幼児期のアナログゲーム選びのポイント

 幼児向けゲームのリストを制作!

アナログゲーム療育で用いている幼児向けゲームのリストをすごろくやさんにまとめていただきました。

このリストは、下記のような基準で選んでいます。

  • 幼児、または知的障害や自閉症を伴う小学校低学年のお子さんの認知・思考の発達段階に見合うもの
  • 上記の範囲内で、比較的幅広い発達段階のお子さんに適用できるもの

みなさんの指導・関わりの参考になれば幸いです。

幼児期のゲーム選びのポイント

幼児(または知的な遅れのある)お子さんが発達段階にあわせたゲームで遊ぶことで、言葉や数の理解を促したり、集団の中でルールを守って遊ぶことを学んでもらうことができます。

他方、幼児のお子さんの物の見方や考え方は、様々な点で大人と異なっています。この点を理解しておくことで、幼児のお子さんと楽しく遊び、療育としても成果を出しやすくなります。以下、ゲーム選びや関わり方のポイントを解説します。

見た目や音、感触で興味をひくゲームを

言葉や思考が発達途上にある幼児期のお子さんは、見た目や音、感触といった、感覚に訴えるゲームにより強い興味を感じます。これは、言葉のない2歳以前のお子さんや、知的障害を伴う自閉症をお持ちのお子さんについては特にあてはまります。

こうしたお子さんの場合、ゲームに誘ってもすぐには参加してくれない事が多いです。しかし、ゲームに使うボードや道具が立体的だったり、色鮮やかで触ってみたくなるようなゲームを選ぶと、興味を持って参加してくれる可能性が高くなります。

たとえば、上記リスト内の「マイファーストゲーム・フィッシング」は磁石で魚を釣る時の「パチン!」という音と感触が子どもたちの興味を強く惹きます。

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こちらのスティッキーもオススメです。

幅広い発達段階のお子さんたちを一つの集団で療育 「スティッキー」

まずはゲームを触らせてみる

5,6歳ともなれば言葉の扱いや思考も発達していますが、それでも大人に比べれば見た目や触感への興味がまだ強く残っています。

そのため、この年代の子どもたちは、大人がルールを説明しているときに、話を聞かずに目の前のコマやボードをいじくりまわしてしまうことがあります。

こういうときはルールを説明するより先に、ゲームのコマやボードに自由に触れる時間を2~3分取ってあげます。こうしてお子さんの感覚的な興味を充分満たしてあげた後でルール説明を始めれば、集中して聞くことができます。

戦略的思考はまだ難しい

幼児のお子さんは、ルールに従ってゲームをプレイすることはできますが、「AとB、どちらの選択がより勝利に近いか」といった風に、戦略的に考えてより望ましい選択を選ぶことが難しい場合が多いです。

そのため、幼児のお子さんに用いるゲームは、判断や選択の要素がなく、ルールに従って行動しているだけでよいものが中心です。

こうしたゲームは勝敗が運で決まってしまうため大人にとっては少々退屈に思えてしまいます。そのため、特に「ゲーム好き」な大人が幼児のお子さんと遊ぶ場合、戦略的なゲームばかりをチョイスしてしまう傾向があります。お子さんはルールに従うことはできるのでゲーム自体は成立するものの、戦略的な面白みは体験できていません。

こうしたことから、幼児のお子さんと遊ぶとき、大人は自分が選んだゲームがお子さんにとって難しくなりすぎないように注意する必要があります。

3月のすごろくやアナログゲーム療育講座は「幼児編」です。

毎月東京・高円寺にあるすごろくやさんで開催させていただいているアナログゲーム療育講座。

3月26日(日)は、「幼児編」として就学前のお子さんや知的な遅れや発達障害のある小学校低学年のお子さん向けに、上記で紹介した以外にもたくさんのゲームを紹介します。実際にゲームをプレイしながら学ぶことで、実践的なノウハウを身につけることができます。

講座の申込みは下記のリンクからどうぞ。毎回満席になっているので、お早目の申込みをオススメします。

3月26日(日) すごろくや アナログゲーム療育講座 幼児編

史上初!? TV電話で遠隔就労訓練

就労移行支援事業所「ぷろぼの高の原」にて、遠隔就労訓練を開始!

奈良で、障害のある人の就労訓練を行っている「ぷろぼの高の原事業所」様と提携し、TV電話を介して、アナログゲームを使った職業訓練を行うことになりました。

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史上初!?インターネット上のテレビ電話を介した遠隔職業訓練。複数のカメラで、ゲームの様子や利用者さんの表情もよく見えています。プレイしているのは他者への観察力が求められる「ケルトタイル」。

きっかけは、ぷろぼの高の原事業所の所長さんより「ぜひ職業訓練にアナログゲーム療育を取り入れたい!」という熱烈なご要望をいただいたことでした。しかし、私が住んでいるのは東京。奈良に定期的に伺うのは難しい・・・。そこで所長さんから「TV電話で遠隔で指導できないでしょうか?」とのアイデアをいただいたのですが、当初は正直にいって「できるのだろうか?」と半信半疑でした。

ところが実際やってみるとできたんです。上の写真からもわかるとおり、複数のカメラを用意することで各プレイヤーの手元の状況や、利用者さんの表情も伺うことができます。

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現場の様子。カメラの操作をしていただいているのもアシスタント役の利用者さんです。       ※写真の使用については、施設・利用者さん双方の了解をいただいています。

遠隔でもライブ感のある訓練は可能

アナログゲームをつかった訓練では、参加者一人一人の発する言葉や表情、考えている時間の長さなどから、その方がゲームを不安なく楽しめているか観察し、もし不安があるとしたらどのように言葉がけしていくか、常に考えていく必要があります。

