他者の動きに注意を払う「ウィーウィルロックユー」

他者の動きに注意を払う

発達障害のあるお子さんが共通して難しいのが、刻々と変わる周囲の状況を見て、臨機応変な対応をすることです。

AD/HDのあるお子さんは、集中の困難さゆえ、他のことに気をとられ、重要なことを聞き逃したり、大事なことを見逃してしまうことがしばしばあります。ASDのあるお子さんの場合、自身の興味に集中してそれ以外のことが見えにくいことが多くあります。

今回ご紹介する「ウィーウィルロックユー」では、周囲に合わせて一定のリズムに載って決められたポーズを取る経験を通じて、「他者の動きに注意を払う」習慣を身につけてもらうことを狙っています。

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「ウィーウィルロックユー」のルールは以下のとおりです。

1. 様々なポーズが描かれた絵が一人一枚ずつ配られます。それがその人のポーズです。

2. 全員が「ドン・ドン・パン」と、ロックンロールの名曲”We will rock you”のリズムにのって、膝と手をたたきます。

3. 自分の番の人は、リズムにあわせてまず自分のポーズをとり、次に他の誰かのポーズをとります。

4. 直前にポーズをとられた人に順番がうつります。同じく1回目で自分のポーズ、2回目で他の人のポーズをとり次の人に回していきます。

5. うっかりポーズをとることを忘れたり、自分のポーズを間違えたり、リズムを崩してしまったらその人が負けです。10回プレイし、一番失敗した回数が少ない人が勝ちです。

ゲームをプレイ中の動画がこちらのページに上がっていますので御覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=O1hPZm83X6k#t=13

失敗したことがすぐ気づけるのが良い

似通ったポーズもあり、間違えないよう注意する必要がある。

似通ったポーズもあり、間違えないよう注意する必要がある。

「ウィーウィルロックユー」プレイヤーはリズムにあわせて膝や手をたたきつつ、今誰がポーズをとっているのか、いつ自分のポーズが出るか、目をそらさず注意し続ける必要があります。

 他のことに気をとられたり、ボーっとしていると、すぐに「誰の番だっけ・・?あっ自分だ!」となって失敗してしまいます。

日常生活ではなかなかこうはいきません。
たとえば、先生に「宿題です。明日までにこのプリントをやってくるように」と言われたのを聞き逃してしまったとします。お子さんがそのことに気づくのは、翌日宿題を提出するときです。

そのときに「昨日、プリントやってくるようにいったでしょ!ちゃんと話を聞きなさい!」と叱られても、すでに過ぎたことをもう一度思い起こして気をつけることは大変困難なのです。

 「ウィーウィルロックユー」が注意力の訓練ツールとして優れているのは、相手が自分のポーズをとったのを見逃すと、次の瞬間には失敗が明らかになることです。

注意を怠った瞬間に失敗するため、お子さんは「今他の事に気をとられていたな」「さっき自分はボーっとしていたな」と自覚しやすく、また指導員も「今よそみをしていたね。残念!」「ちょっと今ボーっとしてたんじゃない?」と言葉がけがしやすいのです。

このゲームを通じて、お子さんに「他の人の動きを注目していないと負ける」という体験、続いて「しっかり注目したら勝てた」という体験を短時間のうちに繰り返してもらうことで、必要な場面では周囲を注目する習慣をつけてもらうことができます。

作業ができたら報告する「メイクンブレイク」

積み木課題をゲーム化

メイクンブレイクは、提示された見本どおりに積み木を積み上げ、時間内により多くの課題を完成させた人が勝ちとなるゲームです。

見本通りに積み木を積み上げることは、眼と手の協調性を高める目的で、発達障害のあるお子さんに最もよく用いられる療育課題の一つです。

メイクンブレイクは、その積み木課題にゲーム要素を取り入れ、よりお子さんが楽しめるように工夫されています。

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自分でタイマーをセットする

メイクンブレイクは、最初にお子さんがサイコロをふり、出た数字にあわせたタイマーを自分でセットします。

そしてスタートボタンを押し、積み木を組み立て始めます。見本通り完成したら「できました」と報告します。

指導者は、完成した積み木が見本通りであれば、次の課題を提示します。タイマーが切れるまで全部でいくつの課題ができたのかを競います。

実際のプレイの様子はすごろくやさん製作の動画を御覧ください。

 

お子さんの自主性を育む

メイクンブレイクを用いたトレーニングでは、指導者はできるだけお子さんにアドバイスしないようにすることが大切です。

「サイコロを振り、出た数字に合わせてタイマーをセットする。心の準備ができたらスタートボタンを押し、出された課題通りに積み木を組む。完成したら『できました』と報告する」

という一連の流れを、指示がなくとも自律してスピーディにできるようになることがこの課題の目標だからです。

自閉症のあるお子さんの中には、視覚認知に優れ、目で見たものを正確に描いたり、細かいパズルを素早く作れる子がいますが、そうした子の場合、メイクンブレイクで大人も驚くようなスピードで積み木を組み立てることができます。

ところが完成を報告する段階で、つまづいてしまうことが多々あります。

ほぼ見本通りにできているのに、積み木の位置や向きの些細なズレを修正することにこだわりすぎ、いつまで経っても「できました」と報告せず、そのまま時間切れになってしまうことが多いのです。

 

職場で現れるこだわりの強さ

この「ささいなことにこだわりすぎて作業が進まない」という問題は、自閉症のある大人の人が職場で働くときにしばしば見受けられることです。

以前、企業の人事担当者の方から、

「自閉症のある青年を雇って工場のラインで作業させているのだが、ほんのちょっとでも異常があるとすぐに緊急停止ボタンを押してしまう。そのため一日に何度も生産が止まってしまい、効率が悪くなって困っている」

というお話を聞いたことがあります。

異常があったらすぐにラインを停めないといけないのは確かなのですが、その自閉症のある青年の判断基準が厳密すぎるため、、結果的に生産効率が犠牲になってしまっているのです。

ちょうどメイクンブレイクで正しい積み方に厳密になりすぎ、得点の機会を逃してしまうのと同じ形です。

 

