「目線や手振りに注目する」 ドラゴン・ディエゴ

非言語情報の読み取りを練習する

  • 今回ご紹介する「ドラゴン・ディエゴ」は、他者の目や手の動きといった非言語情報から相手の意図を読み取る練習ができるゲームです。

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「ドラゴン・ディエゴ」では、ゲームの箱自体が舞台となります。

順番の回ってきたプレイヤーは、6つのあるゴールの内ランダムに指定された1つに向けて、指で3つのボールを弾きます。指定されたゴールに入ると得点となります。

この時他のプレイヤーは、その人がどのゴールに向けて弾いたのかを予想します。予想があたれば、その人にも得点が入ります。

 

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弾く人に割り当てられたのはコイン印のゴール。3つのボールを弾いた結果、コイン印に1つ入ったので1点となる。他の人は、弾いた人がどこを狙っていたのかを推測し、カードで投票する。この場合右端のプレイヤーが当てたのでこちらも1点となる。

ゴールの幅は狭く、中々狙ったところにボールが入りません。縁に弾かれてあらぬところに飛んでいってしまうことのほうが多いです。そのため、ボールが入った場所だけをみても、どこを狙ってのか弾いたのか推測するのは難しいです。

ボールを弾いた人がどのゴールを狙ったのかを見抜くためには、ボールを弾く人の目や手の動きを観察することが重要になります。

 

発達障害のある人に多い非言語情報の読み取り困難

発達障害の中でも特にASDの傾向のある人は、表情や身振り手振りといった、非言語情報の読み取りに困難を持つことが多いと言われてます。

そのため、療育では、たとえばこのような表情と感情を対応させたプリントを用い、非言語情報の読み取り方を教えることもあります。

しかし、こうした知識以前に「目線や身振り手振りといった非言語情報から相手の意図や気持ちを読み取ることができる」ということを、本人にまず実感してもらうのが重要です。そのきっかけとなるのが「ドラゴン・ディエゴ」です。

このゲームを初めてプレイする子どもたちは、最初、弾かれたボールが入った場所だけ見て、狙った場所を判断しようとすることが多いです。

そこで指導員が、「入ったボールの場所だけじゃなく、目や手の動きも見てみよう」と言葉がけをします。あるいは、すでに目線や手の動きに着目している子がいるなら「◯◯ちゃんは、弾く人の目や手の動きを見ているよ」と、指摘してあげることで、他の子の注目を促すことができます。

こうした言葉がけがあると、子どもたちは弾く人の目線や手の動きに着目し、予測の精度があがり、得点が多く入るようになってきます。

時には、そのことを逆手にとって、自分が弾く順番のとき、わざと狙っているゴールと別の場所に目線を送り、他のプレイヤーの予測を混乱させようとする子も出てきます。しかし、ゴールを狙わないと得点にならないので、弾く直前にはチラッと本当のゴールを見なければなりません。弾く人にとっては悩ましいジレンマ、それを観察する他のプレイヤーにとっては見逃せない瞬間です。

こうして「ドラゴン・ディエゴ」では、他者の動きを観察してその意図を推測する練習を、楽しみながら繰り返すことができます。

この経験が、コミュニケーションにおいて時に言葉以上に重要になる、表情や身振り・手振りといった非言語情報の大切さに気づく、最初のきっかけとなるのです。

 

 

東京・青梅市の放課後等デイでアナログゲーム療育を実践します

放課後等デイサービス「オルオルハウスかすみ」での活動が始まります

私が住む東京・青梅市にある放課後等デイ「オルオルハウスかすみ」さんで、12月よりアナログゲーム療育を定期的に実践することになりました。12月以降、週1ペースで私が事業所に伺い、アナログゲームを用いた療育を行います。

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「オルオルハウスかすみ」は11月開所の新しい事業所。木目を生かしたとても雰囲気のよい教室で、お子さんたちも伸び伸びと過ごされていました。

オルオルハウス代表の発知(ほっち)健太郎さんは、「単なるお預かりではなく、しっかりとしたプログラムを組んでお子さんの成長に寄与したい」という思いを強く持っておられ、パステルアートや調理実習(本格的なキッチンがあります)など多様なプログラムを準備されています。そんな中にアナログゲーム療育も加えていただくことになりました。

