6/17学童編(後編)ご案内&アドラー心理学「共同体感覚」について

6/17学童編(後編)は、心理面へのアプローチがテーマです

毎回好評のアナログゲーム療育講座、次回は6月17日(土)の学童編(後編)です。「周囲に関心を持つ」「人と関わる勇気を回復する」といった心理面へのアプローチについて解説します。

ゲームを使ってお子さんと関わっていくと、様々な課題が見えてくるはずです。

たとえば、

  • 「ゲームに参加しようとしない」
  • 「わざとルールに反する行動をする」
  • 「暴言をいう・「暴力をふるう」
  • 「負けるとかんしゃくを起こす」

といったことです。

問題行動の背景には、過去の失敗体験から来る集団参加への不安が影響している場合が多いです。こうしたお子さんの心理にどうアプローチしていくのか、ゲーム体験を混じえて解説します。

前編を聞いていない方でも理解には全く支障はありません。下記のすごろくやサイトからお申込みをどうぞ。前編は開催日前に満席になってしまいましたので、今回も早めの申込をオススメいたします。

アプローチの軸となるアドラー心理学の「共同体感覚」

お子さんの心理面の課題を探る上で手がかりとなるのがアドラー心理学です。

フロイト、ユングと並んで「世界三大心理学者」と呼ばれるアルフレッド・アドラー。数年前に関連書籍がベストセラーなり、ドラマ化もされるなど、我が国でも一躍話題になりました。

アナログゲームを療育で特に重視しているのが、アドラーが提唱した「共同体感覚」という概念です。

共同体感覚は、下記の三つから成り立ちます。

  • 自分は人から助けてもらえる(他者信頼)
  • 自分は人の役に立てる(自己信頼)
  • 自分はここにいてもよい(所属感)

この三つを感じている時、人間は幸福であるとアドラーは述べています。

なぜこの三つなのか、どうやったらこれらの感覚を持てるのか、といった具体的な話は講座に譲りますが、この三つがあれば幸せだ、というのは理屈抜きに共感いただける方が多いのではないかと思います。

自己信頼を育てる

上記三つの要素の中で、アナログゲーム療育で特に重視するのが「自分は人の役に立てる」という自己信頼の気持ちをお子さんの中に生み出すことです。

発達障害児支援で重視される自己肯定感と、アドラー心理学のいう自己信頼との違いは、後者が共同体への貢献によって培われるという点です。自己信頼は「自分は共同体に貢献できる人間である」という実感を意味しており、「貢献感」とも言われます。

他の二つ、「自分は人から助けてもらえる」「自分はここにいてもよい」という感覚は既存の療育や支援でもある程度提供できていると思いますが、「自分は人の役に立てる」という自己信頼(貢献感)をお子さんに実感してもらえる療育や支援というものは、これまであまりなかったのではないかと思います。

アナログゲームで共同体感覚を身につける

アナログゲームは、お子さんが「自分は人の役に立てる」という自己信頼を身につけるためにとても有用なツールだと考えています。

なぜなら、アナログゲームにおいては、プレイヤーたちは優劣を競うライバルであると同時に、ルールを守り合ってプレイしあう点で「ゲーム」という1つの共同体を成立させるために貢献し合うパートナーでもあるからです。「ルールを守ってゲームを成立させる」ということ自体が共同体への貢献となるのです。

のみならず、こちらの「禁断の砂漠」のように、勝敗を競う代わりに、協力しあって共通のゴールに向かうゲームも存在します。

協力して一つのゴールを目指す 「禁断の砂漠」

6月の講座では、これ以外にも共同体感覚を身につけるのに有益なゲームをたくさん紹介したいと思います。

6月 7月のアナログゲーム療育講座

現在募集中の講座は他に二つあります。いずれもリンク先から申込みが必要です。皆様と会場でお会い出来るのを楽しみにしています。

 

6月11日(日) 東大島文化センター(江東区)

アナログゲーム療育~楽しくコミュニケーション力を身につける~

初となる5時間の講座です。すごろくやで開催している幼児編と学童編をあわせた内容です。アナログゲーム療育に知りたいという方にオススメの講座です。

 

 

7月16日(日) すごろくや講座 中高生・大人編(後半)

就労に必要となる、コミュニケーション力や見通し力を身につけるためのゲームを紹介します。

 

 

 

