【療育テクニック】お子さんの目線に注目する

言葉のないお子さんへの療育

私達はお子さんを教育するとき、もっぱら言葉に頼っています。しかし言葉をまだ獲得していないお子さんの療育では言葉が使えず、経験の浅い指導者は戸惑うことになります。

たとえば、言葉を獲得していない子に指導者が「こうしなさいって言ったでしょ。どうしてできないの?」などと言葉で問いかけているのをよく目にします。その子が言葉は理解できないと頭ではわかっていても、いざ指導するとなると言葉で伝える以外の方法をしらないので、そこに頼らざるを得ないのです。

お子さんの目線に注目する

こうした時、指導者には「お子さんの目線に注目しましょう」とアドバイスしています。こちらの指示がお子さんに通っているかどうかは、お子さんの目線が示してくれるからです。

よくあるのは、指導者が指をさして指示する際、指導者の注目が、お子さんの目線ではなく、自分が指示した指先に置かれてしまっているケースです。その結果、お子さんがそっぽを向いて指示を見ていないのに、指導者はそこに気づけていないという状況がおきます。

本来であれば、指導者は指示を出しながら、お子さんの目線に注目する必要があります。お子さんの目線が自分が指示した先にしっかり向いているかどうかを確認するのです。

目線が外れているときはどうするか

では、指示をだしてもお子さんがそっぽを向いて注目してくれないときはどうすればよいのでしょう。お子さんの顔に手をあてがって直接目線を動かす流派もありますが、お子さんが嫌がることが多いので私は使っていません。

私の場合は、対象物にお子さんの目線を向ける代わり、注目してもらいたい対象物(例:机上に置かれたカード)を、お子さんの目線の先に持って行きます。

お子さんが対象物に注目したのを確認したら、今度はそれを本来の位置(机上)にゆっくり戻します。このとき指導者の注目は、当然お子さんの目線に注がれなければなりません。対象物が移動するに従い、お子さんの目線もまた正しい位置に戻ってくるかどうかを確認します。

それでもお子さんの注目が得られないとなれば、その場のテクニックでどうにかなる問題ではなく、課題設定・環境設定から見直さなければなりません。

上の例でいえば、お子さんがカードにちっとも興味を持っていない、もしくは興味が教室内の別のところに向いているのです。または、指導者との信頼関係が充分築けていない可能性もあります。原因を見つけて、そこににあわせた対策を行う必要があります。

座る位置も大切

指導者が常にお子さんの目線に注目できるためには、座る位置も重要です。

一対一の指導では、下の写真のようにお子さんが机に座っている位置の側面、または対面に座ります。

東京・青梅市にある放課後等デイサービス「オルオルハウス」さんの実践より。一対一の療育では、指導者は写真のようにお子さんの側面か、または対面に座ることが望ましい。

しばしば、指導者がお子さんのま隣または斜め後ろに座り、両者が同じ方向を向いて療育している場合がありますが、その位置関係では指導者がお子さんの目線を確認するのに顔を大きく横に動かさないとならず、大変なので指導者がお子さんの目線に注目しなくなる原因となり、望ましくありません。

 


すごろくやアナログゲーム療育講座 毎月開催中

9月17日(日) 学童編(前)

10月22日(日) 学童編(後)

お申込みはこちらからどうぞ。

すごろくや新講座のお知らせ

秋のアナログゲーム療育講座は学童編です

毎月東京・高円寺で開催しているアナログゲーム療育講座。秋は小学生のお子さんと関わる方を対象とした学童編を開催します。各講座の詳しい内容は、リンク先からどうぞ。

9月17日(日)の学童編前編は、認知面からのアプローチを解説します。コミュニケーションや計画的な行動に必要となる「客観的思考」や「他者視点の獲得」を学ぶゲームを開設します。

10月22日(日)の学童編後編は、心理面からのアプローチです。「ゲームに参加しない」「負けるとかんしゃくを起こす」「ルールを破る」などの問題行動がなぜ起きるのか、その原因を探るとともに、ゲームを通じて人と関わることへの不安を解消する関わり方をお伝えします。

新たに「応用編」を開催!