こうした繊細なやりとりが遠隔操作で可能なのか、始めてみないとわからないところがありましたが、実際は現場にいるのに近い感覚で利用者さんの様子を観察して、言葉がけできることがわかりました。

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利用者さんが迷っているようなら「こちらとあちら、どちらを優先したほうがよいですか?」といった問いかけ、良いプレイが出た時は「相手をよくみていた素晴らしいプレイですね」といった言葉がけを行う。精密な観察が必要だが、遠隔操作でも充分可能であることがわかった。

 

利用者さんからは「楽しい!」という感想が

プレイ後、利用者のみなさんから「楽しい!」という感想が聞かれました。次回は参加予定でなかったのに「ぜひ参加したい」と積極的に申し出た利用者さんもいらっしゃり、初回の訓練は大成功に終わりました。

ぷろぼのさんでの訓練は隔週で行われ、今後は交渉するゲームや、お互い協力しあうゲームなどを使い、就労を意識したコミュニケーション訓練を行っていきます。

アナログゲームというツールを使うことで、このように、遠隔地とつながって訓練できるということは、就労支援、そして療育の可能性を多く拡げるものだと思っています。今後の実践を通じてノウハウを蓄積したいと思います。

ステージ2 シンボルのスムーズな操作を促す

ステージ2「前操作期」

今回は、アナログゲーム療育のステージ2を解説します。健常児のお子さんで、3~7歳に当たります。

この時期のお子さんはシンボル機能が確立することで、言葉が話せるようになるのを始め、数、そしてゲームに欠かせないルールの理解ができるようになっています。

この時期のことをピアジェは「前操作期」と呼んでいます。ここでいう操作、とはシンボル機能の操作を指します。「前操作期」とは、シンボルは形成されているものの、それらを自由に操れる手前の段階にある、という意味です。

「ごっこ遊び」が出てくる

ステージ2のお子さんは、シンボル機能が形成されることで、他のお子さんとシンボルを共有しあって集団で遊べるようになります。

おままごとであれば、「私はお母さん、あなたは赤ちゃん」といった風にお互いの役割を演じることができるようになります。このとき「お母さん」というシンボル、「赤ちゃん」というシンボルをお互いの間で共有できているからこそ、おままごとが成立するのです。

ゲームについても、ステージ2のお子さんは「ルール」というシンボルを共有することができるので、子ども同士で遊べるようになります。

シンボルのスムースな操作を促す

シンボル機能が形成されたことで遊びの幅が大きく拡がるステージ2のお子さんですが、限界もあります。

たとえば数の扱いです。おはじきを提示して「これはいくつ?」と聞いてみると、1つや2つなら答えられますが、5つや6つになると正しく答えられなくなってしまうことがあります。また、足し算、引き算はまだ難しいことが多いです。

そのためステージ2の目標は、シンボルをスムースに操作できるようになることです。

アナログゲームは「名前」「数」「色」「形」などたくさんのシンボルの集まりであり、それらをルールに従ってプレイすることが、シンボル操作の練習になります。

 

シンボル操作を練習するアナログゲーム

たとえば、以前ご紹介した「雲の上のユニコーン」は、お子さんの数概念の獲得を促すのに最適です。

数概念を身につける「雲の上のユニコーン」

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またステージ2のお子さんについて、数概念と並んでチェックしておきたいのが空間認知能力です。

空間認知能力は、物の大きさや向き、あるいは奥行きなどといったものを正確に把握できているかどうか、ということです。

この能力が特異的に遅れている場合、書字や図画・工作が極端な苦手さを示すことが多いです。また片付けが出来なかったり物をなくしてしまうといった生活上の課題にも影響を与えます。

 お子さんの空間認知能力を測るのに最適なのが、「メイクンブレイク」です。

作業ができたら報告する「メイクンブレイク」

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指導者はオーバーリアクションで

ステージ2に入ったばかりのお子さんは、ゲームをプレイする中で何が自分にとって望ましい行動なのか、何が残念な行動なのか、十分理解できていないことが多いです。

従って、指導者はお子さんのプレイが望ましい結果を生みだしたら「やったね!上手にできたね」と積極的に声掛けしてするとともに、拍手やお子さんとハイタッチをしてあげるなど、ややオーバーリアクション気味に接してあげましょう。そうすることで、お子さんは「これは望ましい行動なんだ」ということが分かります。

合理的配慮の義務化で何が変わるのか

4月から合理的配慮が義務化

この4月に、発達障害のある人とその家族にとって見逃すことのできない、大きな変化があります。

「障害者差別解消法」が試行され、公的機関において、障害のある人に対する「合理的配慮」が義務化されるのです。

「合理的配慮」については、発達障害のポータルサイト「LITALICO発達ナビ」に大変わかりやすくまとまった解説が載っています。

合理的配慮とは?考え方と具体例、障害者・事業者の権利・義務関係、合意形成プロセスについて

上の記事から言葉を借りると、「合理的配慮」とは、一人ひとりの特徴や場面に応じて発生する障害・困難さを取り除くための、個別の調整や変更のことを意味します。

典型例として、読み書き困難な人が音声端末やタブレットを使って学習できるようにしたり、車いすなど移動が困難な人にスロープやエレベーターを設置するといったことが「合理的配慮」にあたります。

4月から、障害のある人にこうした配慮を行うことが、学校を含む公的機関で義務化されるのです。

何からなにまで配慮してくれるわけではない

合理的配慮が義務化されることで、発達障害のあるお子さんやその親御さんにとって、何が変わるのでしょうか。

一つ言えるのは、合理的配慮が義務化されたとしても、求めた配慮がすべて実現するわけではない、ということです。

というのも、合理的配慮の考え方として、配慮するにあたり予算や人員の点であまりにも大きな負担がかかる場合や、配慮を提供することで他の人たちが不利益を被るような場合などは、合理的とはいえないと判断されるためです。

先にご紹介した「発達ナビ」で、インクルーシブ教育研究者の野口あきなさんがこのあたりのことを詳しく解説されています。

4月からはじまる合理的配慮の義務化。学校と連携するコツは?

