幼児期のアナログゲーム選びのポイント

 幼児向けゲームのリストを制作!

アナログゲーム療育で用いている幼児向けゲームのリストをすごろくやさんにまとめていただきました。

このリストは、下記のような基準で選んでいます。

  • 幼児、または知的障害や自閉症を伴う小学校低学年のお子さんの認知・思考の発達段階に見合うもの
  • 上記の範囲内で、比較的幅広い発達段階のお子さんに適用できるもの

みなさんの指導・関わりの参考になれば幸いです。

幼児期のゲーム選びのポイント

幼児(または知的な遅れのある)お子さんが発達段階にあわせたゲームで遊ぶことで、言葉や数の理解を促したり、集団の中でルールを守って遊ぶことを学んでもらうことができます。

他方、幼児のお子さんの物の見方や考え方は、様々な点で大人と異なっています。この点を理解しておくことで、幼児のお子さんと楽しく遊び、療育としても成果を出しやすくなります。以下、ゲーム選びや関わり方のポイントを解説します。

見た目や音、感触で興味をひくゲームを

言葉や思考が発達途上にある幼児期のお子さんは、見た目や音、感触といった、感覚に訴えるゲームにより強い興味を感じます。これは、言葉のない2歳以前のお子さんや、知的障害を伴う自閉症をお持ちのお子さんについては特にあてはまります。

こうしたお子さんの場合、ゲームに誘ってもすぐには参加してくれない事が多いです。しかし、ゲームに使うボードや道具が立体的だったり、色鮮やかで触ってみたくなるようなゲームを選ぶと、興味を持って参加してくれる可能性が高くなります。

たとえば、上記リスト内の「マイファーストゲーム・フィッシング」は磁石で魚を釣る時の「パチン!」という音と感触が子どもたちの興味を強く惹きます。

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こちらのスティッキーもオススメです。

幅広い発達段階のお子さんたちを一つの集団で療育 「スティッキー」

まずはゲームを触らせてみる

5,6歳ともなれば言葉の扱いや思考も発達していますが、それでも大人に比べれば見た目や触感への興味がまだ強く残っています。

そのため、この年代の子どもたちは、大人がルールを説明しているときに、話を聞かずに目の前のコマやボードをいじくりまわしてしまうことがあります。

こういうときはルールを説明するより先に、ゲームのコマやボードに自由に触れる時間を2~3分取ってあげます。こうしてお子さんの感覚的な興味を充分満たしてあげた後でルール説明を始めれば、集中して聞くことができます。

戦略的思考はまだ難しい

幼児のお子さんは、ルールに従ってゲームをプレイすることはできますが、「AとB、どちらの選択がより勝利に近いか」といった風に、戦略的に考えてより望ましい選択を選ぶことが難しい場合が多いです。

そのため、幼児のお子さんに用いるゲームは、判断や選択の要素がなく、ルールに従って行動しているだけでよいものが中心です。

こうしたゲームは勝敗が運で決まってしまうため大人にとっては少々退屈に思えてしまいます。そのため、特に「ゲーム好き」な大人が幼児のお子さんと遊ぶ場合、戦略的なゲームばかりをチョイスしてしまう傾向があります。お子さんはルールに従うことはできるのでゲーム自体は成立するものの、戦略的な面白みは体験できていません。

こうしたことから、幼児のお子さんと遊ぶとき、大人は自分が選んだゲームがお子さんにとって難しくなりすぎないように注意する必要があります。

3月のすごろくやアナログゲーム療育講座は「幼児編」です。

毎月東京・高円寺にあるすごろくやさんで開催させていただいているアナログゲーム療育講座。

3月26日(日)は、「幼児編」として就学前のお子さんや知的な遅れや発達障害のある小学校低学年のお子さん向けに、上記で紹介した以外にもたくさんのゲームを紹介します。実際にゲームをプレイしながら学ぶことで、実践的なノウハウを身につけることができます。

講座の申込みは下記のリンクからどうぞ。毎回満席になっているので、お早目の申込みをオススメします。

3月26日(日) すごろくや アナログゲーム療育講座 幼児編

色や名前の世界を拡げる「楽しい色並べ」

今回ご紹介する「楽しい色並べ」は、お子さんの色や名前の世界を拡げていくのに役立ちます。

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販売サイト:楽しい色並べ(百町森サイトより)