定期的に講座に参加してくださっている方から「新しいゲームも紹介してほしい」とのご要望を頂いています。

そこで新たに「応用編」として、年齢ではなくテーマでまとめた新しい講座を開催します。応用編と題していますが、初めての方でも理解できる内容です。

10月29日(日)は「役割を演じるゲーム」というテーマで、普段の日常とは違う自分を演じる必要があるゲームをご紹介します。

発達障害のある方の場合、たとえば就職面接で、評価に悪影響を与えてしまうようなことまで正直に答えてしまうことがあります。自分にどんな役割を求められているのかを理解し、事実や自分の気持から一端はなれて、役割に徹する経験をすることで、柔軟なコミュニケーション能力を身につける練習をします。

小学校中学年から大人までの方がプレイできるゲームをご紹介します。

大好評だった「協力ゲーム」講座

また11月19日(日)は、「協力ゲーム」講座です。プレイヤー同士で競い合う代わり、共通のゴールに向かって協力し合うタイプのゲームを紹介します。

こうしたゲームは総合的なコミュニケーションの練習として最適です。昨年に一度だけ開催したのですが大変好評で再演のご希望を多く頂いていた内容です。

小学校低学年から大人まで幅広く遊べるゲームをご紹介します。

なお、11月19日は初のダブルヘッダーとなり、19日の協力ゲーム講座の前に中高生・大人編の前篇が行われます。協力ゲーム講座のゲームは中高生や大人の方の支援でも活用できますので、二つとも受けるのもオススメです。

「応用編」はこれからも多く企画していきたいと思っていますので、ご期待下さい!。

 

放課後等デイサービス経営のポイント~マネジメントについて~

アドバイジングの経験から得られた原則

サービスの質が玉石混淆と言われる放課後等デイサービス。
 
私はこの分野で、療育アドバイザーとして多くの事業所さんと関わってきました。また直接関わっていない事業所さんの様子も多く見聞きしました。その中には感動的なサービスを提供している事業所さんもあれば、目も当てられない惨状に陥っているところもありました。
 
その経験を通じて、放デイの経営には守るべき1つの原則があるのでは、と考えるようになりました。それは、
 
教室運営にまつわる権限を、経営者から管理者へ、管理者から現場職員へと、できるだけ下位に移していく
 
という原則です。
 
 

トップダウン型のマネジメントが現場を壊す

サービスの質が上がらず、職員が定着しない組織の多くが、極端なトップダウン型のマネジメントをしていました。
 
たとえば、全ての判断を経営者が行っており、現場スタッフはそれに従うだけの組織。あるいは実施するプログラムや業務内容に厳格なマニュアルがあり、そこから外れることが許されない組織。
 
こうした組織は、デイの利用者である、様々な発達段階・障害特性のお子さんが見せる圧倒的な多様性に対応できません。具体的には、お子さんの発達段階にあわない課題やアクティビティを設定して無理やり取り組ませたり、問題行動に個別対応せず放置してしまうといった傾向が生まれます。結果としてお子さんが荒れてトラブルやクレームが頻発し、その対応に職員も疲弊して離職。さらにサービスの質が落ちるという悪循環に陥ってしまうのです。
  
こうした悪循環に陥っている組織は、もとをたどると他業種からの参入が多いようです。別の業種で、上からの一方的なマネジメントやマニュアル化した画一的なマネジメントで成功した経験を、そのまま多様な子どもたちが利用する放デイの運営に当てはめてしまうのです。
 
こうした「成功体験の誤った当てはめ」は、塾産業のような隣接した業界から参入した事業体ですら見られます。塾は学年によって何を教えればよいか決まっています。しかし、放課後等デイサービスでは一人ひとりのお子さんの発達段階や支援ニーズを把握してのち、その子に何を提供するかを決めるのです。
 