紹介した二つの記事で、いずれも強調されているのは「合意形成」の必要です。合理的配慮を受けるためには、まず障害のある本人やその保護者から、学校に向けて必要とする配慮を提案します。その提案について学校側と話し合い、両者の間に合意が形成されて初めて、配慮が実施されるのです。

つまり、ただ待っているだけで望ましい配慮がなされるわけではありませんし、配慮を求めたからといって、学校が常にすべての要求を実現してくれるわけでもありません。

何が変わるのか?

こう書くと、「それなら今までと同じで、法律が変わったところで現実は何も変わないのでは?」と疑問に思われる方もいるかもしれません。

しかし、合理的配慮の問題を教育だけでなく、政治や法律の枠組みにおいて扱えるようになる点は、大変重要だと考えています。

仮に、読み書きが苦手な学習障害のお子さんに、学校が何ら配慮をせず、その子が授業についていけない状況があったとしましょう。親御さんがタブレット利用や支援員の配置などの合理的配慮を学校に求めたが「予算がない」とのことで応じてもらえない。さらには学校を監督する立場の教育委員会にも連絡したが動いてくれない、という状況だったとします。

従来なら、保護者の立場でこれだけやって学校側が動いてくれないとなれば、泣き寝入りするか別の地域に転校するしかなかったように思います。

しかし、法律で合理的配慮が義務化されれば、学校が障害のある子に配慮をしないことは、教育だけでなく、政治や法律の問題としても扱われることになります。

合理的配慮の法的根拠ができたことで、保護者の立場からは

  • 地域の議員に陳情して議会で取り上げてもらう
  • 弁護士に相談して訴訟を起こす

といったふうに、議員や弁護士といった第三者を巻き込んで合理的配慮を訴えやすくなるのではないかと考えています。

もちろん議員を動かすのも弁護士をつけて訴訟するのも、いざ実行するとなれば大きなエネルギーを求められますから、こうした手段に訴えることが常に良いことだとは思いません。

しかし、合理的配慮を学校と話し合う上で、「議員」や「弁護士」といった第3のプレイヤーを意識しながら合意形成に臨めるようになることは、お子さんが望ましい配慮を受ける上で大きな強みになると考えます。

「合意形成」の時代に求められる療育とは

さて、合理的配慮を受けるために必要な合意形成は、学齢期のうちは主として保護者が担います。しかし就職してからは(知的障害を伴う場合などを除けば)その役割を本人が担うことになると考えられます。

療育のゴールをお子さんの将来の自立に設定するなら、本人が合理的配慮を受けるために必要な合意形成能力を身につけることは、大変重要な療育課題となります。

自分の要求を一方的に主張するだけでは、合意形成はできません。相手にどれくらいの力があり、自分の要求にどこまで応えてくれそうか推し量ることができなくてはなりません。

ここは発達障害の中でも特にASDのある人が苦手とする部分で、こうした困難をどう乗り越えていくかは、まだ充分研究されていないテーマであるといえます。

そこで、アナログゲム療育でこうした合意形成能力を高めることができないかと考えています。具体的には「交渉する」「協力する」といった、合意形成の要素が含まれるゲームを用いて、適切な相手に適切な条件を提示できるようになるトレーニングを行うのです。

実際にこうしたトレーニングを経て、お子さんに望ましい変化が生まれています。その様子は、今後のブログでまたお伝えしたいと思います。

 

利用者が集まらない放課後等デイサービスの傾向と対策

療育アドバイザーの松本太一です。

今回は放課後等デイサービスを経営されている、または、これから経営されようとしている方へ向けた記事です。

いよいよ淘汰が始まった放課後等デイサービス業界

今年に入り、開設間もない放課後等デイサービスの苦境、あるいは撤退を耳にすることが多くなりました。具体的にはすでに多くの放デイがある大都市圏で新規参入したものの、競争が激しく利用者が集まらない、という状況が多いようです。

近年、放課後等デイサービスの開設の勢いは凄まじいものがあり、いずれ淘汰が始まると予想してはいましたが、思ったより早くその段階に入ってきている様子です。

しかし、私の知っている事業所さんで、競争が激しい大都市圏においても、開設後一ヶ月で満員になった所があります。あるいは、すでに人気の放デイが新たな事業所を開設したとき、開所前から数十人の待機者が生まれたという話も聞きます。

つまり、選ばれる事業所と、そうでない事業所がある、ということです。

両者の分かれ目はなんでしょうか。

利用者が集まらない理由

新規開設したのに人が集まってこない・・・。私が見聞きした話を総合すると、苦境に立たされる放課後等デイサービスには、ある共通の傾向が見られます。

それは「利用児に提供するプログラムを用意せずに開所している」ことです。

施設の広さや人材配置といった、法律で定められた最低要件を満たしただけで、即開所に踏み切ってしまう。プログラムは、開所後、利用者が増えてきたら追々考えていけば良いや、という考え方です。

放課後等デイサービスの供給が需要に追いついていなかった時は、このような考えでも、子どもを預かってもらえるというだけで、親御さんは契約してくれました。

しかし、近隣の事業所数が増え、親御さんが子どもを通わせる事業所を選べるようになっている状況では、開設当初から他の事業所と差別化できていなければ利用者は集まりません。

