発達障害のある大人の方の状態像と対応

すごろくや講座5/21は中高生・大人編です

昨日のすごろくやアナログゲーム療育講座「学童編」はおかげさまで定員一杯のご参加をいただき、好評のうちに終了しました。

次回5月21日(日)は、「中高生・大人編」です。こちらはまだお席があります。お申込みは下記のサイトから。ご参加をお待ちしています。

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発達障害のある成人の複雑な状態像

「中高生・大人編」の開催に先立ち、発達障害のある成人の方がどんな状況にあるのかを整理してみたいと思います。

私は現在、四ヶ所の通所施設で、定期的にアナログゲームを使ったコミュニケーション訓練を行っています。こうした施設には、社会参加の意欲はありながらも、障害その他の事情で就職が難しい方が通われています。

こうした方々の状態像を整理していくと、大きく三つのタイプに分けられます。

  1. 朗らかで人付き合いもよく、一見して障害の存在が見えないが、複雑なコミュニケーションや先の見通しが求められる課題において、相手の立場にたって考えたり、先の見通しの想像することの困難さが見える方々。人当たりは好いので面接は通るが、就労継続が難しく職を転々としている場合が多い。     
  2. 過去にいじめや強い叱責を受けたことが原因で、人との関わりに不安があったり、自己肯定感が低いなどの、心理的な課題を抱える方々。第一印象として暗さや気弱さが目立ちます。他方で、業務遂行能力は高いことが多く、安心できる環境ではパフォーマンスを発揮できる可能性が高いです。
  3. 能力面、心理面共に大きな課題はないが、体調が不安定で通所が難しい方々。朝起きられない、不定期に休むなどで規則正しく通所すること自体が難しい。就労継続の難しさが予想されます。

こうしてまとめてみると、障害特性だけでなく心理面、健康面でも課題を抱える方が多く、全体として子どもより複雑な状態像を呈していることがわかります。

写真は奈良の就労移行支援施設「ぷろぼの高の原事業所」さんでの実践。スカイプを使って遠隔で就労訓練を行うという他にない試みを行っています。(施設・利用者様双方の了解を得て写真を掲載しています)

 

アナログゲームでどんなアプローチができるか

アナログゲームで就労訓練を行った時、上記の3タイプの中で、最も顕著な変化が見られるのは2の心理面の課題を抱える方々です。人前で自分の話をしたり、他の人と関わるようなプログラムへの参加に抵抗感を感じる方が多いですが、ゲームであれば自分が何をすれば良いのか明確なので参加のハードルが低くなります。

そしてゲームを楽しむ過程で不安感が払拭されると、表情が和らぎ、積極的な発言も聞かれるようになります。こうして人と関わる自信がついたことで、他の自己開示的なプログラムに参加したり、地域活動に関われるようになったケースがあります。

3の体調面に不安を抱える方は、一見ゲームではどうにもならないと思われるかもしれませんが、実は意外な形で貢献ができることがわかってきました。「ゲームが楽しいから」という理由で、朝起きられなかった人が頑張って起きて午前中のプログラムに参加できるようになったり、来所頻度が不安定だった人が安定して通えるようになることがあるのです。

体調管理の問題は、視点を変えれば日々の安定した生活習慣をどう築くか、という問題です。通所施設としてアプローチするのが非常に難しいのです。その難しい問題に「楽しさ」というゲームならではの強みで貢献できることは、大きな発見でした。

1の、複雑なコミュニケーションや計画的な行動に課題を抱える方々へのアプローチは、最も難しいです。こうした方々には、発達障害の特性や軽度の知的な遅れの影響が強く伺われます。子どもの場合であれば、発達段階にあわせた療育をすることでゆっくりながらも発達を望めるのですが、大人の場合はそうもいかず「できることはできるが、できないことはできないまま」という形になりがちです。

しかし、子どもにはない大人の方の強みは、自らの課題を客観的に理解し、改善のための工夫を行えるということです。たとえば、ADHD的な集中困難がある方で、度々ルールの聞き漏らしがあり、プレイ中に誤った判断をする原因になってしまっている方がいました。その方は工夫して、ルールをメモ帳に書きとめるようにした結果、ルールの勘違いがなくなりプレイ中も間違いのない判断ができるようになりました。これは明らかに就労につながる成長だと思います。

療育とはちがった大人の就労訓練

このように、大人の就労訓練は子どもの療育と通じる部分はありつつも、また違った考え方やアプローチが必要になってきます。講座ではこのあたりを様々なゲームの紹介・体験を混じえてお伝えしたいと思います。

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