障害のある子たちの圧倒的な多様性、個別性の高さを見越して組織づくりを行うことは、いかに先見の明のある経営者さんでも、障害児福祉の経験なしには難しいことなのだと、日々のアドバイジング業務を通じて感じています。
 
トップダウン型のマネジメントについて、もちろん例外はあります。経営者が、経営ができマネジメント能力があり、なおかつ障害児に合わせたプログラム開発や個別対応までできるスーパーマンである場合です。
こうしたカリスマ経営者が率いる事業所は、質の高いサービスを提供しています。ただし、経営者が目指す高い水準についていけるスタッフを発掘・育成することは常に難しいことから、規模の拡大はゆっくりしたペースとなる傾向があります。
 

経営が上手く言っている事業所は現場の裁量が大きい

さて、サービスの質が一定以上で職員の定着も良く、なおかつスムーズに事業所を展開できているところをみると、採用やプログラム設計、人材育成に関する現場の権限が大きいのです。
裏を返せば、経営者が出しゃばらずとも管理者は自律的に教室を運営でき、現場のスタッフはいちいち上から指示を受けなくても自分で考えて行動できる。そういう人材を揃えているのです。
 
「そんな人が雇えるなら誰も苦労はしないよ」という経営者さんの声が聞こえてきそうです。しかし、アドバイザーの視点で客観的にみていると、トップダウン型の事業所は例外なく採用基準も甘いのです。資格要件を満たしていればパッと採ってしまう。それは採否を決定する経営者や幹部社員が「自分がマネジメントするから」「マニュアルがあるから」という理由で、本人の能力や人格に少々問題があってもなんとかやれるだろうと考えてしまうのです。
 
他方、現場裁量を重視する経営者さんの場合、雇用者に求める能力の水準は高くなります。そのため自身が丁寧に面接しますし、実際教室に入ってもらって子どもと関わる様子もみますし、そうした綿密な選考の結果として不採用も多く出します。
だから常に「ウチは人材不足です」と嘆いておられる。その代わり、雇った職員が1ヶ月足らずで辞めたり、仕事ができない職員が無理に会社にぶら下がろうとして労使トラブルが起きたりすることはまずないのです。
 

採用に時間とコストをかけるべし

ここまでの記述を踏まえて、もう少し具体的な指針を示してみましょう。
 
・放課後等デイサービスには多様な発達段階・障害特性のお子さんが通うため、提供するサービスの個別性が極めて高い。
 
・高い個別性に対応するには上から下へ権限移譲を積極的に進め、現場のスタッフが迅速かつ柔軟な判断ができるようにする必要がある。
 
・大きな権限を与えても自律的に動ける人材を集めるため、採用にかける時間とコストの優先順位を高める必要がある。
 
今回は放デイ経営のポイントとしてマネジメントや採用の部分で気づいたことをお伝えしました。もう一つ重要なのが雇ったスタッフの育成です。これも難しい問題です。次回お伝えしようと思います。
 

すごろくやアナログゲーム講座のお知らせ

 
毎月、東京高円寺のすごろくやではアナログゲーム療育の講座を行っています。次回は8月20日の幼児編です。放課後等デイサービスに多く在籍する知的障害のあるお子さんと関わる上でも有益な内容です。詳しい内容やお申込みはこちらからどうぞ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
個人レベル・事業所レベルそれぞれの個別性の高さに対応するためには、お子さんに提供するプログラムの開発や教材の購入、外部講師の選定や採用、イベントの企画、あるいは職員の採用といったことは、なるたけ経営者が抱え込まずに現場の管理者に任せ、さらに管理者はなるたけ直接子どもと接する現場スタッフに企画させ、実行させることが、スムーズな経営と質の高いサービス提供に繋ると考えられます。
逆にいえば、経営者が子どもに提供するプログラムから教材まで全てを決定し、精密なマニュアルを作ってトップダウンでスタッフを動かそうとすると、発達障害のあるお子さんに求められる対応に関する圧倒的な個別性の前に破綻をきたしかねない、ということです。
 