そのことをもう少し詳しく解説します。

最初の体験利用者を感動させる

過去に複数の放デイと関わらせていただいた経験からすると、新規利用者獲得のための最も効果のある宣伝は、親御さんの口コミです。

幸先の良いスタートを切れた事業所は、最初に施設を見学しにきた親御さんを「ファン」につけていることが多いです。その親御さんがインフルエンサーとなって、学校やママコミュニティの中で、他の親御さんに紹介してくれ、そこから数珠繋がりに新規申込が入ってくるのです。

従って、利用者を獲得するためには、開所前からきちんとしたプログラムを用意し、最初に見学・体験に来てくれた親子がそのプログラムに満足し事業所のファンになってもらうことが、必要になります。

裏を返せばプログラムが準備出来ていない状態で利用者をお迎えすることは大変なリスクです。自分たちが不十分なプログラムしか提供できないことが、事業所を見学した親御さんを通じて地域のコミュニティに知れ渡る可能性が高いからです。

そうなってから慌ててプログラム構築に力を入れても、確立したマイナスの評判を挽回することは大変に困難です。

なぜプログラムを準備しないのか

これほどのリスクがありながら、プログラムを用意しないまま放課後等デイサービスを開設してしまうケースが後を絶たないのはなぜでしょうか。

このようなケースでは、放課後等デイサービスの経営者の方が、利用者に満足してもらえるプログラムの”レベル感”を理解していないことが多いと感じています。

放課後等デイサービスでは、小学生から高校生までの障害のあるお子さんを日に10人程度お預かりします。この発達段階も障害特性も様々なお子さんたちに、安全にしかも有意義な時間を過ごしてもらうために、どんなプログラムを用意すればいいのか。そのプログラムを実施するためには、どんな設備や教材が必要なのか、スタッフにはどんな研修を受けさせる必要があるのか。そして、トータルでどれだけのコストがかかるのか。

ここの見極めは、特に他業種から参入して来た人の場合、判断が難しいところです。その結果でてくるのが、「わからないものに金をかけるわけにはいかない」という消極的な経営判断です。

それが先に述べた「とりあえずは最低限のところから始めてみよう、プログラムは利用者が集まってから追々開発しよう」という発想に繋がります。

しかし、競争状態に入っている地域に新規参入する場合、こうした考えが自殺行為であることは先に述べた通りです。

とにかく現場に入る

自分の事業所が提供するプログラムのレベル感を判断できないというのは、飲食店に例えれば自分の店で提供している食事が美味しいのか不味いのかわからない、という状況です。

普通なら考えられないことですが、こうしたことがまま起きるのが障害のあるお子さんを対象とした放課後等デイサービスの難しさだと思います。

では、経営者はどうしたら利用者に満足してもらえるプログラムの”レベル感”をつかむことができるのでしょうか。

誰にでもでき、すぐにでき、しかもお金のかからない方法があります。「現場に入る」ことです。

もしあなたがこれから自分の放デイを構えようとしているなら、その前にぜひとも他の放デイで働く経験を持つべきです。すでに自分の事業所があるなら、今すぐにでも現場に入ることです。

現場で障害のある子どもたちと向き合うことで、一日に発達障害のあるお子さんを10人お預かりするためにどれだけの態勢を用意しなければならなのか、肌感覚でつかむことができます。

また、親御さんたちと話をすることによって、自分たちにどれくらいのことが求められているのか、掴めるようになります。

同時に、自らスタッフの一員として働くことで、様々な要請に対し、自分たちがどこまで応えられるのかも、見えてくるはずです。

こうした現場の経験を通じて、

「こうすればもっと質を高められるのではないか」

「この部分はもっと効率化できるのではないか」

といった発想、あるいは、

「この部分は自分たちの経験や知識では解決できない」

「こんな教材が必要だ」

といった課題感も生まれてきます。

こうした発想や課題感ができあがってくれば、自身の事業所を開設するにあたって新しいプログラムを開発するときでも、どれくらいのコストをかければ満足してもらえるプログラムができるか、見込みがつきやすくなります。

【2月】発達ナビ掲載記事のまとめ

発達障害のポータルサイト「LITALICO発達ナビ」

こんにちは。アナログゲーム療育アドバイザーの松本太一です。

1月に立ち上がった発達障害のある人のためのポータルサイト「LITALICO発達ナビ」。日々日々大量のQ&Aとコラムが掲載されており、発達障害に関わる人にとって早くも欠かせない情報源になった感があります。

私も、これまで4本の記事を執筆させていただきました。

以下、発達ナビで掲載した記事を、簡単な解説とともにご紹介します。

 

ルール理解に最適!アナログゲームのススメ[2~6歳向け]

幼児から大人まで幅広く遊べる定番中の定番ゲーム、「スティッキー」の紹介です。お子さんのコミュニケーション力形成のためにゲームが果たす役割についても解説しています。

 

かんしゃくの原因、見落としてない?