状況に応じた適切な判定を、「メイクンブレイク」で学ぶ

大切なことは、自分の基準で判定してしまうのではなく、その場で求められている基準を見て、そこにあわせて判定できるようになることです。

「メイクンブレイク」でその部分を指導することができます。

具体的には、ゲームを進めて行く上で、チェックが厳密すぎるお子さんがいた場合、その子順番を最後に回します。

その上で、他の子が課題を完成させるのを見せ、指導員が「これはちょっとズレすぎてるよ。やりなおし。」あるいは「うーんちょっとズレてるけどこれぐらいならOK」などと判定している場面に注目させます。

その際「さっきのはダメだけど、今くらいのズレならOKみたいだよ。」とアドバイスし、どのくらいの厳密さで組み立てれば良いのか、具体的にイメージを掴ませてあげます

こうした指導により、チェックが厳しすぎたお子さんはその基準を緩め、ほどほどのところで「できました」と報告できるようになります。その結果得点が増え、順位も上がってきます。

こうした経験をくりかえすことで自分独自の基準にこだわるお子さんに、その場その場で求められる基準があり、そこに合わせることで高いパフォーマンスが上げられるという意識をつけてもらうことができます。

その意識は、その子が将来働くときに必要になります。

協力して一つのゴールを目指す 「禁断の砂漠」

協力ゲームでコミュニケーション力を高める

ゲームというと勝敗や順位を競うものばかりと思われがちですが、プレイヤー同士が協力して一つのゴールを目指す 「協力ゲーム」と呼ばれるタイプのゲームがあります。

こうしたゲームは、対戦型のゲームとちがってお互いの思惑や手の内を隠す必要がないため、闊達なコミュニケーションを促せるのが利点です。

今回は「協力ゲーム」の一つ、「禁断の砂漠」をご紹介します。

古代文明が残した飛行機械を発掘し、砂漠を脱出せよ!

冒険者のチームが、古代の砂漠都市を発掘し、太陽光で動くと噂される伝説の飛行機械を修復する任務に送り込まれました。しかし、目的地に着く少し前、予想外の砂嵐に襲われてヘリコプターが墜落してしまいます。

素早く都市を発掘して飛行機械の部品を発見し、脱出のために修理することが唯一の生き残る希望なのです。(説明書より)

「禁断の砂漠」の目的は、砂漠に埋もれた古代都市を発掘し、失われた文明の飛行機械の部品を集めて脱出すること。

まるで映画のようなストーリーを背景に、ドラマチックな展開が次から次へと起こるエキサイティングなゲームです。

古代文明のテーマにした美しいアートワークが子どもたちの冒険心をかきたてる。

砂漠に眠る古代文明テーマにした美しいコンポーネントが、プレイヤーたちの冒険心をかきたてる。

 

しかし、部品を集めるまえにフィールドが砂に埋もれてしまったり、持っている水筒の水が尽きてしまうとゲームオーバー。そうならないために、プレイヤーたちは協力しあって砂を除去したりオアシスで水を補給しつつ、部品探しを続けなければなりません。

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ゲーム開始時の配置。「禁断の砂漠」では、ボードの代わりにカードがフィールドを構成する。砂嵐が吹き荒れるごとにこのカードがどんどん動いて、冒険者たちは思いもよらぬところに運ばれてしまう。また、フィールドの上に置かれた十字型のカードは降り積もる砂を表し、ゲーム中どんどん積み上がってプレイヤーたちの動きを制限する。

 

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精巧に作られた飛行機械のミニチュア。エンジンや羅針盤など各部のパーツは、最初散らばった状態で砂漠に埋もれている。これらを手に入れて飛行機械を完成させ、砂漠から脱出することがゲームの目的だ。

協力ゲームで総合的なコミュニケーション力を高める

これまでご紹介してきたゲームは「わかりやすく伝える」「質問する力を身につける」など、指導の狙いとなる何らかのコミュニケーションスキルがありましたが、「禁断の砂漠」では、特定のスキルを高めるというよりは、総合的なコミュニケーション能力を高めることを主眼においています。

このゲームでは、参加者同士が自由にアドバイスし合ってゲームを進められるので、各参加者のコミュニケーション上の課題が顕著に現れます。そこを捉えて指導します。

典型的なのは、目立たがり屋だったり、ゲームに勝ちたい気持ちが強すぎるお子さんが、一方的に他の子の行動を指示し、他の子はその言いなりになってしまうことです。

特にADHDタイプのお子さんが他の子のプレイを黙って見ていられず、「違うよ!こうやるんだよ!」「そんなことしたらうまくいかないよ!」などと、キツイ言い方で口を出してしまい、相手の子がじっくりと考えたり、みんなで相談しあう機会がなくなってしまうことがあります。

こうなってしまうと、全員のコミュニケーションの練習になりませんし、楽しい時間にもなりません。

指導者の問いかけで適切なコミュニケーションを促す

このような場面で重要になってくるのが、司会役を務める指導者の問いかけです。

仮に目立ちたがりのAちゃんと、おとなしいB君がいたとします。
Aちゃんが勝手にゲームを仕切りだし、他の子のプレイに過剰に口を出すような場合、指導者は

「Aちゃんはこういっているけど、他にもっと良い方法はあるかな?
たとえばB君はどう思う?」

と問いかけることで、目立ちたがりのAちゃんを否定することなく、大人しいBくんにも自分の考えを主張する場面を作ってあげることができます。

また、Aちゃんのように他者に口を出したがる子に対しては、

「Aちゃん、Bくんをよく見てごらん。今、一生懸命考えているよね。まだアドバイスしないほうが良いと思わない?」

「Aちゃん、そのアドバイスの言い方厳しすぎない?そんな言い方されたらB君は困っちゃうよ。ちょっとやわらかい伝え方はないかな?」

といった言葉がけで、
他人にアドバイスするときのタイミングや言葉遣いを指導することができます。

このように指導員の適切な問いかけや言葉がけにより、お子さんは協力ゲームをプレイする過程で、自然に望ましいコミュニケーションを身に付けることができるのです。

役割の違いが活発なコミュニケーションを促す

参加者同士のコミュニケーションを促すうえで、「禁断の砂漠」が優れているのは、プレイヤーごとに異なる役割が割り当てられていることです。

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「給水士」「探検家」「案内人」「考古学者」「気象学者」「登山家」の6つの役割があり、それぞれの強味をもっている。この役割の違いが、プレイヤー同士の助け合いを促す。

たとえば、「登山家」は砂が降り積もって侵入できない場所も乗り越えていける、「給水士」は大型の水筒を持っており他のプレイヤーに水を分けられる、といったようにそれぞれの強味があります。

こうした役割の違いにより、

「Aくん、その砂山を乗り越えて向こうの部品を取ってきて」

「わかった。でも、そろそろ水筒の水が足りなくなってるから、給水士のBさんは後で水を分けてくれない?