素晴らしいサービスを提供し、スタッフも自信と安心感をもって働けている事業所もあれば、サービスの質が低くそのことに疑問を感じたスタッフの退職が相次ぐような事業所もあります。後者のケースでは、多くの場合、経営者がトップダウン式な高圧的なマネジメントを行い現場に裁量を任せない、という傾向がありました。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

アナログゲーム療育のDVDが発売されました

幼児編&学童編の2編4枚組で販売

教育・医療関連のDVDを多数発売している(株)ジャパンライムさんより、アナログゲーム療育のノウハウをまとめたDVDが発売となりました。

幼児編・学童(小学生)編の2編4枚組のセットとなっています。上記のウェブサイトでは7月末までセットで10%OFFで発売していますので、この機会にぜひご利用ください。

7月10日に発売され、すでに150本以上の注文が入っているとのことです。「わかりやすい内容で現場ですぐに実践してみたい」といった感想も寄せられています。

紹介する全ゲームのプレイ場面を収録

このDVDの特徴は、なんといっても、紹介した20近いゲーム全てについて、実際のプレイ映像が指導ポイントの解説付きで収録されていることです。幼児編・学童編からそれぞれサンプル映像をご紹介します。

 

 

実際のプレイ場面を見ることで、どんなゲームなのか、どう指導するのか、大変わかりやすくなっています。「このゲームならあの子にもできそう!」と、具体的な療育のイメージを持っていただけると思います。

購入の際に留意いただきたいこと

幼児編・学童編と年齢で区切っていますが、実年齢ではなく発達段階にあわせた内容です。小学生であっても、知的な遅れがあり発達段階が幼児期に留まる場合は幼児編を選ばれたほうが良いです。

 もう一つ、作者としてワガママを言わせていただくと、お子さんの発達段階にかかわらず、ぜひ幼児編と学童編を通してご覧いただきたいと思っています。

お子さんの認知発達段階についての一貫した見通しを持っていただきたい。それがこのDVDを制作した理由だからです。

幼児と関わっている方は、幼児編だけでなく学童編もご覧いただくことで、お子さんの認知能力ひいてはコミュニケーション能力が、将来どのように発達していくのか、具体的な見通しを持っていただけます。

学童と関わる方の場合、お子さんに発達障害があると、同年代の子と同じように振る舞えないことがありますが、それがなぜ起きているのか、療育をする際発達段階をどこまで遡ればよいのか、理解いただけるでしょう。

このDVDがみなさんのお子さんとの関わりを、より楽しく実りあるものにする一助になれば幸いです。

 

 

すごろくや講座年間スケジュール発表

東京・高円寺にあるボードゲームショップ「すごろくや」さんで毎月開催させていただいているアナログゲーム療育講座。毎回好評をいただいています。

今回すごろくやさんでアナログゲーム療育講座の特設ページを作成してもらいました。あわせて、年間のスケジュールも公表。各月の申し込みが可能となりました。今まで1~2ヶ月先の情報しか公開できなかったので、予定を合わせづらかった方もいらっしゃるかもしれませんが、この機会にぜひお申込みください。

 

5回で1クールです

アナログゲーム療育の講座は、療育の対象となる人の年代によって内容が分かれています。

  • 幼児編
  • 学童編(前編)
  • 学童編(後編)
  • 中高生・大人編(前篇)
  • 中高生・大人編(後編)

以上の5回で1クールとなっています。ここでいう年代はあくまで発達段階のことであり、実年齢ではありません。たとえば小学生でも中程度の知的な遅れがある子の場合は、学童編よりは幼児編の方が適した内容だと思います。

それはそれとして、主催者としては、ぜひ5回通しで受けていただきたい、という思いが強くあります。これらの講座はいずれもピアジェの認知発達理論をベースに組み上げており、5回全て受講することで、言葉が出るか出ないかの幼児から複雑な思考が可能になる大人までの発達を一貫して理解することができるからです。その理解はきっと皆さんの支援や療育、子育ての軸になるはずです。

次回は8月20日幼児編です。この回から、新しいクールが始まります。アナログゲームを通じて子どもの発達について知る旅を、みなさんとご一緒にできればと思っています。

構造化 or not構造化?