ゲームに負けた時にお子さんがかんしゃくを起してしまうことについて、原因と対策をまとめました。かんしゃくで困っている方は多いらしく、1万view近い閲覧数を獲得しました。

 

ゲームで「他者への関心」を育もう

身の回りにあるカタログ的な物がなんでもゲームになってしまう「かたろーぐ」を紹介しました。他者理解を深めるのに適したゲームで、発達障害児への実践が新聞に取り上げられた経歴もあるゲームです。

 

自然な会話が生まれる!質問力が身につくカードゲームのすすめ

質問するという行動を繰り返し体験できる「わたしはだあれ」というゲームを紹介しました。ソーシャルスキルトレーニングの教材としてアナログゲームを用いた典型的な事例です。異年齢集団の関わりの重要性にも言及しました。

療育に欠かせない、ピアジェの認知発達理論

アナログゲームを用いた療育について、これまで、放課後等デイサービス「オルオルハウス」さんでの実践をご紹介してきました。

これらの記事を読んでいただくと、私がお子さんの認知能力の発達にスポットあてて療育していることが理解いただけるのではないかと思います。

次のステップに進む前に、いったん認知能力とは何なのか整理しておきましょう。

子どもは『小さな大人』ではない

人間の認知能力について研究し、その発達過程を明らかにしたのが、スイスの心理学者ジャン・ピアジェ( 1896 – 1980)です。

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20世紀において最も影響力の大きかった心理学者の一人ジャン・ピアジェ。教員資格試験や保育士試験などを受けたことがあるなら、その名前を耳にしたことがあるはず。

「子どもは『小さな大人』ではない」とピアジェは言いました。

多数の実験により、彼は子どもが、大人とは異なる独特の物の捉え方や考え方をしており、その特性が、年代ごと段階的に変化していくことを明らかにしました。

この「独特の物の捉え方や考え方」という言葉は、発達障害を表す時にもよく使われます。ADHD、ASD、LDなどの発達障害のある人にもそれぞれ独特な物の捉え方や考え方があり、こうした障害を持つ人と関わるときは、そうした特性の理解が大切であることを、私達は知っています。

他方、ピアジェによれば「子ども」という生き物自体にも、それぞれの年齢ごとに独特の特性があり、大人と同じようにできなかったり、その年代の子どもならではの考え方で物事を進めようとするのです。

従って、「発達障害」のある「子ども」を療育するのなら、「各障害ごとの特性」を理解するだけでは不充分で、「各年代ごとの子どもの発達特性」をも理解する必要があります。

療育の横軸を「障害特性」とするなら、縦軸にあたるのが「認知発達段階」。この両方のかけあわせがないと、本当の意味でお子さんに合わせた療育はできません。

認知発達の四段階

ピアジェは各年代の子どもを対象とした実験の結果をもとに、子どもが大人へと発達していく過程を、以下の4段階に分けました。

1 感覚-運動期 0~2歳
2 前操作期 2~7歳
3 具体的操作期 7~12歳
4 形式的操作期 12歳以上

この4段階全てでキーになっているのが、以前にも解説した「シンボル機能」です。

シンボルとは、ある具体的な事象を、別のもので代表したもので、シンボル機能はシンボルを使いこなす機能のことを指します。シンボルの代表例が、「名前」です。

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実写とイラストで質感や色味が全然違う二つの画像が、同じ「トラ」を表しているとわかるのは、私達がそれらを「トラ」という名前で呼ぶことで、同一であると認識しているからです。

名前の他に、数や量、あるいはゲームのルール、「道徳」や「社会」などといった抽象的な概念までもがシンボルに含まれます。

そして、子どもが大人になるまでの過程で、様々なシンボルの存在を理解し、それらを自由に使いこなせるようになっていくことを、ピアジェは明らかにしたのです。

以下、それぞれの発達段階について解説していきましょう。

「感覚-運動期」の子ども

健常児の0~2歳にあたる「感覚-運動期」は、シンボル機能がまだ形成されていない段階です。

この時期の子どもは、いわば「目に見えるものだけ・耳に聞こえるものだけ・手に触れるものだけが全て」という世界に生きています。

興味のある遊びも、動きや音、触感などの感覚に訴える単純なものになります。

シンボル機能がまだないため、シンボルの一種である「ルール」が存在するゲームは、まだ遊ぶことができません。

「前操作期」の子ども

「前操作期」というのは、「シンボル機能を自由に操作できる手前の段階」という意味です。

2歳以降になると、物に名前があることが理解でき、それ伴って言葉を発するようになります。やや複雑なシンボルである「ルール」も徐々に理解できるようになり、それを他の子と共有することで集団で遊べるようになります。

しかし、シンボル機能を自由に操り、「A案とB案を比較してより望ましい方を選択する」とか、「報酬と危険を天秤にかけてより高い成果が得られそうな方を選択する」といったように合理的・戦略的な思考をすることは、まだできません。

実例からみる認知発達段階

これまでご紹介してきた例の中では、ルールを理解して遊ぶことはまだ難しいけれども、カード遊びで異同の弁別ができたAさんは、「感覚-運動期」から「前操作期」への移行期、言い換えればシンボル機能の芽生えの時期にあると言えます。

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また、ゲームのルールを理解して楽しむことができるもの、数や量といったシンボルを自由に使いこなすことはまだ難しかったBくんは、「前操作期」のただ中にいると考えられます。

雲の上のユニコーン

「具体的操作期」

認知発達の第3段階である「具体的操作期」に入ると、複数のシンボルを組み合わせるなどの自由な操作ができるようになり、さらには状況を客観的に把握し、合理的・戦略的な思考ができるようになってきます。

下の写真は、「具体的操作期」に差し掛かろうとする子どもたちのゲームの様子です。

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ルールという「目に見えないシンボル」を共有し、そのルールの中で自分がどう振る前ばよいか合理的に考えている。そんな様子が、写真からもなんとなく伝わってくるのではないでしょうか。