11月開所したばかりの新しい施設ですので現在も積極的に利用者さんを募集しておられます。青梅市近辺で、発達障害のある小学生から高校生までのお子さんを育てる方は、ぜひ利用を検討されてみてはいかがでしょうか。

詳しくはオルオルハウスさんのウェブサイトをご覧ください。

 

アナログゲーム療育のさらなる展開を目指して・・・

これまで私の活動は単発のイベントや研修会が中心でした。他方、放課後等デイで継続的にアナログゲーム療育に取り組むことは、私の大きな念願でした。今回地元の「オルオルハウス」さんからのお声がかりでその念願を叶えることができ、本当に嬉しいです。

これで、先日ご紹介した成人の方を対象とした「すぺぃろ」さんでの活動とあわせて、発達障害のある大人の方からお子さんまで幅広くアナログゲーム療育を実践できる状況が整いました。

今後も、これらの現場で培ったノウハウをまとめ、積極的にアウトプットすることで、発達障害支援に関わる人達に、アナログゲームの療育ツールとしての価値をしっかりと伝えていきたいと思います。

 

 

発達障害向けの医療・療育機関の評判 「発達ナビ」のレビューを200本読んでみました

親御さんのレビューが400件以上!

 
LITALICOさんが準備中の発達障害ポータルサイト「発達ナビ」に注目しています。
 
このサイトは現在、正式オープンに向けて、学校や幼稚園、病院、療育施設を利用している親御さんからのレビューを募集しており、その数はすでに400件を越えています(2015年11月時点)。
 
まだ地域や種別で検索することは出来ない状況ですが、それでもこの大量のレビューは、発達障害のある子の支援に携わる者にとって非常に貴重な資料です。
というのも、親御さんが各々の施設に何を求めているのか、どこに満足を感じ、どこに不満を感じたのかがわかるからです。
 
 

大量のレビューから見えてきた医療・療育機関の現状

掲載されているレビューの約半分、200本ほどのレビューを読みました。

これくらい読むと、各施設に親御さんがどんな期待を抱いているか、またどんな不満を感じているか、ある程度共通項が見えてきました。

以下にまとめてみます。

  • 医療機関(病院・クリニック)
    • 発達障害の診断ができる医療機関はどこも混み合っている様子。予約から診察まで数ヶ月かかるところが多い。また、診察室での待ち時間も長く、2~3時間になるところも。そのため、待合室におもちゃや絵本が配備されているかどうかを気にしている親御さんが多かった。
    • 医師の説明の態度を気にしている親御さんが多かった。丁寧な説明に安心したという報告がある一方、医師が子どもの障害に関するネガティブな話を親としての心情に配慮せずにずけずけと言って、傷ついたり怒りを感じたという報告もみられた。
  • 療育機関(市区町村が運営する公的なもの 「◯◯市療育センター」など)
    • 療育の頻度が低いのが気になる。二週に一回、あるいは一ヶ月に一回というところが多い。療育内容に対する不満はさほど聞かれなかったが、この低頻度で効果が挙がっているのか?やや疑問ではある。
    • 親御さんは頻度が少ないなら少ないなりに、療育自体の効果というよりは、定期的な発達チェックの場として、また子育ての悩み相談の場として割り切って利用している印象。
  • 療育機関(民間 放課後等デイサービスを含む)
    • 親御さんが気にしているのは、職員の対応の丁寧さ、職員の障害への理解度、など。提供するプログラムの内容や療育効果への言及はあまり見られなかった。
    • 職員の丁寧な対応や、子どもが笑顔になって楽しんで通っている様子などに満足している親御さんが多かった一方、療育を受けたことで子どもの成長が具体的に感じられたことに言及するレビューは、比較的少数であった。
    • 具体的な療育成果という点では、昔ながらの療育機関でかなり厳しく指導をしているところがあり、生活スキルなどの向上が見られるなど親御さんの評価が高かった。
    • 放課後等デイについては、送迎の有無や、休日預かり時間の長さなど、お預かり施設としてどれだけ使いやすいかも重視されていた。
    • 不満として最もよく聞かれたのは「指導員の異動の多さ」。子どもと担当する指導員の間に信頼関係ができてもその指導員が異動してしまうことが多く、代わって担当した指導員のレベルが低かったり、引き継ぎ不充分で担当が代わる度子どもの状況を繰り返し報告しなければならないといった不満が見られた。
 