放課後等デイサービスの研修で・・・ 

昨日研修させていただいたデイはなんと職員の中にノースカロライナでTEACCHを学んだ方がおり、かつてないほど構造化された教室環境だった。

周りがパーテーションで区切られており、余計なものが目に入らない。だから目先のことに集中できる。目先のことに集中できるから余計な声や音がでない。ゆえに視覚のみならず音声の刺激も減る。

その中の小集団指導用スペースでアナログゲーム療育をしたが、刺激が少ないのでお子さんが集中しやすく、指導者としても相当やりやすい、という実感をもった。

 

ひるがえって、今定期訪問しているデイはオープンな一部屋で、視覚支援も荷物の置き場所や手洗い場所、その日のグループ分け程度の最低限なもの。

なのでゲーム中に他の子が手を出してきたり、誰かが教室に入ってくると子どもの注意が逸れて席を立ってしまったりする。しかし、これはこれで意味があると思った。

一人遊びをしていた自閉症児がゲームで遊んでいるところに手を出してくるのは集団への興味の表れとして見ることができる。実際、そのまま集団参加をさせて、意外とすんなりやれてしまうことがある。 仮にその子がゲームを壊そうとするなら、それをプレイしている子が指導者の代わりに、キツすぎない言葉で注意するよう促すことがこれまた療育となる。

みんなでゲームをしているのに別のことに気を取られてしまうなら、「座ってゲームをしますか?それとも、ゲームはやめますか?」と問いかけることで、集団遊びを楽しむには一定の義務が伴うことを教えることができる。

TEACCHの構造化は、刺激を減らし見通しを立ちやすくする点で自閉症のある子が過ごしやすい環境を提供する。かたや構造化をしないことで子どもが多くの物理的・社会的刺激に触れることが、その発達を促すという事もありそうだ。

これはどちらが優れているかというよりも、利用の時間の中で子どもに何を提供するのか、という選択の問題だ。言いかえれば、その教室の持つ発達観・療育観の問題だろう。


現在参加受付中の講座

スーパースターの今・・・

思う所あって滅多に買わない雑誌を買いました。清原の「告白」。

 

清原の話に、思わず背筋が伸びました。症状が「重い」人だ、という認識です。たとえば、こんなつぶやきが。

「僕、野球人生の中で1回も代打をだされたことないんです。でも今は何も1人でできない自分がいる。そのことを受け入れるっていうのは・・・。」(P15)

一読して、そもそもこの人は今公の場で自身の事を語ってよい精神状態なのか?主治医の了解は得ているのか?そんな疑問がよぎったインタビューでした。

しかし、それだけじゃなかったんです。

その後に、親友の佐々木、後輩の立浪、そしてダルビッシュのインタビューがあるのですが、これがなんというか、良い意味でフラットなんです。フラットな先に、彼らの清原に対するある種の信頼、あるいはもっと単純に好意があるんです。

読み終わると「こんなに思ってくれる友達がいるんだったら、清原、大丈夫なんじゃないか」って思うような、そんなインタビューでした。

清原の話だけ聞いていたら、正直救いようがないように聞こえる。しかし、一連のインタビューを読み、清原と彼を取り巻く友人たちの関係が見えてくると、なんか大丈夫な気がしてくる、という大変不思議な読み物なのです。

人は、一人で生きているわけではない。そんなことを考えさせられた一冊でした。


現在参加受付中の講座

7/16 アナログゲーム療育講座 中高生・大人編(後編) です!