次回はこの写真の場面を解説しながら、「具体的操作期」のある子どもたちの合理的思考を促す療育を解説していきましょう。

【放課後等デイサービス向け】スムーズかつ安全な療育の工夫

障害のある子たちの集団活動で、安全を確保するには

放課後等デイサービスでは、多動性や衝動性、あるいは様々な感覚の過敏を持った発達障害のある子たちを日に10人近くお預かりします。

こうした子どもたちに事業所で安全に過ごしてもらうためには、一連の活動をスムーズに行えるよう、教室の環境を整えたり、スタッフがサポートしたりする必要があります。

そこで、私が療育アドバイザーとして複数の放課後等デイサービスに関わった経験をもとに、スムーズかつ安全な療育を実現する工夫を以下にまとめてみました。

①来所→教室に入るまでの混乱を避ける

お子さんが来所してから教室に入るまでには、意外とたくさんのステップがあります。

最低でも

  • 靴を脱いで下駄履に入れる
  • ランドセルをロッカーにしまい、上着を脱いで所定の場所にかける
  • 手を洗ってうがいをする

この3つはどこの事業所でもやっているはずです。

しかし、お子さんの中には、手も洗わずランドセルを背負ったまま教室にすっ飛んで行こうとする子もいれば、手先が不器用で上着をハンガーにかけるのが困難な子もいるなど、中々スムーズには進みません。そのため、利用児が増えてくると、来所時間は下駄箱まわりが子どもたちで渋滞してしまうことが多くなります。

このとき、スタッフが場当たり的に対応していると、必ず手が行き届かない子がでてしまい、順番争いで喧嘩がおきたり、手順を守らず教室に入ってしまう子が続出するなど、毎回大混乱に陥ってしまいます。

こうした混乱を防ぐために必要な対策として、来所→教室に入るまでの流れを、文章(できれば写真も)に表したものを下駄箱周辺に掲示し、お子さんに周知することが大切です。

また、スタッフはだれがどの作業をサポートするか、飛び出そうとする子をだれが抑えるか、事前のミーティングで役割分担を明確にしておく必要があります。

②危険な行為は、まずその行為を辞めさせた後、注意する

たとえば、教室で長い棒を振り回していた子がいたとします。このときによくみかけるのは、スタッフが「◯◯くん、その棒危ないから先生に渡して。ねえ、渡してって言ってるでしょ」などと言いながら、お子さんの後ろをついて回っている光景です。

これは危険な状態です。なぜなら、後方からのスタッフの言葉に気を取られ、棒の先端の行方に注意を払えていない可能性が高いからです。

こうしたときは、まず「棒を取るよ」を一声かけた上で、サッと棒を取り上げてしまいます(一声かけるのは、お子さんを驚かせないためです)。その後で、「教室で棒を振り回すのは危ないからやめてね。この棒をしまっておきます」と説明します。

転落の恐れがあるような高所に登っている子も同様です。まず「降ろすよ」といいながらその子を抱いて地面に降ろします。そのあとで「落ちたら危ないから、登っちゃだめだよ」と注意します。

登っている子に後ろから「◯◯くん、そこにいたら危ないでしょう。降りなさい」などと注意するのは先の例と同じ理由で危険です。

③トランポリンかバランスボールを用意する

多動で離席があり、教室内であばれたり外に出ようとする子への対応として、トランポリンやバランスボールを用意するのは有効です。

トランポリンは大掛かりに思えるかもしれませんが、一人用の小さなものがamazonで4000円代からあります。場所もそれほど取りません。

 

バランスボールなら1500円ほどですみます。サイズがいろいろ有りますが、小さめの55cmが良いでしょう。

 

トランポリンの上で飛んだり、バランスボールに座って揺れることで、体を動かしたいといういうお子さんの欲求をみたしつつ、体はその場にとどまることができます。そのため、先生の話を聞いたり活動に参加できます。離席した子が居場所がなくして、フラフラと外に出て行ったりしてしまうよりは、ずっと良いのです。

ただし、それぞれ弱点があります。トランポリンは飛び降りた時衝撃が床に伝わるため、騒音トラブルの原因になる可能性があります。事業所がマンションの中階にある場合などは避けるべきでしょう。

バランスボールは自由に使わせると子ども同士の投げ合いが始まり、他の子にぶつかってしまうことがあるので、必要なとき以外はしまっておいたほうがよいでしょう。

④子どもを興奮させすぎない

若い男性のスタッフにありがちな失敗として、自由時間にプロレスごっこや肩車、鬼ごっこなど体を大きく使った遊びをした結果、お子さんが自身の安全に配慮できないほど興奮してしまい、ほかの子や物に衝突して怪我をしてしまうことがあります。

基本的に屋内では、自由時間中、走ったり、激しい身体接触を伴う遊びは避けるべきでしょう。その代わり、カリキュラムの中に運動プログラムや屋外遊びを取り入れたりして、思い切り体を動かす機会を作るべきです。

⑤日々の療育カリキュラムを組む

最大の安全対策は、お子さんが飽きずに楽しんで取り組めるカリキュラムを用意することです。

発達障害のある子どもたち10人が、一つの部屋の中で何時間も「ただなんとなく」過ごす、というのは基本的にムリな話です。いかなる安全対策をとっても、危険やトラブルは避けられません。

発達段階に合わせた課題を用意し、子どもたちはその課題を楽しみながら一生懸命取り組む。スタッフはその取り組みをサポートし、課題を達成できた喜びを分かち合う。そういう態勢ができあがることは、お子さんの成長を促す上で大変重要なことですが、活動自体の安全性を確保する上でも必須です。

発達障害向けの医療・療育機関の評判 「発達ナビ」のレビューを200本読んでみました

親御さんのレビューが400件以上!