と言った具合に、それぞれの役割を意識した積極的なコミュニケーションが生まれ、お互いに「協力しあっている」という実感を持つことができます。

多様な年齢のお子さんが遊べる「協力」ゲーム

「禁断の砂漠」の対象年齢は10歳からとなっていますが、療育では6~7歳くらいのお子さんも参加してもらっています。

先に書いたように、プレイヤーごとの役割の違いがあるので、時として年少の子がチームの危機を救うような場面もしばしばあります。お兄さん、お姉さんに混じってチームの一員として活躍できた、という経験は、その子にとっては大きな自信につながります。

逆に、年長の子どもたちは小さな子をどうやってサポートしていけばよいか、考える練習になります。このように、異なる年齢の子どもたちが協力しあってお互いの関係を深められるのが「協力ゲーム」の良いところです。

 

傾聴する/辛い出来事を告白する 「アンゲーム」

ゲームではないゲーム

今回ご紹介する「アンゲーム」は、一人ずつ順番にカードをめくり、そこに書かれた質問に答えていくというゲームです。

英語で書くと”ungame”、つまり「ゲームではない」という意味です。その名の通り、ルールはあるものの勝敗や順位はなく、ゲームというよりはコミュニケーションツールに近いかもしれません。

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質問の内容は「お休みの日は何をしていますか?」といった気軽なものから、「友達とケンカしたときにどんな気持ちになりますか?」といったように、感情を深く掘り下げるものまであります。

なお、「アンゲーム」には今回ご紹介する「子ども向け」以外に、「ティーン向け」「全年齢向け」があり、それぞれ質問の内容が違います。プレイする人の年齢対象にあったものを選ぶとよいでしょう。

「子ども向け」は、5~12歳向けとありますが、私がお子さんたちにプレイしてもらった経験では、実際の対象年齢はもっと高く、8歳~18歳程度ではないかと思います。(「アンゲーム」はアメリカ生まれのゲームですから、日米の文化の差がこうしたズレを生み出しているのかもしれません。)

 

 

傾聴することを学ぶ

「アンゲーム」では、一人ずつカードをめくってそこに書かれたお題に答えていくのですが、そのとき、他の話をせず相手の話を傾聴することが求められます

傾聴するというルールがあることによって、話をするお子さんは、自分の話をじっくり聴いてもらえたという経験ができます。その経験は、次に自分が話を聴く番になったとき、相手の話を聴けることに繋がっていきます。

そうは言っても、発達障害のあるお子さんたちは相手の話にじっと耳を傾けるのは苦手な場合が多く、つい質問を投げかけたり意見を挟んでしまいがちです。幸いなことに「アンゲーム」には「質問・コメントカード」が一定数含まれており、このカードを引いた時は他の人の話に質問したり、自分の感想を述べることができます。そのため子どもたちは退屈せずに取組むことができるのです。

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子どもたちの親密度によって質問をレベル分けする

「アンゲーム」の質問カードはパート1とパート2に分かれており、パート1は気軽に答えられる質問、パート2は深刻な感情や価値観に関わる内容が含まれています。

傾聴のトレーニングとして使う場合は、一人の話が長くなったり、深刻になりすぎないよう、原則として、パート1のみを使います。

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「仲良しの友達のことを教えてください。」「びっくりする時って、どんなとき?」など、気軽な質問が多いパート1。

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「あなたは、悲しいときどうしますか」「自分がどんな性格だとおもいますか」など、感情や自己認知に踏み込む質問が多いパート2。導入は慎重に。

 

パート2の導入は慎重に

パート2は、過去の辛い出来事やネガティブな感情を呼び起こす質問を含むため、お子さんへの適用は慎重になるべきだと考えています。

具体的には、以下の二つの条件が揃っている場合のみ、パート2を使います。

  1. 指導者に心理カウンセリングの経験・知識がある
  2. 参加する子どもたちの間に信頼関係が確立されている

発達障害のあるお子さんの多くは、学校などで過去に辛い経験をしている場合が多いのですが、「アンゲーム」パート2には、「友だちから無視されたら、どんな気分になると思う?」など、辛い経験に直接触れる質問が含まれます。そのため、お子さんが質問に答えている感情がコントロールできなくなり、取り乱してしまうことがあります。

そのようなときは、別室に移動させてお子さんの気持ちが落ち着くのを待ちますが、このとき指導者にカウンセリングの経験がないと、取り乱した子と、その姿を見たほかの子の双方に対して、適切なフォローをすることができません。

別のゲームで信頼関係を作っておく

またパート2の導入にあたっては、参加する子どもたちの間に信頼関係を作っておくことも欠かせません。それがないと、お子さんが苦しい思いを勇気を出して告白したとき、他の子がきちんと聴いていなかったり、茶化すような発言をすることがあり、話したお子さんをさらに傷つけることになりかねないからです。

お子さん同士の信頼関係を作るためには、予め「アンゲーム」パート1を使い、気軽な質問でお互いの理解を深めるのが良いでしょう。

しかし、同じゲームばかりで飽きられてしまう可能性があるので、以前紹介した「かたろーぐ」のように、別のゲームでお互いの関係を深められるとなおベターです。

ランキングのお題は自由に設定できる。パッケージには見本として「食べもの」「おしごと」「おもちゃ」「たのしいこと」をまとめたシートが付属するので、まずはこれを使って遊んでみるとよい。