7月16日 すごろくや講座は中高生・大人編です。

毎回好評をいただいているすごろくやアナログゲーム療育講座。

7月16日(日)は中高生・大人編(後編)です。

今回は「見通しを立てる力」を身につけるゲームをご紹介します。前編とは独立した内容ですので、前回参加していない方も上のリンクからお気軽にお申し込みください。

学業や仕事で見えてくる「見通しを持つ力」の困難さ

発達障害のある中高生や大人の形が、学業や仕事で直面しやすいのが「見通しを立てて行動すること」の困難です。具体的には以下のような場合が多く見られます。

  • 仕事の優先順位がつけられない
    • AさんとBさんから同時に依頼されると混乱してしまう
  • 長期的な計画に基いて行動することの困難
    • 履修計画やレポート、卒論作成の困難(大学生)
  • 衝動的な行動
    • クレジットカードで払える以上の金額を浪費する
  • 仕事のペースのコントロール困難
    • 締め切り直前になってから慌てて動き出す
    • 仕事を頼まれると断れない

前編で主に取り扱ったコミュニケーションの問題に比べると、見通しを立てることの困難さは後になって明らかになることが多く、支援者にもご本人も明確には意識しづらいものです。

しかし、実際には「できないことでもできると言ってしまう」というコミュニケーション上の課題が、実は見通しを立てることの難しさに起因していることもあるなど、両方の課題が絡まりあって、生活上の困難を着たしている場合が多いと感じています。

テレビ電話を使った遠隔での就労支援の光景。

「見通しをつける力」を身につけるゲーム

次回の講座では、「見通しをつける力」を身につけるゲームとして、「街コロ」と「ボーナンザ」を体験いただく予定です。どちらも中高生の療育と成人の就労訓練で大いに活用していますが、講座での体験いただくのは初となります。

街コロは、「計画的に行動する」ことを学ぶゲームとして最適です。サイコロを振ると、自分が持っている建物に応じたお金を得ることができます。そのお金で新しい建物を買い、さらにもらえるお金が増える・・・、といった具合に拡大再生産を気軽に体験できます。勝利するためには効率の良い拡大計画を作ることが求められます。

ボーナンザは、豆を手に入れて畑に植え、育てて収穫してお金を得るゲームです。植える豆は他のプレイヤーとの交渉で手に入れることができます。「見通しを持って行動する」ことと「相手の立場に経ってコミュニケーションする」ことの両方が学べるゲームです。

指導ポイントの見極めが大切

この二つのゲームは普通にプレイしただけで、誰もが「見通しを持って行動する練習になる」とわかる強力な説得力があります。それだけに、「ただプレイさせるだけ」になってしまいがちなのですが、それでは療育や就労訓練としては不十分です。

学業や就労上の直面しやすい困難と結びつけて、プレイの際にどんなポイントを重視し、どう指導に繋げていくのか、これまでの経験を踏まえて解説します。

 

6/17学童編(後編)ご案内&アドラー心理学「共同体感覚」について

6/17学童編(後編)は、心理面へのアプローチがテーマです

毎回好評のアナログゲーム療育講座、次回は6月17日(土)の学童編(後編)です。「周囲に関心を持つ」「人と関わる勇気を回復する」といった心理面へのアプローチについて解説します。

ゲームを使ってお子さんと関わっていくと、様々な課題が見えてくるはずです。

たとえば、

  • 「ゲームに参加しようとしない」
  • 「わざとルールに反する行動をする」
  • 「暴言をいう・「暴力をふるう」
  • 「負けるとかんしゃくを起こす」

といったことです。

問題行動の背景には、過去の失敗体験から来る集団参加への不安が影響している場合が多いです。こうしたお子さんの心理にどうアプローチしていくのか、ゲーム体験を混じえて解説します。

前編を聞いていない方でも理解には全く支障はありません。下記のすごろくやサイトからお申込みをどうぞ。前編は開催日前に満席になってしまいましたので、今回も早めの申込をオススメいたします。

