成する。砂嵐が吹き荒れるごとにこのカードがどんどん動いて、冒険者たちは思いもよらぬところに運ばれてしまう。また、フィールドの上に置かれた十字型のカードは降り積もる砂を表し、ゲーム中どんどん積み上がってプレイヤーたちの動きを制限する。

 

_DSC0659

精巧に作られた飛行機械のミニチュア。エンジンや羅針盤など各部のパーツは、最初散らばった状態で砂漠に埋もれている。これらを手に入れて飛行機械を完成させ、砂漠から脱出することがゲームの目的だ。


協力ゲームで総合的なコミュニケーション力を高める

これまでご紹介してきたゲームは「わかりやすく伝える」「質問する力を身につける」など、指導の狙いとなる何らかのコミュニケーションスキルがありましたが、「禁断の砂漠」では、特定のスキルを高めるというよりは、総合的なコミュニケーション能力を高めることを主眼においています。

このゲームでは、参加者同士が自由にアドバイスし合ってゲームを進められるので、各参加者のコミュニケーション上の課題が顕著に現れます。そこを捉えて指導します。

典型的なのは、目立たがり屋だったり、ゲームに勝ちたい気持ちが強すぎるお子さんが、一方的に他の子の行動を指示し、他の子はその言いなりになってしまうことです。

特にADHDタイプのお子さんが他の子のプレイを黙って見ていられず、「違うよ!こうやるんだよ!」「そんなことしたらうまくいかないよ!」などと、キツイ言い方で口を出してしまい、相手の子がじっくりと考えたり、みんなで相談しあう機会がなくなってしまうことがあります。

こうなってしまうと、全員のコミュニケーションの練習になりませんし、楽しい時間にもなりません。

指導者の問いかけで適切なコミュニケーションを促す

このような場面で重要になってくるのが、司会役を務める指導者の問いかけです。

仮に目立ちたがりのAちゃんと、おとなしいB君がいたとします。
Aちゃんが勝手にゲームを仕切りだし、他の子のプレイに過剰に口を出すような場合、指導者は

「Aちゃんはこういっているけど、他にもっと良い方法はあるかな?
たとえばB君はどう思う?」

と問いかけることで、目立ちたがりのAちゃんを否定することなく、大人しいBくんにも自分の考えを主張する場面を作ってあげることができます。

また、Aちゃんのように他者に口を出したがる子に対しては、

「Aちゃん、Bくんをよく見てごらん。今、一生懸命考えているよね。まだアドバイスしないほうが良いと思わない?」

「Aちゃん、そのアドバイスの言い方厳しすぎない?そんな言い方されたらB君は困っちゃうよ。ちょっとやわらかい伝え方はないかな?」

といった言葉がけで、
他人にアドバイスするときのタイミングや言葉遣いを指導することができます。

このように指導員の適切な問いかけや言葉がけにより、お子さんは協力ゲームをプレイする過程で、自然に望ましいコミュニケーションを身に付けることができるのです。

役割の違いが活発なコミュニケーションを促す

参加者同士のコミュニケーションを促すうえで、「禁断の砂漠」が優れているのは、プレイヤーごとに異なる役割が割り当てられていることです。

_DSC0661

「給水士」「探検家」「案内人」「考古学者」「気象学者」「登山家」の6つの役割があり、それぞれの強味をもっている。この役割の違いが、プレイヤー同士の助け合いを促す。

たとえば、「登山家」は砂が降り積もって侵入できない場所も乗り越えていける、「給水士」は大型の水筒を持っており他のプレイヤーに水を分けられる、といったようにそれぞれの強味があります。

こうした役割の違いにより、

「Aくん、その砂山を乗り越えて向こうの部品を取ってきて」

「わかった。でも、そろそろ水筒の水が足りなくなってるから、給水士のBさんは後で水を分けてくれない?

と言った具合に、それぞれの役割を意識した積極的なコミュニケーションが生まれ、お互いに「協力しあっている」という実感を持つことができます。

多様な年齢のお子さんが遊べる「協力」ゲーム

「禁断の砂漠」の対象年齢は10歳からとなっていますが、療育では6~7歳くらいのお子さんも参加してもらっています。

先に書いたように、プレイヤーごとの役割の違いがあるので、時として年少の子がチームの危機を救うような場面もしばしばあります。お兄さん、お姉さんに混じってチームの一員として活躍できた、という経験は、その子にとっては大きな自信につながります。

逆に、年長の子どもたちは小さな子をどうやってサポートしていけばよいか、考える練習になります。このように、異なる年齢の子どもたちが協力しあってお互いの関係を深められるのが「協力ゲーム」の良いところです。

 

傾聴する/辛い出来事を告白する 「アンゲーム」

ゲームではないゲーム

今回ご紹介する「アンゲーム」は、一人ずつ順番にカードをめくり、そこに書かれた質問に答えていくというゲームです。

英語で書くと”ungame”、つまり「ゲームではない」という意味です。その名の通り、ルールはあるものの勝敗や順位はなく、ゲームというよりはコミュニケーションツールに近いかもしれません。

_DSC0503

質問の内容は「お休みの日は何をしていますか?」といった気軽なものから、「友達とケンカしたときにどんな気持ちになりますか?」といったように、感情を深く掘り下げるものまであります。