相手の好きなものを当てっこする「かたろーぐ」。このゲームで子ども同士の関係を深めてから、深い話し合いへと繋げていく。

「辛い出来事を聴いてもらえた」という経験は一生モノ

「アンゲーム」パート2の導入には慎重になるべきなのですが、それでも上で述べた条件が揃えば、ぜひチャレンジしていただきたいゲームです。

なぜなら、「アンゲーム」パート2では、「自分がそれまで言えなかった辛い出来事や思いを、他の子たちに聴いてもらえた」という他に代えがたい経験ができるからです。

大人が子どもの苦しい思いを聴いてあげられる機会は他にもあるでしょうが、そこにはどうしても大人対子どもの上下関係が含まれてしまいます。

それだけに、過去に辛い出来事を経験したお子さんにとっては「対等の立場である他の子どもたちに勇気を持って自分の苦しい気持ちを告白したら、受け入れてもらえた」という経験は、一生モノの価値があります。

こうした経験があれば、お子さんが成人してから自分だけで解決できない悩みに直面したとき、他の人に打ち明けること勇気を持つことができるでしょう。

 

(ゲームを購入される際は本ページのリンクから購入していただけると、新しいゲームを購入する際の助けとなります。ご協力よろしくお願いします!)

相手を理解する 「かたろーぐ」

相手への理解を深めるゲーム

今回ご紹介する「かたろーぐ」は、身の回りにあるカタログを使って「好きなものランキング」を作成し、それを他に人に当ててもらうというゲームで、子どもたちがお互いへの理解を深めるのに最適です。

こうしたゲームを療育に導入すると、子ども同士の関係性が深まり、和やかで居心地のよい空間が生まれます。

購入先:すごろくや http://sgrk.blog53.fc2.com/?no=3186

ランキングのお題は自由に設定できる。パッケージには見本として「食べもの」「おしごと」「おもちゃ」「たのしいこと」をまとめたシートが付属するので、まずはこれを使って遊んでみるとよい。

「かたろーぐ」は身のまわりにあるものカタログなどを使ってランキングを作るゲーム。パッケージには見本として「食べもの」「おしごと」「おもちゃ」「たのしいこと」をまとめたシートが付属する。まずはこれを使って遊んでみよう。

「かたろーぐ」には様々な遊び方がありますが、ここでは集団で遊ぶルールを紹介します。

一人のプレイヤーが、カタログの中から7つの品目を選び、石でできたマーカーをおきます。それらの品目を好きな順にランキングした上で、各品目に対応するマークが描かれたカードをランキング順に伏せて並べます。

他のプレイヤーは、1位がどの品目であるかを当てます。当てた人は、きれいなハート型のトークンがもらえます。2位以降も同じやり方を繰り返していき、最後にこのトークンを一番多く集めた人が優勝です。

無限の発展性

「かたろーぐ」では、身の周りにあるものをなんでもランキングにできるため、無限の発展性があります。以下にその例を挙げてみます。

宅配ピザ屋のメニューでかたろーぐ。

宅配ピザ屋のチラシで、どれが一番好きなピザかを当てる。外食したときはお店のメニューでやってみるのもよい

手持ちのゲームでかたろーぐ。ゲームをチョイスする際の参考にもなる。

好きなアナログゲームをランキング。指導者にとっては子どもたちの好みを把握するきっかけになる。

タブレットでかたろーぐ。Google画像検索を使えば好きなテーマでプレイできる。

タブレットでGoogle画像検索を使えば、カタログがなくとも好きなテーマでプレイできる。

発達障害のある子の人間関係が拡げるきっかけに

「かたろーぐ」を使うことで、子ども同士が相手の好みを知り、お互いを理解し合うきっかけを作り出すことができます。

たとえば、自閉症のあるお子さんで、他者への関心が薄く、電車や飛行機の図鑑ばかり見ている子がいました。そのお子さんに、「かたろーぐ」をつかって他の子との関係作りを試みたことがあります。

その子(A君とします)が、図鑑を拡げて大好きなジャンボジェットの写真を眺めていました。そこで「A君、ちょっとゲームをしてみよう。この中で一番好きな旅客機から順番にこれ置いてみて」とマーカーを渡しました。

ジャンボジェットというのは、エアバスもボーイングもみんな同じような形をしていて、素人目には目立った違いはないように見えるのですが、A君は躊躇なくマーカーを置いていきます。彼の中にはハッキリとした好みの序列があるのです。

ランキングができあがったところでほかのお子さんを呼びました。呼ばれてきた子どもたちは、A君がランキングしたジャンボジェット機の写真をみて「大体どれも同じにみえるけど・・・」と困惑気味。まずはあてずっぽうで1位を当てさせました。その結果、みんなが予想した最新型の機体はハズレ。Aくんが選んだのは旧型の機体でした。

「この旅客機はどうして一番好きなの?」と聞くと、「搭乗口の形がカッコいいから。」とA君。子どもたちから「うわーそんなところ見るんだ」「言われてみればカッコいいかも・・・」などと感想が漏れました。

2位を当てる際、子どもたちは前回の失敗を教訓に、搭乗口を気にしながらA君の好きそうな機体を選びました。ところがまたもやハズレ。「この旅客機が2番めに好きな理由はなに?」と聞かれたA君、今度は「尾翼がカッコいい。」と答えました。「うわーそっちかー!」とみんな大爆笑でした。

 

「他者理解」のプロセスを構造化できる

「かたろーぐ」を療育ツールとしてみると、「他者を理解する」というプロセスを構造化した点が大変画期的です。

A君のジャンボジェット機に細やかで独特な興味は、そのままでは他の子と共有するのが難しかったでしょう。しかし、「かたろーぐ」という構造化されたゲームを通じて、ほかの子と楽しみながらその価値観を共有することができました。

とはいえ、指導はこれで終わりではありません。「今度はBちゃん、君の好きなプリキュアでかたろーぐやってみようか」と別の子を誘ってみました。今度はA君が他者の好みを当てる番です。

プリキュアは実は歴代で40人以上おり、ジャンボジェット機以上に判別が難しいのです(笑)。それでもお題を出す側で一度ゲームを経験しているAくんは見通しがついて安心できたのか、Bちゃんがどのプリキュア好きか自分なりに考えてプレイできていました。