アプローチの軸となるアドラー心理学の「共同体感覚」

お子さんの心理面の課題を探る上で手がかりとなるのがアドラー心理学です。

フロイト、ユングと並んで「世界三大心理学者」と呼ばれるアルフレッド・アドラー。数年前に関連書籍がベストセラーなり、ドラマ化もされるなど、我が国でも一躍話題になりました。

アナログゲームを療育で特に重視しているのが、アドラーが提唱した「共同体感覚」という概念です。

共同体感覚は、下記の三つから成り立ちます。

  • 自分は人から助けてもらえる(他者信頼)
  • 自分は人の役に立てる(自己信頼)
  • 自分はここにいてもよい(所属感)

この三つを感じている時、人間は幸福であるとアドラーは述べています。

なぜこの三つなのか、どうやったらこれらの感覚を持てるのか、といった具体的な話は講座に譲りますが、この三つがあれば幸せだ、というのは理屈抜きに共感いただける方が多いのではないかと思います。

自己信頼を育てる

上記三つの要素の中で、アナログゲーム療育で特に重視するのが「自分は人の役に立てる」という自己信頼の気持ちをお子さんの中に生み出すことです。

発達障害児支援で重視される自己肯定感と、アドラー心理学のいう自己信頼との違いは、後者が共同体への貢献によって培われるという点です。自己信頼は「自分は共同体に貢献できる人間である」という実感を意味しており、「貢献感」とも言われます。

他の二つ、「自分は人から助けてもらえる」「自分はここにいてもよい」という感覚は既存の療育や支援でもある程度提供できていると思いますが、「自分は人の役に立てる」という自己信頼(貢献感)をお子さんに実感してもらえる療育や支援というものは、これまであまりなかったのではないかと思います。

アナログゲームで共同体感覚を身につける

アナログゲームは、お子さんが「自分は人の役に立てる」という自己信頼を身につけるためにとても有用なツールだと考えています。

なぜなら、アナログゲームにおいては、プレイヤーたちは優劣を競うライバルであると同時に、ルールを守り合ってプレイしあう点で「ゲーム」という1つの共同体を成立させるために貢献し合うパートナーでもあるからです。「ルールを守ってゲームを成立させる」ということ自体が共同体への貢献となるのです。

のみならず、こちらの「禁断の砂漠」のように、勝敗を競う代わりに、協力しあって共通のゴールに向かうゲームも存在します。

協力して一つのゴールを目指す 「禁断の砂漠」

6月の講座では、これ以外にも共同体感覚を身につけるのに有益なゲームをたくさん紹介したいと思います。

6月 7月のアナログゲーム療育講座

現在募集中の講座は他に二つあります。いずれもリンク先から申込みが必要です。皆様と会場でお会い出来るのを楽しみにしています。

 

6月11日(日) 東大島文化センター(江東区)

アナログゲーム療育~楽しくコミュニケーション力を身につける~

初となる5時間の講座です。すごろくやで開催している幼児編と学童編をあわせた内容です。アナログゲーム療育に知りたいという方にオススメの講座です。

 

 

7月16日(日) すごろくや講座 中高生・大人編(後半)

就労に必要となる、コミュニケーション力や見通し力を身につけるためのゲームを紹介します。

 

 

 

発達障害のある大人の方の状態像と対応

すごろくや講座5/21は中高生・大人編です

昨日のすごろくやアナログゲーム療育講座「学童編」はおかげさまで定員一杯のご参加をいただき、好評のうちに終了しました。

次回5月21日(日)は、「中高生・大人編」です。こちらはまだお席があります。お申込みは下記のサイトから。ご参加をお待ちしています。

 

発達障害のある成人の複雑な状態像

「中高生・大人編」の開催に先立ち、発達障害のある成人の方がどんな状況にあるのかを整理してみたいと思います。

私は現在、四ヶ所の通所施設で、定期的にアナログゲームを使ったコミュニケーション訓練を行っています。こうした施設には、社会参加の意欲はありながらも、障害その他の事情で就職が難しい方が通われています。