 
LITALICOさんが準備中の発達障害ポータルサイト「発達ナビ」に注目しています。
 
このサイトは現在、正式オープンに向けて、学校や幼稚園、病院、療育施設を利用している親御さんからのレビューを募集しており、その数はすでに400件を越えています(2015年11月時点)。
 
まだ地域や種別で検索することは出来ない状況ですが、それでもこの大量のレビューは、発達障害のある子の支援に携わる者にとって非常に貴重な資料です。
というのも、親御さんが各々の施設に何を求めているのか、どこに満足を感じ、どこに不満を感じたのかがわかるからです。
 
 

大量のレビューから見えてきた医療・療育機関の現状

掲載されているレビューの約半分、200本ほどのレビューを読みました。

これくらい読むと、各施設に親御さんがどんな期待を抱いているか、またどんな不満を感じているか、ある程度共通項が見えてきました。

以下にまとめてみます。

  • 医療機関(病院・クリニック)
    • 発達障害の診断ができる医療機関はどこも混み合っている様子。予約から診察まで数ヶ月かかるところが多い。また、診察室での待ち時間も長く、2~3時間になるところも。そのため、待合室におもちゃや絵本が配備されているかどうかを気にしている親御さんが多かった。
    • 医師の説明の態度を気にしている親御さんが多かった。丁寧な説明に安心したという報告がある一方、医師が子どもの障害に関するネガティブな話を親としての心情に配慮せずにずけずけと言って、傷ついたり怒りを感じたという報告もみられた。
  • 療育機関(市区町村が運営する公的なもの 「◯◯市療育センター」など)
    • 療育の頻度が低いのが気になる。二週に一回、あるいは一ヶ月に一回というところが多い。療育内容に対する不満はさほど聞かれなかったが、この低頻度で効果が挙がっているのか?やや疑問ではある。
    • 親御さんは頻度が少ないなら少ないなりに、療育自体の効果というよりは、定期的な発達チェックの場として、また子育ての悩み相談の場として割り切って利用している印象。
  • 療育機関(民間 放課後等デイサービスを含む)
    • 親御さんが気にしているのは、職員の対応の丁寧さ、職員の障害への理解度、など。提供するプログラムの内容や療育効果への言及はあまり見られなかった。
    • 職員の丁寧な対応や、子どもが笑顔になって楽しんで通っている様子などに満足している親御さんが多かった一方、療育を受けたことで子どもの成長が具体的に感じられたことに言及するレビューは、比較的少数であった。
    • 具体的な療育成果という点では、昔ながらの療育機関でかなり厳しく指導をしているところがあり、生活スキルなどの向上が見られるなど親御さんの評価が高かった。
    • 放課後等デイについては、送迎の有無や、休日預かり時間の長さなど、お預かり施設としてどれだけ使いやすいかも重視されていた。
    • 不満として最もよく聞かれたのは「指導員の異動の多さ」。子どもと担当する指導員の間に信頼関係ができてもその指導員が異動してしまうことが多く、代わって担当した指導員のレベルが低かったり、引き継ぎ不充分で担当が代わる度子どもの状況を繰り返し報告しなければならないといった不満が見られた。
 

 療育の成果は挙がっているのか

これらのレビューのうち、特に療育機関に関することで、私が注目したのは、その施設に通った結果、お子さんに具体的な成長が見られたかどうか、という点です。

約200件のレビューの中で、その施設に通ったことでお子さんにプラスの変化が起きたことを報告したものは相対的に少数でしたが、その中には「変化に驚いた」「大きく変わった」という報告もあり、親御さんからみてきちんと結果を出している療育施設も確かにあるのだと感じました。

以下に、子どもが具体的に成長したことを報告している施設のレビューのリンクを以下に貼り付けます。

これらのレビューを順番に読んでいくことで、「結果の出せる教育・療育施設」のレベル感がつかめるのではないでしょうか。

よろければ参考になさってください。

 
 

現在もレビューを募集中

発達ナビ」さんでは現在もレビューを募集しています。レビュー1件につき、500円の商品券がもらえるということですから、保護者の皆さんはレビューを投稿されてみてはいかがでしょうか。締め切りは12月31日までとのことです。

不安ベースの子育てから安心ベースの子育てへ

その子育て、間違っていませんか?

先日本屋に入ったとき、ある経済誌の教育特集の表紙が目に入り、ギョッとました。

「その子育て、間違っていませんか?」

という見出しがついています。さらにその下には

「科学でここまでわかった!悪い教育 良い教育」

という小見出しが。

「間違う」「悪い」といったネガティブワードを前面に押し出すことで、ことさらに子育ての不安を煽るその雑誌の見出しを見て、私は少なからず不快感を覚えました。

しかし、実際に雑誌を読んでみると、見出しから受けた印象とは裏腹に、むやみに不安を煽ることはなく、丁寧な取材の基づくバランスの取れた内容でした。

それだけに、かえって表紙の不安を煽るような見出しが気になります。おそらくこの雑誌の編集者は、ネガティブワードを連ねたほうが、子育てに不安を持つ親の注目を惹けると考えたのでしょう。

問題なのは雑誌自体より、むしろ普段から子育てに不安があり「間違う」「悪い」などのネガティブなキーワードに反応してしまう親御さんが多くいる、と思われている現状ではないでしょうか。

自己責任と自己決定を求める時代の変化が子育てへの不安を生む

私が相談にのっている発達障害のある子を育てる親御さんの中にも、子育てに不安を持つ方が多くいらっしゃいます。その理由は、お子さんの障害にあることも確かですが、それ以前に子育て自体に不安を感じている方が多いと感じており、そこに療育者・支援者としてどう向き合っていくかが、今私の中で大きなテーマになっています。

そんな中で、子育てにまつわる不安の向き合い方に大きなヒントを与えてくれたのが、首都大学東京教授で社会学者の宮台真司さんが書いた「最適という孤独を離れ、満足の共同性へ」という文章です。