自閉症で他者との関係が薄かったA君にとって、「かたろーぐ」をプレイした経験が、自分の価値観を他者に理解してもらう体験となり、加えて他者の価値観を理解するよいトレーニングになりました。

様々な遊び方を試してみよう

「かたろーぐ」は、福井県のインディーズゲームブランド「ちゃがちゃがゲームズ」さんが制作されています。発達障害のあるお子さんのプレイも積極的に推奨されています。ウェブサイトには、特別支援級での実践や、ご自宅で障害のあるお子さんとプレイした様子も記載されていますので、ぜひ一度ご覧になることをおすすめします。

ちゃがちゃがゲームズ

 

 

 

 

 

「コロポックル 見~つけた!」寄贈レポートを掲載いただきました

奈良でアナログゲームを制作しておられる「ペンとサイコロ」様から、「コロポックル 見~つけた!」というゲームを寄贈いただきました。早速お子さんたちにプレイしてもらい、その結果をレポートさせていただきました。

学童にもアナログゲームを!

「ペンとサイコロ」さんは地域の学童にもゲームを寄付しておられます。単にゲームを寄贈しただけでなく、製作者さんが実際に教室に出向き、お子さんたちが自分たちで遊べるようになるまでフォローをされているのが素晴らしいとおもいます。

発達障害のある子向けの療育を謳っている当サイトですが、実は健常のお子さんが通う学童の指導員の方からのお問い合わせも入ってきています。「様々な年齢のお子さんを一日に数十人もお預かりするので、それぞれの子が安全に遊べる遊びを用意するのが大変で・・・」というお悩みをお持ちの方が多いようです。

上記サイトの記事に載っていた指導員の方のお話を転載させていただきます。

「子供は外で遊ぶのが好きですが、延長保育の子供は外も暗く、人数も少なくなるので中で遊べる遊具が必要です。このゲームは主にそんな時に遊ばせて貰っています。本も飽きが来るので、色々な遊びがあるのは有り難いです」

 

多くの学童が直面している状況であるとおもいます。こんなとき、アナログゲームが年齢幅のあるお子さんが安全に楽しめる有効なツールになるのではないかと思っています。

自閉症のあるお子さんの集団参加を促す 「虹色のへび」 

自閉症のあるお子さんの視覚優位性

自閉症のあるお子さんの多くが備える特性として、言葉よりも、色や形といった視覚の認知力が強いことがあります。

この視覚優位の特性を生かして、家庭では「歯磨きしましょう」と声をかける代わりに、「歯磨きしている場面の絵や写真」を見せるなどの工夫をすると伝わりやすいのは、この障害と関わる人の間では、よく知られるところです。

他方、この視覚認知の強さは、特定の対象に対する固執の要因ともなっています。たとえば、積み木、お絵かき、パズル、Youtubeの動画など視覚的刺激を与えてくれる対象に長時間没頭し、声をかけても頑として応じないことがしばしばあります。

幼稚園・保育園等でみんなで輪になって遊ぶ中、一人だけ参加を拒否してパズルやブロック遊びに熱中したり、家で何時間もYoutubeばかりを見ているお子さんの様子をみて、先々のことを心配する親御さんは少なくありません。

このような一人遊びの傾向について、本人の興味が尊重されるべきなのはもちろんなのですが、療育的観点からすると、自閉症児のお子さんもいずれは他者との関係を結びながら、学び、働いていくわけですから、彼らなりのやり方で集団に参加し、他者との関係作りを学んでほしいと思っています。

そこで今回は、自閉症のあるお子さんの特徴である視覚優位性を生かしつつ、集団参加を促すゲームを紹介します。

色や形への興味が強い自閉症のお子さん。その集中力を将来に生かすためにも、一定のコミュニケーションは必要だ。

色や形への興味が強い自閉症のお子さん。その圧倒的な集中力を将来社会で生かすためにも、他者と関係を作る力は必要だ。

視覚優位性を生かして集団参加を促す「虹色のへび」

ドイツAMIGO社の「虹色のへび」は、美しい色のカードを並べてヘビを完成させるゲーム。そのカラフルさは自閉症のあるお子さんの心を掴むのに最適です。

 

様々に変化する色のヘビが子どもたちの興味を惹く

様々に変化する色のヘビが子どもたちの興味をガッチリ掴む。頭としっぽがそろう(一番上のへび)と、揃えた人がそのヘビをもらえる。

ルールはシンプルです。

ヘビの胴体が描かれたカードを、順番に場に並べていきます。色の合うカード同士はつなぐことができます。繋がる色がない場合はそのまま場に置きます。

胴体のほか、頭としっぽのカードが各色一組ずつ入っています。頭としっぽが揃って、一匹のへびが完成すると、完成させた人がそのヘビのカードをまとめてもらえます。なお、虹色はどの色にもつなげることができます。

めくる札がなくなった時点で、一番多く札を撮った人が勝ちです。

虹色はどの色にもつなげることのできるボーナスカード。

虹色はどの色にもつなげることのできるボーナスカード。

まずは一人プレイから

療育として自閉症のお子さんに集団参加を促す場合、いきなり集団に入れるのではなく、まずは指導員の見守りのもと一人で遊んでルールを理解してもらいます。

1枚ずつ山札をめくって、ヘビを作っていってもらいます。

ヘビが完成した時、指導員は「ヘビ完成!やったね!」とハイタッチしてそのカードをお子さんに持たせてあげます。こうすることで、ヘビを完成させるのが好ましい行為であること、そのカードが自分にとっての「報酬」であることを理解してもらいます。

ヘビを完成させるのがよいことであることを教えるために、ハイタッチはややオーバー気味に。

ハイタッチは笑顔で、ややオーバー気味に。ヘビを完成させることが好ましい行動であることをお子さんに理解してもらおう。

このように、指導員の声掛けのもと何度か遊んでいると、ヘビが揃ったときお子さんに笑顔がでたり、「やったぁ」と声が聞かれるようになります。「ヘビの完成させる」というゲームの目的をお子さんが理解したことになります。そうなれば、集団に参加させる準備ができたことになります。

