他者の動きに注意を払う「ウィーウィルロックユー」

他者の動きに注意を払う

発達障害のあるお子さんが共通して難しいのが、刻々と変わる周囲の状況を見て、臨機応変な対応をすることです。

AD/HDのあるお子さんは、集中の困難さゆえ、他のことに気をとられ、重要なことを聞き逃したり、大事なことを見逃してしまうことがしばしばあります。ASDのあるお子さんの場合、自身の興味に集中してそれ以外のことが見えにくいことが多くあります。

今回ご紹介する「ウィーウィルロックユー」では、周囲に合わせて一定のリズムに載って決められたポーズを取る経験を通じて、「他者の動きに注意を払う」習慣を身につけてもらうことを狙っています。

_DSC0689

「ウィーウィルロックユー」のルールは以下のとおりです。

1. 様々なポーズが描かれた絵が一人一枚ずつ配られます。それがその人のポーズです。

2. 全員が「ドン・ドン・パン」と、ロックンロールの名曲”We will rock you”のリズムにのって、膝と手をたたきます。

3. 自分の番の人は、リズムにあわせてまず自分のポーズをとり、次に他の誰かのポーズをとります。

4. 直前にポーズをとられた人に順番がうつります。同じく1回目で自分のポーズ、2回目で他の人のポーズをとり次の人に回していきます。

5. うっかりポーズをとることを忘れたり、自分のポーズを間違えたり、リズムを崩してしまったらその人が負けです。10回プレイし、一番失敗した回数が少ない人が勝ちです。

ゲームをプレイ中の動画がこちらのページに上がっていますので御覧ください。
https://www.youtube.com/watch?v=O1hPZm83X6k#t=13

失敗したことがすぐ気づけるのが良い

似通ったポーズもあり、間違えないよう注意する必要がある。

似通ったポーズもあり、間違えないよう注意する必要がある。

「ウィーウィルロックユー」プレイヤーはリズムにあわせて膝や手をたたきつつ、今誰がポーズをとっているのか、いつ自分のポーズが出るか、目をそらさず注意し続ける必要があります。

 他のことに気をとられたり、ボーっとしていると、すぐに「誰の番だっけ・・?あっ自分だ!」となって失敗してしまいます。

日常生活ではなかなかこうはいきません。
たとえば、先生に「宿題です。明日までにこのプリントをやってくるように」と言われたのを聞き逃してしまったとします。お子さんがそのことに気づくのは、翌日宿題を提出するときです。

そのときに「昨日、プリントやってくるようにいったでしょ!ちゃんと話を聞きなさい!」と叱られても、すでに過ぎたことをもう一度思い起こして気をつけることは大変困難なのです。

 「ウィーウィルロックユー」が注意力の訓練ツールとして優れているのは、相手が自分のポーズをとったのを見逃すと、次の瞬間には失敗が明らかになることです。

注意を怠った瞬間に失敗するため、お子さんは「今他の事に気をとられていたな」「さっき自分はボーっとしていたな」と自覚しやすく、また指導員も「今よそみをしていたね。残念!」「ちょっと今ボーっとしてたんじゃない?」と言葉がけがしやすいのです。

このゲームを通じて、お子さんに「他の人の動きを注目していないと負ける」という体験、続いて「しっかり注目したら勝てた」という体験を短時間のうちに繰り返してもらうことで、必要な場面では周囲を注目する習慣をつけてもらうことができます。

関連記事

  1. 幼児期のアナログゲーム選びのポイント

  2. ステージ1 シンボル機能の芽生え 

  3. アナログゲーム療育のDVDが発売されました

  4. 幅広い発達段階のお子さんたちを一つの集団で療育 「スティッキー」

  5. 互いの距離を縮める 「ディクシット」

  6. 傾聴する/辛い出来事を告白する 「アンゲーム」