 療育の成果は挙がっているのか

これらのレビューのうち、特に療育機関に関することで、私が注目したのは、その施設に通った結果、お子さんに具体的な成長が見られたかどうか、という点です。

約200件のレビューの中で、その施設に通ったことでお子さんにプラスの変化が起きたことを報告したものは相対的に少数でしたが、その中には「変化に驚いた」「大きく変わった」という報告もあり、親御さんからみてきちんと結果を出している療育施設も確かにあるのだと感じました。

以下に、子どもが具体的に成長したことを報告している施設のレビューのリンクを以下に貼り付けます。

これらのレビューを順番に読んでいくことで、「結果の出せる教育・療育施設」のレベル感がつかめるのではないでしょうか。

よろければ参考になさってください。

 
 

現在もレビューを募集中

発達ナビ」さんでは現在もレビューを募集しています。レビュー1件につき、500円の商品券がもらえるということですから、保護者の皆さんはレビューを投稿されてみてはいかがでしょうか。締め切りは12月31日までとのことです。

不安ベースの子育てから安心ベースの子育てへ

その子育て、間違っていませんか?

先日本屋に入ったとき、ある経済誌の教育特集の表紙が目に入り、ギョッとました。

「その子育て、間違っていませんか?」

という見出しがついています。さらにその下には

「科学でここまでわかった!悪い教育 良い教育」

という小見出しが。

「間違う」「悪い」といったネガティブワードを前面に押し出すことで、ことさらに子育ての不安を煽るその雑誌の見出しを見て、私は少なからず不快感を覚えました。

しかし、実際に雑誌を読んでみると、見出しから受けた印象とは裏腹に、むやみに不安を煽ることはなく、丁寧な取材の基づくバランスの取れた内容でした。

それだけに、かえって表紙の不安を煽るような見出しが気になります。おそらくこの雑誌の編集者は、ネガティブワードを連ねたほうが、子育てに不安を持つ親の注目を惹けると考えたのでしょう。

問題なのは雑誌自体より、むしろ普段から子育てに不安があり「間違う」「悪い」などのネガティブなキーワードに反応してしまう親御さんが多くいる、と思われている現状ではないでしょうか。

自己責任と自己決定を求める時代の変化が子育てへの不安を生む

私が相談にのっている発達障害のある子を育てる親御さんの中にも、子育てに不安を持つ方が多くいらっしゃいます。その理由は、お子さんの障害にあることも確かですが、それ以前に子育て自体に不安を感じている方が多いと感じており、そこに療育者・支援者としてどう向き合っていくかが、今私の中で大きなテーマになっています。

そんな中で、子育てにまつわる不安の向き合い方に大きなヒントを与えてくれたのが、首都大学東京教授で社会学者の宮台真司さんが書いた「最適という孤独を離れ、満足の共同性へ」という文章です。

この文章の中で宮台教授は、今の時代、人々が多くのことを自身の責任で判断せざるを得なくなった結果、不安に陥る人が増えていることを指摘します。

以下、リンク先の文章から引用します。

何もかも個人が自己責任で自己決定の機会を引き寄せる必要が出てきたという時代の変化が、「社会として」いいのか悪いのかは、考えなくてはならないことです。抽象的な水準で言えば、個々がバラバラに分断され孤立した状態になると、全てを自分でハンドリングしなければならないので、自分にとって「最適な選択」をしないと「損をする」「置いていかれる」などと不安に陥りがちになるので、社会が不安ベースになります。

 これだけ情報があふれた流動的な社会では、「最適な選択」なるものは単なる幻想に過ぎません。どんなに「最適な選択」をしたつもりでも、少し時間が経てば状況が変わり、「あれば間違いだったのではないか」「不適切だったのではないか」と思い返することになり、さらに不安に襲われます。こうして、安心ベースだった社会のあり方が、不安べースへと変化してしまうのです。

 

発達障害のある子を育てる親御さんの中にも、お子さんの療育について常に最適な環境を求めながら、宮台教授が指摘するように「あれは間違いだったのではないか」「不適切だったのではないか」と思い返して、不安に襲われている方が多くいると感じます。

宮台教授は、こうした不安から抜け出すには<最適化>原理に基づく考え方をやめ、<満足化>の原理へと切り替えていく必要があるとし、そのためには空洞化した共同体の復活が必要であると述べます。