集団に参加させてみる

一人遊びの段階では、「虹色のへび」はお子さんにとって単なる絵合わせパズルでしかありません。初めて集団に参加したお子さんも、最初はいつも通り一人淡々とプレイしていく場合が多いです。しかし、プレイを進めていくうち、いつもの一人遊びとちがう「他の子どもがヘビを揃えて取っていく」という状況が生まれます。

これまで一人で「虹色へび」を遊んでいたお子さんからすると、いつも自分が全部揃えてもらえていたはずのヘビを、今日に限ってほかの子が奪っていくことになります。これは中々悔しい経験で、中には泣く子や怒る子もいますが、あまり頓着せずそのままゲームを進めてしまいます。なぜならゲームが進んでいくうち、自分もヘビをもらうことができるチャンスが必ず巡ってくるからです。

カードの並びによってはこんな赤ちゃんヘビができることも。

カードの並びによってはこんな小さなヘビができることも。「赤ちゃんヘビだね!」と言葉を添えてあげると、子どもたちは盛り上がる。

頭と頭、しっぽとしっぽで揃えてしまう子もいる。そうなるとちょっとグロテクスな外見になる。先の赤ちゃんへびと並んで、ビジュアル的にハッとさせられる場面がゲーム中に何度か起きてくるのがこのゲームの魅力

頭と頭、しっぽとしっぽで揃えてしまう子もいる。ちょっとグロテスク。上記の赤ちゃんへびと並んで、ビジュアル的にハッとさせられる場面が何度も起きてくるのがこのゲームの魅力。

ワンゲーム終わったら枚数を数え、勝ち負けを決めます。
指導員は、お子さんが優勝したら「優勝だ!やったね!」と大げさに喜んでお子さんとハイタッチ。負けたら「うわー残念だったねぇ!」とこれまたオーバーリアクションで残念がります。こうした指導員の様子をみて、お子さんは勝敗の概念を学んでいきます。
こんな形で「虹色のへび」を数回プレイしていくと、最初は指導員に言われるがままに淡々とプレイしていたお子さんが、やがて指導員の声掛けがなくとも、勝利をよろこび、敗北を残念がるようになってきます。このことはお子さんの中に勝敗の概念の形成されてきたことを意味します。
勝敗概念の形成は、「ゲームという場に自分以外の他者がいて、自分と同じ条件で競いあっている」ことの理解につながっています。言い換えれば、自分一人の世界で過ごしていたお子さんが、ゲームを通じて、「他者と場を共有する」ことを学んだわけです。

 

涙する親御さんも・・・

自閉症のあるお子さんが集団参加のきっかけをつかむゲームとして「虹色のへび」は最適ですが、前回ご紹介した「スティッキー」も色や形の特徴がハッキリしているので同じ目的に使えます。一つのゲームだと飽きやすいので、いくつかのゲームを組み合わせるのが有効です。

これらのゲームを通じて、それまで一人遊びしかしなかったお子さんが、いつの間にか友達の輪の中で笑いながらゲームを楽しんでいる場面を、私はこれまで何度も見てきました。

またそのお子さんの姿をみて、涙する親御さんもいました。

このような光景を見るたびにシンプルなゲームが持つ力を改めて実感します。

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幅広い発達段階のお子さんたちを一つの集団で療育 「スティッキー」

幅広い発達段階のお子さんを一つの集団で療育する

アナログゲーム療育の利点の一つは、発達段階の異なるお子さんを一つの集団で療育できる点にあります。

そのことを「スティッキー」というゲームを用いてご説明します。

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カラフルな造形。箱にしまわず、風変わりなインテリアとして飾っておくのもいい。

ルールを説明します。

まず、青・赤・黄の太さが異なるスティックをリングで束ね、タワー状に立てます。

プレイヤーはサイコロを振り、出た目と同じ色のスティックを順番に抜き取っていきます。やがてタワーが倒れてしまったら、倒した人の負けです。

スティックにはそれぞれ得点(青=3点、赤=2点、黄=1点)が設定されており、残ったプレイヤーのうち、抜いたスティックの合計得点が最も高い人が優勝です。

もしスティックを抜いたらタワーが崩れてしまうと思ったら、自分がそれまで抜いた中から同じ色のスティックを場に捨てることで、その回はパスできます。

発達段階にあわせて、提示するルールや言葉がけの内容を変える

「スティッキー」の優れた点は、3歳程度のお子さんから7,8歳程度のお子さんまでが、同じゲームをプレイしながら、それぞれのレベルにあった成長の機会を作れることです。

以下、レベル別に説明していきします。

最初のステップは「集団に参加する」ことです。健常児では3歳程度に相当します。この段階のお子さんには、集団参加のハードルを下げるためにできるだけシンプルなルールでプレイしてもらいます。そこでサイコロによる色指定を免除し、好きな色のスティックをどれでも抜いて良いことにします。

その子が上手にスティックを抜けたときは指導員がややオーバー気味に拍手やハイタッチをして賞賛します。自身の行動が他者に褒められるという経験を通じて、「集団に参加すると楽しい」というお子さんの認識を形作っていきます。

発達段階が低いお子さんには、極力シンプルなルールで集団参加を促す。

発達段階が低いお子さんには、サイコロの抜きのシンプルルールで集団参加を促す。

次のステップは、「ルールを守る」ことです。本来のルールにしたがい、サイコロを振って出た色のスティックを抜いてもらいます。

しばしば、お子さんがサイコロの色を無視して自分の好きな色のスティックを取ろうとすることがあります。その際すぐに制止せず、まずはスティックを抜かせ、サイコロと見比べさせます。

「今サイコロの色は何色?」

「取ったスティックは何色?」

「二つは同じ?それとも違う?」

と具体的に問いかけ、何色のスティックを抜けば良かったのか確認できたら、引き直させます。こうすることでルールの理解を促すことができます。

 

第三のステップは「順番を守る」ことです。最初の二つのステップでは、自分の順番を理解することは難しいため指導員が「◯◯ちゃんの番だよ」などと声掛けする必要があります。

ですが、このステップに達したお子さんの順番では、指導員は名前は呼ばず「次はだれの番かな?」と全体に向かって問いかけます。お子さんが自分で順番で気づくことを促すためです。