なお、「アンゲーム」には今回ご紹介する「子ども向け」以外に、「ティーン向け」「全年齢向け」があり、それぞれ質問の内容が違います。プレイする人の年齢対象にあったものを選ぶとよいでしょう。

「子ども向け」は、5~12歳向けとありますが、私がお子さんたちにプレイしてもらった経験では、実際の対象年齢はもっと高く、8歳~18歳程度ではないかと思います。(「アンゲーム」はアメリカ生まれのゲームですから、日米の文化の差がこうしたズレを生み出しているのかもしれません。)

 

 

傾聴することを学ぶ

「アンゲーム」では、一人ずつカードをめくってそこに書かれたお題に答えていくのですが、そのとき、他の話をせず相手の話を傾聴することが求められます

傾聴するというルールがあることによって、話をするお子さんは、自分の話をじっくり聴いてもらえたという経験ができます。その経験は、次に自分が話を聴く番になったとき、相手の話を聴けることに繋がっていきます。

そうは言っても、発達障害のあるお子さんたちは相手の話にじっと耳を傾けるのは苦手な場合が多く、つい質問を投げかけたり意見を挟んでしまいがちです。幸いなことに「アンゲーム」には「質問・コメントカード」が一定数含まれており、このカードを引いた時は他の人の話に質問したり、自分の感想を述べることができます。そのため子どもたちは退屈せずに取組むことができるのです。

_DSC0481

 

子どもたちの親密度によって質問をレベル分けする

「アンゲーム」の質問カードはパート1とパート2に分かれており、パート1は気軽に答えられる質問、パート2は深刻な感情や価値観に関わる内容が含まれています。

傾聴のトレーニングとして使う場合は、一人の話が長くなったり、深刻になりすぎないよう、原則として、パート1のみを使います。

ああ

「仲良しの友達のことを教えてください。」「びっくりする時って、どんなとき?」など、気軽な質問が多いパート1。

_DSC0491

「あなたは、悲しいときどうしますか」「自分がどんな性格だとおもいますか」など、感情や自己認知に踏み込む質問が多いパート2。導入は慎重に。

 

パート2の導入は慎重に

パート2は、過去の辛い出来事やネガティブな感情を呼び起こす質問を含むため、お子さんへの適用は慎重になるべきだと考えています。

具体的には、以下の二つの条件が揃っている場合のみ、パート2を使います。

  1. 指導者に心理カウンセリングの経験・知識がある
  2. 参加する子どもたちの間に信頼関係が確立されている

発達障害のあるお子さんの多くは、学校などで過去に辛い経験をしている場合が多いのですが、「アンゲーム」パート2には、「友だちから無視されたら、どんな気分になると思う?」など、辛い経験に直接触れる質問が含まれます。そのため、お子さんが質問に答えている感情がコントロールできなくなり、取り乱してしまうことがあります。

そのようなときは、別室に移動させてお子さんの気持ちが落ち着くのを待ちますが、このとき指導者にカウンセリングの経験がないと、取り乱した子と、その姿を見たほかの子の双方に対して、適切なフォローをすることができません。

別のゲームで信頼関係を作っておく

またパート2の導入にあたっては、参加する子どもたちの間に信頼関係を作っておくことも欠かせません。それがないと、お子さんが苦しい思いを勇気を出して告白したとき、他の子がきちんと聴いていなかったり、茶化すような発言をすることがあり、話したお子さんをさらに傷つけることになりかねないからです。

お子さん同士の信頼関係を作るためには、予め「アンゲーム」パート1を使い、気軽な質問でお互いの理解を深めるのが良いでしょう。

しかし、同じゲームばかりで飽きられてしまう可能性があるので、以前紹介した「かたろーぐ」のように、別のゲームでお互いの関係を深められるとなおベターです。

ランキングのお題は自由に設定できる。パッケージには見本として「食べもの」「おしごと」「おもちゃ」「たのしいこと」をまとめたシートが付属するので、まずはこれを使って遊んでみるとよい。

相手の好きなものを当てっこする「かたろーぐ」。このゲームで子ども同士の関係を深めてから、深い話し合いへと繋げていく。


「辛い出来事を聴いてもらえた」という経験は一生モノ

「アンゲーム」パート2の導入には慎重になるべきなのですが、それでも上で述べた条件が揃えば、ぜひチャレンジしていただきたいゲームです。

なぜなら、「アンゲーム」パート2では、「自分がそれまで言えなかった辛い出来事や思いを、他の子たちに聴いてもらえた」という他に代えがたい経験ができるからです。

大人が子どもの苦しい思いを聴いてあげられる機会は他にもあるでしょうが、そこにはどうしても大人対子どもの上下関係が含まれてしまいます。

それだけに、過去に辛い出来事を経験したお子さんにとっては「対等の立場である他の子どもたちに勇気を持って自分の苦しい気持ちを告白したら、受け入れてもらえた」という経験は、一生モノの価値があります。

こうした経験があれば、お子さんが成人してから自分だけで解決できない悩みに直面したとき、他の人に打ち明けること勇気を持つことができるでしょう。

 

(ゲームを購入される際は本ページのリンクから購入していただけると、新しいゲームを購入する際の助けとなります。ご協力よろしくお願いします!)