発達障害のある大人の方の状態像と対応

すごろくや講座5/21は中高生・大人編です

昨日のすごろくやアナログゲーム療育講座「学童編」はおかげさまで定員一杯のご参加をいただき、好評のうちに終了しました。

次回5月21日(日)は、「中高生・大人編」です。こちらはまだお席があります。お申込みは下記のサイトから。ご参加をお待ちしています。

 

発達障害のある成人の複雑な状態像

「中高生・大人編」の開催に先立ち、発達障害のある成人の方がどんな状況にあるのかを整理してみたいと思います。

私は現在、四ヶ所の通所施設で、定期的にアナログゲームを使ったコミュニケーション訓練を行っています。こうした施設には、社会参加の意欲はありながらも、障害その他の事情で就職が難しい方が通われています。

こうした方々の状態像を整理していくと、大きく三つのタイプに分けられます。

  1. 朗らかで人付き合いもよく、一見して障害の存在が見えないが、複雑なコミュニケーションや先の見通しが求められる課題において、相手の立場にたって考えたり、先の見通しの想像することの困難さが見える方々。人当たりは好いので面接は通るが、就労継続が難しく職を転々としている場合が多い。     
  2. 過去にいじめや強い叱責を受けたことが原因で、人との関わりに不安があったり、自己肯定感が低いなどの、心理的な課題を抱える方々。第一印象として暗さや気弱さが目立ちます。他方で、業務遂行能力は高いことが多く、安心できる環境ではパフォーマンスを発揮できる可能性が高いです。
  3. 能力面、心理面共に大きな課題はないが、体調が不安定で通所が難しい方々。朝起きられない、不定期に休むなどで規則正しく通所すること自体が難しい。就労継続の難しさが予想されます。

こうしてまとめてみると、障害特性だけでなく心理面、健康面でも課題を抱える方が多く、全体として子どもより複雑な状態像を呈していることがわかります。

写真は奈良の就労移行支援施設「ぷろぼの高の原事業所」さんでの実践。スカイプを使って遠隔で就労訓練を行うという他にない試みを行っています。(施設・利用者様双方の了解を得て写真を掲載しています)

 

アナログゲームでどんなアプローチができるか

アナログゲームで就労訓練を行った時、上記の3タイプの中で、最も顕著な変化が見られるのは2の心理面の課題を抱える方々です。人前で自分の話をしたり、他の人と関わるようなプログラムへの参加に抵抗感を感じる方が多いですが、ゲームであれば自分が何をすれば良いのか明確なので参加のハードルが低くなります。

そしてゲームを楽しむ過程で不安感が払拭されると、表情が和らぎ、積極的な発言も聞かれるようになります。こうして人と関わる自信がついたことで、他の自己開示的なプログラムに参加したり、地域活動に関われるようになったケースがあります。

3の体調面に不安を抱える方は、一見ゲームではどうにもならないと思われるかもしれませんが、実は意外な形で貢献ができることがわかってきました。「ゲームが楽しいから」という理由で、朝起きられなかった人が頑張って起きて午前中のプログラムに参加できるようになったり、来所頻度が不安定だった人が安定して通えるようになることがあるのです。

体調管理の問題は、視点を変えれば日々の安定した生活習慣をどう築くか、という問題です。通所施設としてアプローチするのが非常に難しいのです。その難しい問題に「楽しさ」というゲームならではの強みで貢献できることは、大きな発見でした。

1の、複雑なコミュニケーションや計画的な行動に課題を抱える方々へのアプローチは、最も難しいです。こうした方々には、発達障害の特性や軽度の知的な遅れの影響が強く伺われます。子どもの場合であれば、発達段階にあわせた療育をすることでゆっくりながらも発達を望めるのですが、大人の場合はそうもいかず「できることはできるが、できないことはできないまま」という形になりがちです。

しかし、子どもにはない大人の方の強みは、自らの課題を客観的に理解し、改善のための工夫を行えるということです。たとえば、ADHD的な集中困難がある方で、度々ルールの聞き漏らしがあり、プレイ中に誤った判断をする原因になってしまっている方がいました。その方は工夫して、ルールをメモ帳に書きとめるようにした結果、ルールの勘違いがなくなりプレイ中も間違いのない判断ができるようになりました。これは明らかに就労につながる成長だと思います。

療育とはちがった大人の就労訓練

このように、大人の就労訓練は子どもの療育と通じる部分はありつつも、また違った考え方やアプローチが必要になってきます。講座ではこのあたりを様々なゲームの紹介・体験を混じえてお伝えしたいと思います。