最初のうち、自分で気づくのは難しいですが、ほかの子がプレイしているとき「次がキミの番だよ」となどと声掛けすることで、周囲を意識して、自分の番が来たら自発的にサイコロを振れるようになります。

順番を守ることは、「相手や場の状況を読み取り、そこに合わせて自発的に動ける力を養う」という、アナログゲーム療育最大の目標への、最初の段階になります。

 

第四のステップは「合理的に考える」ことです。精神年齢的には7~8歳にあたります。この段階のお子さんに対しては、そろそろタワーが倒れそうなとき、「自分がそれまで抜いたスティックの中から同じ色のものを場に捨てれば、その回はパスできる」という上級ルールを提示します。

安全策でスティックを捨てるか、危険を犯してでも次のスティックを取りに行くか。ジレンマに悩みながら、状況に応じた合理的な判断力を身につけてもらいます。

ゲーム後半の状況。写真ではサイコロの目のとおり黄色のスティックを抜くと、タワーが倒れてしまうことが明らか。こんな時、以前抜いた中から同色のスティックを箱に捨てることで、自分の順番をパスできる。このルールが入ることで一気に戦略性が出る。

ゲーム後半の状況。サイコロは黄色だが、残り一本の黄色スティックを抜くと、タワーが崩れるのは明らか。こんな時、以前抜いた中から同色のスティックを箱に捨てることで、自分の順番をパスできる。そのことに気付いて最悪の結果を避けることができるか。

同じゲーム 異なる指導目標

上記の内容をまとめると、スティッキーでは、

  1. 集団に参加する
  2. ルールを守る
  3. 順番を守る
  4. 合理的に考える

という段階の異なる4つの目標を同時に指導することができます。そのため、知的能力が2~3歳くらいから7~8歳くらいまでのお子さんを一つの集団で療育することが可能です。

多様な発達段階のお子さんが通ってくるが、グループ分けができるほどの全体人数は多くない環境で療育をするときは、大変頼りになるゲームです。

 親子で楽しめるゲーム

「2~3歳くらいから7~8歳」というのは、あくまで療育としての成果を考える場合の適正年齢です。

ゲームを楽しむという本来の目的ならば、スティッキーは子どもから大人までが一緒になって楽しめるゲームです。

そんなこともあってか、皇太子ご夫妻と愛子様が楽しそうにスティッキーを遊ばれている様子が報道されたことがあります。これも一応「宮内庁御用達」と言えるのでしょうか・・・。

このように小さなお子さんがいる家庭で家族みんなで遊ぶには、スティッキーは一番にオススメしたいゲームです。

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質問する力を身につける 「わたしはだあれ?」

「わたしはだあれ?」は、4歳位から小学校低学年までのお子さんが「質問する」ことを学ぶのに適したゲームです。

「わたしはだあれ?」には、「動物の描かれたカード」と「その動物の衣装を来た子どもの描かれたカード」がそれぞれ16枚ずつ入っています。

一人のプレイヤーが動物カードをひきます。他のプレイヤーは、その動物について「しっぽはありますか?」「空をとびますか?」など自由に質問します。ただし質問内容は「はい・いいえ」で答えられるものでなければいけません。

質問を繰り返していくうち何の動物がわかったプレイヤーは、その動物の衣装を衣装を来た子どものカードを取ります。正解ならば、動物カードを自分のものにできます。

お題となる動物のカードを引く人は毎回交代します。 上記の流れを繰り返していき、最後に一番多くカードを集めた人が勝ちです。

動物のカードと、動物のきぐるみを来た子どものカード。たったこれだけの組み合わせで、楽しくて効果的なコミュニケーション指導ができる。

動物のカードと、動物のきぐるみを来た子どものカード。たったこれだけの組み合わせで、楽しくて効果的なコミュニケーション療育ができる。

質問しすぎる子への対応

「わたしはだあれ?」は「質問する」という経験をお子さんに繰り返し積んでもらえるすばらしいゲームですが、ルールがシンプルなだけに、効果的な指導をするには指導者の関わり方が重要になってきます。

たとえば、ADHDがあり衝動のコントロールが難しいお子さんの場合、ゲームが始まった瞬間から、

「はい!その動物は赤いですか?! はい!はい!毛は生えていますか!? えっ?生えてない? ということは・・・わかった!その動物はピンクですか!?」

などと、自分一人のペースで矢継ぎ早に質問を繰り返し、他の子が質問するタイミングがなってしまうことがあります。

そうならないためには、事前に以下の様なルールを設定し、子どもたちに説明します。

  1. 質問したい子は挙手をする
  2. 質問に応える子は「◯◯くんorさん、どうぞ」と指名する
  3. 指名を受けたら質問する。

こうしたルールを設定すれば、特定の子が自分のペースでゲームを進めてしまうのを防ぐことができます。 また指名制にすることで、質問に答える子が相手の名前を呼ぶ機会を作ることができます。

友達の名前を呼び相手に反応してもらう経験を積み重ねることは、特に自閉症圏のお子さんに、他者への関心を高めてもらう上で大切です。

 

質問したがらない子への対応

他方、質問をしたがらない子に対しては、お子さんの状況に応じ、指導員が以下の3段階の中から適切な言葉がけをします。

  1. 質問内容の指示(「『その動物は赤いですか?』と聞いてみよう」)
  2. 質問のテーマを明確化(「色について聞いてみよう」「大きさについてきいてみよう」)
  3. 単純な促し(「キミも質問してみたら?」)

最初は1のように質問内容自体を指導員が指示してしまって構いません。質問をしたがらないお子さんにとって重要なのは、「勇気を出して質問したら相手が答えてくれた」という成功体験を重ねてもらうことだからです。

成功体験を積んで自信がついてきたら、2や3のように指示の抽象度を高めていき、最後は自分で挙手して適切な質問ができる形につなげます。

なお質問に答えるお子さんにカードを持たせると、回答に集中してカードがほかの子にうっかり見えてしまうことがあるので、以前紹介したヒットマンガと同じように、カードは指導者が提示するのがよいでしょう。