こうした方々の状態像を整理していくと、大きく三つのタイプに分けられます。

  1. 朗らかで人付き合いもよく、一見して障害の存在が見えないが、複雑なコミュニケーションや先の見通しが求められる課題において、相手の立場にたって考えたり、先の見通しの想像することの困難さが見える方々。人当たりは好いので面接は通るが、就労継続が難しく職を転々としている場合が多い。     
  2. 過去にいじめや強い叱責を受けたことが原因で、人との関わりに不安があったり、自己肯定感が低いなどの、心理的な課題を抱える方々。第一印象として暗さや気弱さが目立ちます。他方で、業務遂行能力は高いことが多く、安心できる環境ではパフォーマンスを発揮できる可能性が高いです。
  3. 能力面、心理面共に大きな課題はないが、体調が不安定で通所が難しい方々。朝起きられない、不定期に休むなどで規則正しく通所すること自体が難しい。就労継続の難しさが予想されます。

こうしてまとめてみると、障害特性だけでなく心理面、健康面でも課題を抱える方が多く、全体として子どもより複雑な状態像を呈していることがわかります。

写真は奈良の就労移行支援施設「ぷろぼの高の原事業所」さんでの実践。スカイプを使って遠隔で就労訓練を行うという他にない試みを行っています。(施設・利用者様双方の了解を得て写真を掲載しています)

 

アナログゲームでどんなアプローチができるか

アナログゲームで就労訓練を行った時、上記の3タイプの中で、最も顕著な変化が見られるのは2の心理面の課題を抱える方々です。人前で自分の話をしたり、他の人と関わるようなプログラムへの参加に抵抗感を感じる方が多いですが、ゲームであれば自分が何をすれば良いのか明確なので参加のハードルが低くなります。

そしてゲームを楽しむ過程で不安感が払拭されると、表情が和らぎ、積極的な発言も聞かれるようになります。こうして人と関わる自信がついたことで、他の自己開示的なプログラムに参加したり、地域活動に関われるようになったケースがあります。

3の体調面に不安を抱える方は、一見ゲームではどうにもならないと思われるかもしれませんが、実は意外な形で貢献ができることがわかってきました。「ゲームが楽しいから」という理由で、朝起きられなかった人が頑張って起きて午前中のプログラムに参加できるようになったり、来所頻度が不安定だった人が安定して通えるようになることがあるのです。

体調管理の問題は、視点を変えれば日々の安定した生活習慣をどう築くか、という問題です。通所施設としてアプローチするのが非常に難しいのです。その難しい問題に「楽しさ」というゲームならではの強みで貢献できることは、大きな発見でした。

1の、複雑なコミュニケーションや計画的な行動に課題を抱える方々へのアプローチは、最も難しいです。こうした方々には、発達障害の特性や軽度の知的な遅れの影響が強く伺われます。子どもの場合であれば、発達段階にあわせた療育をすることでゆっくりながらも発達を望めるのですが、大人の場合はそうもいかず「できることはできるが、できないことはできないまま」という形になりがちです。

しかし、子どもにはない大人の方の強みは、自らの課題を客観的に理解し、改善のための工夫を行えるということです。たとえば、ADHD的な集中困難がある方で、度々ルールの聞き漏らしがあり、プレイ中に誤った判断をする原因になってしまっている方がいました。その方は工夫して、ルールをメモ帳に書きとめるようにした結果、ルールの勘違いがなくなりプレイ中も間違いのない判断ができるようになりました。これは明らかに就労につながる成長だと思います。

療育とはちがった大人の就労訓練

このように、大人の就労訓練は子どもの療育と通じる部分はありつつも、また違った考え方やアプローチが必要になってきます。講座ではこのあたりを様々なゲームの紹介・体験を混じえてお伝えしたいと思います。