経済学者は、利潤の最大化(投資効率の最適化)が人間の行動原則だとする仮説に立ちます。しかし、これは企業やファンドなどの資本の動きについて妥当するものの、実は僕たち自身はそのように生きていません。「最適」でなくても、特に問題がなければ(そこそこ満足なら)前に進む。それが〈満足化〉の原理です。この原理は共同体の自明性ともにあります。

 

「自分で何もかもしなくては⋯」と過剰に思い込む人は、〈最適化〉原理に駆られがちになって不安や抑うつ感から逃れられなくなります。現にそういう人ばかりでしょう。だからこそ、自覚的に、ものごとの評価を〈満足化〉原理に引き戻すことが重要です。そのためには、自らを包摂する共同体、すなわち「出撃基地であり帰還場所であるようなホームベース」を築いていくことが不可欠です。そうすれば〈満足化〉に簡単に近づけます。

共同体とは何かという問いについて、宮台教授は転校を多く経験した自身の子ども時代の経験を挙げます。

僕は六つの小学校に通う転校生でしたが、僕自身けんかが弱くても、けんかの強い子と友だちになる力があったから、心配ありませんでした。逆に、友だちは、学級委員をつとめる僕といつも仲良くすることで、担任の先生の大目玉を食らう頻度が減りました。そう、「持ちつ持たれつ」です。

 けんかが弱ければ、強い子と友だちになればよく、勉強ができなければ、できる子と友たちになればよい。「持ちつ持たれつ」で共同体的に結合していけば、個人が万能である必要はない。人間関係の輪に入って分相応の役割を果たせればいいだけです。

そして、子どもがこうした共同体関係に結びついていることが、充実や幸せ、あるいは挫けない力に繋がると主張します。特に挫けない力は「レジリエンス」として昨今注目されているキーワードでもあります。

 「これさえすれば子供が幸せになる」「勝たないと置いていかれる」と考える時点で、〈感情の劣化〉を被っています。〈感情の劣化〉とは、他者や共同体に貢献する気持ちが働かないこと。つまり、損得勘定による〈自発性〉を超えた、内から涌く力としての〈内発性〉が生じないこと。

自分の最終目的を支える価値が、利他性や貢献性と結びつくものであることが、最も強い動機づけを与えるのです。この強い動機づけに基づく行為は、成功すれば、個人を超えた充実や幸せにつながり、失敗しても、挫けない力を与えます。また、失敗しても、動機が利他性ですから、自分の属する共同体から排除されず、包摂されます。

 

個人ベースから共同体ベースへの子育てへ

こうした宮台教授の意見を受けて、今私が感じているのは、<最適化>原理から<満足化>原理の切り替るために、個人ベースで展開されてきた子育てや教育を、共同体ベースへのそれとシフトさせていくことの必要です。

特に発達障害児の療育については、先にも述べたように、その子の障害ばかりを注目した結果、宮台教授が指摘する<最適化>原理の思考に陥って、療育をまるで株式投資のように考え、常に最適な選択をしたつもりで「あれば間違いだったのではないか」「不適切だったのではないか」と思い返して、さらに不安に襲われている親御さんや支援者が多いように感じています。

そうした不安から抜け出し、子どもたちに、「自らを包摂する共同体、すなわち『出撃基地であり帰還場所であるようなホームベース』」を提供すること。そして、子どもたちが共同体との結びつきを感じることで、利他性や貢献性に基づいた強い内発性を獲得させることこそ、今子育てや療育に最も求められていることなのではないかと考えます。

共同体を生み出す手段としてのアナログゲーム

当サイトでご紹介しているアナログゲーム療育もまたこうした問題意識に連なるものです。

アナログゲームではプレイヤーたちは一つのルールを守りあってプレイします。その過程で、プレイヤー同士に誰かがルールを理解していなければ別の人がそれを教え、プレイに不安を感じている人がいればアドバイスする関係性が生まれます。その意味で、ゲームという場は、共同体としての側面を持つのです

ゲームの共同体としての側面を強調し、そこに結びつこうとする子どもたちの間にうまれる関係性を生かして、コミュニケーション能力の引っ張り上げるのがアナログゲーム療育です。

その指導原理は、またの機会に詳しくご説明したいとおもいます。