障害が重くても工夫次第で参加可能

  自閉症の傾向が強く他者との関わりがほとんどないお子さんの場合、上記のような指導上の工夫をしても、質問するのは難しいことがあります。

そんな子には、「質問に応える人」だけを務めてもらいます。 「質問する」ことよりも、「受けた質問に『はい』または『いいえ』で答える」ことの方がやることが明確なので、自閉症のあるお子さんにとっては取り組みやすいです。 普段まとまった会話がほとんどないお子さんでも、このゲームで「質問を受ける役」にさせると「はい」「いいえ」と驚くほどテキパキと答えられることがあります。

そのことは、指導者や親御さんにとってそのお子さんが会話から伺えるよりも高い認知能力を持っていることを再確認する機会となり、療育内容は関わり方を考えなおすきっかけになります。

自閉傾向が強く会話のやりとりが難しい子でも、役割を限定することで、ゲームに参加できる。

自閉傾向が強く会話のやりとりが難しい子でも、役割を限定することで、ゲームに参加できる。

幅広い発達段階に対応可能

この他にも、「わたしはだあれ?」はルールの工夫で幅広い発達段階のお子さんの療育に対応できます。

発達段階が高く、単純な質問をするだけでは面白くないという子たちには、質問の回数を「一人一回」と制限し、制限回数以内で正解をだせなかったときは無得点とすることで、「限られた回数内で、どんな質問をすれば正解にたどりつけるか」を考える訓練となります。

また、年齢が低かったり重い知的障害がある子にたいしては、「わたしはだあれ?」を単純な絵合わせ遊びとして用いることができます。たとえば、羊のカードを提示しながら「羊さんはどれかな?」と問いかけ、その動物を着ぐるみを着たカードを取らせることで、図形の認知力を高めることができます。

値段も安く非常に汎用性が高いので、療育する側としては大変ありがたいゲームです。

ソーシャルスキルトレーニングと連携させる

「わたしはだあれ?」はソーシャルスキルトレーニング(SST)とも相性が良いです。

以下に紹介するのは、SSTの代表的な課題である「他己紹介」との組み合わせです。

  1. 「わたしはだあれ?」をプレイして質問することの楽しさを感じてもらう。
  2. ニ人一組になって、相手のことを質問しあってもらう。
  3. 2で質問した内容をもとに、みんなの前で相手のことを「他己紹介」してもらう。

という一連の流れで、お子さんに「質問する」というスキルを重層的に学んでもらうことができます。

いきなり「二人一組になって相手のことを質問する」形だと、コミュニケーションに不安を抱えるお子さんによってはハードルの高い課題になってしまいます。

そこで、他己紹介の前に「わたしはだあれ?」をつかって楽しく質問しあう時間を組み込むことで、子どもたちがリラックスして質問し合える雰囲気を作れるというわけです。

購入は下記のサイトから可能です。

すごろくや:http://sgrk.blog53.fc2.com/?no=2923

 

 

互いの距離を縮める 「ディクシット」

今回ご紹介する「Dixit(ディクシット)」は、フランスで生まれ、世界で150万個以上売れているベストセラーゲームです。

少し前、SMAPの木村拓哉さんのお気に入りとしてTVで紹介され話題になったので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

幻想的なカード、可愛らしいうさぎのコマ、外箱を転用した立体的な盤面。美しいコンポーネントが魅力的。

幻想的なカード、可愛らしいうさぎのコマ、外箱を転用した立体的な盤面。美しいコンポーネントが魅力的。

ルールは前回ご紹介したヒットマンガに似ています。

明確な主題を持たない抽象的な絵が描かれたカードが、各プレイヤーごと6枚ずつ配られます。話し手となるプレイヤーが、手元のカードから1枚選び、描かれた絵を元に「お話」を考えます。「お話」は登場人物のセリフでも、状況の説明でも、ストーリーでもかまいません。

たとえば、話し手が1枚のカードを手に、「彼は遠くを眺めてこう言った。『はぁ~なんだかさびしいなあ・・・』」というお話を考えたとします。

他のプレイヤーはそのお話を受け、近いイメージのカードを手元から1枚選びます。全員のカードを誰が出したのかわからないよう裏向きでシャッフルし、場に並べます。

全体に、なんとなくさびしいイメージのカードが揃うことになります。

読み手以外のプレイヤーは、その中から読み手の選んだカードを推測して当てます。読み手は毎回交代し、多く正解した人が勝ちです。

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「はぁ~なんだかさびしいなあ・・・」  正解はどれだろう。1番の窓から外を眺めている子どもか?2番にも寂しい顔をした仮面がある。3番の子は一人旅で寂しいかな? 写真ではわかりにくいが、実は5番の鹿の剥製も涙をながしている。

ヒットマンガでは、カードに書かれた絵を元に「わかりやすいセリフをつくる」ことが目的でしたが、ディクシットは「わかりにくすぎず、わかりやすすぎないお話を作る」ことが目的です。

「わかりにくすぎずわかりやすすぎない」ってどうやって判定するの?と思われるかもしれませんが、とてもスマートなルールの工夫により「お話」がわかりにくすぎずわかりやすぎなかったときだけ、話し手にボーナス得点が入る仕組みになっています。その工夫については買ってみてのお楽しみ。一度プレイすれば「そういうことか!」と感嘆するはずです。

(以下は余談。市販されているアナログゲームは、コマやボードといった物理的な構成物だけでなく、独創的なルールにも商品価値が備わっていると私は考えます。なので、ゲームをご紹介するさいにルールを完全にオープンにするのは、映画のネタバレと同じで商品価値を下げかねないので、極力避けたいと思っています)

互いの距離がグッと縮まるゲーム

ディクシットの素晴らしい点は、一度のプレイで、参加者同士の距離をグッと縮められること。そこには、「カードに描かれた絵をもとにお話を作る」という、このゲームならではのアクションが関係しています。

抽象的な絵を元に自由に考える「お話」には、話し手の個性が色濃く現れます。登場人物の心情を読み取ってセリフを考える人、客観的な状況説明が得意な人、はたまた奇想天外なストーリーを考えだす人・・・。

「お話」に現れてくるそれぞれの話し手の個性が、正解のカードを突き止めるためのヒントになります。

「◯◯さんなら、きっとこんな表現をするはず」

そんな風に相手のこと考えているうち、いつしかお互いの距離が縮まっている。ディクシットはそんなゲームです。