作業ができたら報告する「メイクンブレイク」

積み木課題をゲーム化

メイクンブレイクは、提示された見本どおりに積み木を積み上げ、時間内により多くの課題を完成させた人が勝ちとなるゲームです。

見本通りに積み木を積み上げることは、眼と手の協調性を高める目的で、発達障害のあるお子さんに最もよく用いられる療育課題の一つです。

メイクンブレイクは、その積み木課題にゲーム要素を取り入れ、よりお子さんが楽しめるように工夫されています。

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自分でタイマーをセットする

メイクンブレイクは、最初にお子さんがサイコロをふり、出た数字にあわせたタイマーを自分でセットします。

そしてスタートボタンを押し、積み木を組み立て始めます。見本通り完成したら「できました」と報告します。

指導者は、完成した積み木が見本通りであれば、次の課題を提示します。タイマーが切れるまで全部でいくつの課題ができたのかを競います。

実際のプレイの様子はすごろくやさん製作の動画を御覧ください。

 

お子さんの自主性を育む

メイクンブレイクを用いたトレーニングでは、指導者はできるだけお子さんにアドバイスしないようにすることが大切です。

「サイコロを振り、出た数字に合わせてタイマーをセットする。心の準備ができたらスタートボタンを押し、出された課題通りに積み木を組む。完成したら『できました』と報告する」

という一連の流れを、指示がなくとも自律してスピーディにできるようになることがこの課題の目標だからです。

自閉症のあるお子さんの中には、視覚認知に優れ、目で見たものを正確に描いたり、細かいパズルを素早く作れる子がいますが、そうした子の場合、メイクンブレイクで大人も驚くようなスピードで積み木を組み立てることができます。

ところが完成を報告する段階で、つまづいてしまうことが多々あります。

ほぼ見本通りにできているのに、積み木の位置や向きの些細なズレを修正することにこだわりすぎ、いつまで経っても「できました」と報告せず、そのまま時間切れになってしまうことが多いのです。

 

職場で現れるこだわりの強さ

この「ささいなことにこだわりすぎて作業が進まない」という問題は、自閉症のある大人の人が職場で働くときにしばしば見受けられることです。

以前、企業の人事担当者の方から、

「自閉症のある青年を雇って工場のラインで作業させているのだが、ほんのちょっとでも異常があるとすぐに緊急停止ボタンを押してしまう。そのため一日に何度も生産が止まってしまい、効率が悪くなって困っている」

というお話を聞いたことがあります。

異常があったらすぐにラインを停めないといけないのは確かなのですが、その自閉症のある青年の判断基準が厳密すぎるため、、結果的に生産効率が犠牲になってしまっているのです。

ちょうどメイクンブレイクで正しい積み方に厳密になりすぎ、得点の機会を逃してしまうのと同じ形です。

 

状況に応じた適切な判定を、「メイクンブレイク」で学ぶ

大切なことは、自分の基準で判定してしまうのではなく、その場で求められている基準を見て、そこにあわせて判定できるようになることです。

「メイクンブレイク」でその部分を指導することができます。

具体的には、ゲームを進めて行く上で、チェックが厳密すぎるお子さんがいた場合、その子順番を最後に回します。

その上で、他の子が課題を完成させるのを見せ、指導員が「これはちょっとズレすぎてるよ。やりなおし。」あるいは「うーんちょっとズレてるけどこれぐらいならOK」などと判定している場面に注目させます。

その際「さっきのはダメだけど、今くらいのズレならOKみたいだよ。」とアドバイスし、どのくらいの厳密さで組み立てれば良いのか、具体的にイメージを掴ませてあげます

こうした指導により、チェックが厳しすぎたお子さんはその基準を緩め、ほどほどのところで「できました」と報告できるようになります。その結果得点が増え、順位も上がってきます。

こうした経験をくりかえすことで自分独自の基準にこだわるお子さんに、その場その場で求められる基準があり、そこに合わせることで高いパフォーマンスが上げられるという意識をつけてもらうことができます。

その意識は、その子が将来働くときに必要になります。

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