この文章の中で宮台教授は、今の時代、人々が多くのことを自身の責任で判断せざるを得なくなった結果、不安に陥る人が増えていることを指摘します。

以下、リンク先の文章から引用します。

何もかも個人が自己責任で自己決定の機会を引き寄せる必要が出てきたという時代の変化が、「社会として」いいのか悪いのかは、考えなくてはならないことです。抽象的な水準で言えば、個々がバラバラに分断され孤立した状態になると、全てを自分でハンドリングしなければならないので、自分にとって「最適な選択」をしないと「損をする」「置いていかれる」などと不安に陥りがちになるので、社会が不安ベースになります。

 これだけ情報があふれた流動的な社会では、「最適な選択」なるものは単なる幻想に過ぎません。どんなに「最適な選択」をしたつもりでも、少し時間が経てば状況が変わり、「あれば間違いだったのではないか」「不適切だったのではないか」と思い返することになり、さらに不安に襲われます。こうして、安心ベースだった社会のあり方が、不安べースへと変化してしまうのです。

 

発達障害のある子を育てる親御さんの中にも、お子さんの療育について常に最適な環境を求めながら、宮台教授が指摘するように「あれは間違いだったのではないか」「不適切だったのではないか」と思い返して、不安に襲われている方が多くいると感じます。

宮台教授は、こうした不安から抜け出すには<最適化>原理に基づく考え方をやめ、<満足化>の原理へと切り替えていく必要があるとし、そのためには空洞化した共同体の復活が必要であると述べます。

経済学者は、利潤の最大化(投資効率の最適化)が人間の行動原則だとする仮説に立ちます。しかし、これは企業やファンドなどの資本の動きについて妥当するものの、実は僕たち自身はそのように生きていません。「最適」でなくても、特に問題がなければ(そこそこ満足なら)前に進む。それが〈満足化〉の原理です。この原理は共同体の自明性ともにあります。

 

「自分で何もかもしなくては⋯」と過剰に思い込む人は、〈最適化〉原理に駆られがちになって不安や抑うつ感から逃れられなくなります。現にそういう人ばかりでしょう。だからこそ、自覚的に、ものごとの評価を〈満足化〉原理に引き戻すことが重要です。そのためには、自らを包摂する共同体、すなわち「出撃基地であり帰還場所であるようなホームベース」を築いていくことが不可欠です。そうすれば〈満足化〉に簡単に近づけます。

共同体とは何かという問いについて、宮台教授は転校を多く経験した自身の子ども時代の経験を挙げます。

僕は六つの小学校に通う転校生でしたが、僕自身けんかが弱くても、けんかの強い子と友だちになる力があったから、心配ありませんでした。逆に、友だちは、学級委員をつとめる僕といつも仲良くすることで、担任の先生の大目玉を食らう頻度が減りました。そう、「持ちつ持たれつ」です。

 けんかが弱ければ、強い子と友だちになればよく、勉強ができなければ、できる子と友たちになればよい。「持ちつ持たれつ」で共同体的に結合していけば、個人が万能である必要はない。人間関係の輪に入って分相応の役割を果たせればいいだけです。

そして、子どもがこうした共同体関係に結びついていることが、充実や幸せ、あるいは挫けない力に繋がると主張します。特に挫けない力は「レジリエンス」として昨今注目されているキーワードでもあります。

 「これさえすれば子供が幸せになる」「勝たないと置いていかれる」と考える時点で、〈感情の劣化〉を被っています。〈感情の劣化〉とは、他者や共同体に貢献する気持ちが働かないこと。つまり、損得勘定による〈自発性〉を超えた、内から涌く力としての〈内発性〉が生じないこと。

自分の最終目的を支える価値が、利他性や貢献性と結びつくものであることが、最も強い動機づけを与えるのです。この強い動機づけに基づく行為は、成功すれば、個人を超えた充実や幸せにつながり、失敗しても、挫けない力を与えます。また、失敗しても、動機が利他性ですから、自分の属する共同体から排除されず、包摂されます。

 

個人ベースから共同体ベースへの子育てへ

こうした宮台教授の意見を受けて、今私が感じているのは、<最適化>原理から<満足化>原理の切り替るために、個人ベースで展開されてきた子育てや教育を、共同体ベースへのそれとシフトさせていくことの必要です。

特に発達障害児の療育については、先にも述べたように、その子の障害ばかりを注目した結果、宮台教授が指摘する<最適化>原理の思考に陥って、療育をまるで株式投資のように考え、常に最適な選択をしたつもりで「あれば間違いだったのではないか」「不適切だったのではないか」と思い返して、さらに不安に襲われている親御さんや支援者が多いように感じています。

そうした不安から抜け出し、子どもたちに、「自らを包摂する共同体、すなわち『出撃基地であり帰還場所であるようなホームベース』」を提供すること。そして、子どもたちが共同体との結びつきを感じることで、利他性や貢献性に基づいた強い内発性を獲得させることこそ、今子育てや療育に最も求められていることなのではないかと考えます。

共同体を生み出す手段としてのアナログゲーム

当サイトでご紹介しているアナログゲーム療育もまたこうした問題意識に連なるものです。

アナログゲームではプレイヤーたちは一つのルールを守りあってプレイします。その過程で、プレイヤー同士に誰かがルールを理解していなければ別の人がそれを教え、プレイに不安を感じている人がいればアドバイスする関係性が生まれます。その意味で、ゲームという場は、共同体としての側面を持つのです

ゲームの共同体としての側面を強調し、そこに結びつこうとする子どもたちの間にうまれる関係性を生かして、コミュニケーション能力の引っ張り上げるのがアナログゲーム療育です。

その指導原理は、またの機会に詳しくご説明したいとおもいます。