二種類のカードを並べていく

楽しい色並べには、全8色からなる「絵の具」カードと、それぞれの色を代表する動物や食べ物、身の回りの品が描かれたカードが入っています。

まだ色と名前の関連がきちんとついていない子の場合、いきなりゲーム形式ではなく、絵カード同士の合致させる課題として提示してみましょう。

  •  最初に、色合せの基準となる「絵の具」カードを机に並べます。8色ありますが、初めは半分の4色くらいから始めるのが良いでしょう。
  • 次に、指導者イラストが描かれたカードを一枚めくってお子さんに渡し、同じ色の絵の具カードの上においてもらいます。
  • この際、指導者は「これは何かな?」「これは何色かな?」と問いかけ、お子さんにカードに描かれた物の名前と色と答えてもらいます。
  • お子さんがカードを正しい場所に置き、正しく名前と色を答えられたら拍手やハイタッチで褒めてあげましょう。
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絵の具カードの上に、その色と同じ色を持つカードを並べていく。初めは4色から。

名前と色を答えてもらうのがポイント

正しい色同士をマッチングできただけで良しとせず、お子さんに物の名前と色を正しく答えてもらうことが大切です。

なぜなら、サクランボを赤い絵の具の上に正しくおけたとしても、「これは何色?」と問うと、「青」と答えてしまうなど、色と名前の関係が確立していないお子さんもいるからです。

それができるようになったら今度は8色の絵の具カードを全てを並べてみましょう。お子さんによっては、オレンジ色と黄色の違いが区別できなかったり、白と黒の無彩色が理解が難しい場合があります。

そんなときは、絵の具カードとイラストのカードを見比べさせ「こちらはオレンジ色、こっちは黄色」といった風に違いを説明した上で、「黄色はどこかな?」と改めて問いかけ、正しい場所に置かせます。

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お子さんが慣れてきたら、8色全てを使う。黄色とオレンジ色の判別が難しかったり、白・黒の無彩色の理解が難しい子がいる。

ゲーム形式でシンボルの世界を拡げる

 指導者が提示するカードをお子さんがスムーズに並べられるようになったら、いよいよゲーム形式での指導に入ります。

  •  全てのカードを良く切り、一人6枚ずつ配ります。
  • トランプの7並べのように、順番に1枚ずつカードを場に出していきます。
    • 絵の具カードはいつでも出せます。
    • 場に出ている絵の具カードと同じ色のカードを出すこともできます。
  • 最初に全ての手札を場に出せた人が勝ちです。
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どのカードなら出せるかな?正解はオレンジ色のキツネ。手持ちの札の中から出せるカードを選び出す必要があるので、幼児のお子さんにとっては難易度が高い。

このルールでは、場にある絵の具カードと合致する色のカードしか出すことができません。お子さんは、「手元の中から合致するものを選ぶ」といったやや複雑な手続きを行う必要があり、その過程で物と色の関係をより柔軟に理解することができます。

色や名前の世界を拡げていくステージ2

今回ご紹介した「楽しい色並べ」は、3~4歳向けで、ステージ2の前半を代表するゲームと言えるでしょう。

ステージ2の療育課題は、シンボル同士の関係を確立し、シンボルの世界を拡げることです。シンボルとは、色や名前、あるいは数などの記号を指します。

「楽しい色並べ」のようなゲームを使って、色や名前といったシンボルの合致をくりかえすことによって、お子さんの思考の世界を拡げ、コミュニケーションを豊かにしていくことができます。

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販売サイト:楽しい色並べ(百町森サイトより)

 

ステージ2 シンボルのスムーズな操作を促す

ステージ2「前操作期」

今回は、アナログゲーム療育のステージ2を解説します。健常児のお子さんで、3~7歳に当たります。

この時期のお子さんはシンボル機能が確立することで、言葉が話せるようになるのを始め、数、そしてゲームに欠かせないルールの理解ができるようになっています。

この時期のことをピアジェは「前操作期」と呼んでいます。ここでいう操作、とはシンボル機能の操作を指します。「前操作期」とは、シンボルは形成されているものの、それらを自由に操れる手前の段階にある、という意味です。

「ごっこ遊び」が出てくる

ステージ2のお子さんは、シンボル機能が形成されることで、他のお子さんとシンボルを共有しあって集団で遊べるようになります。

おままごとであれば、「私はお母さん、あなたは赤ちゃん」といった風にお互いの役割を演じることができるようになります。このとき「お母さん」というシンボル、「赤ちゃん」というシンボルをお互いの間で共有できているからこそ、おままごとが成立するのです。

ゲームについても、ステージ2のお子さんは「ルール」というシンボルを共有することができるので、子ども同士で遊べるようになります。

シンボルのスムースな操作を促す

シンボル機能が形成されたことで遊びの幅が大きく拡がるステージ2のお子さんですが、限界もあります。

たとえば数の扱いです。おはじきを提示して「これはいくつ?」と聞いてみると、1つや2つなら答えられますが、5つや6つになると正しく答えられなくなってしまうことがあります。また、足し算、引き算はまだ難しいことが多いです。

そのためステージ2の目標は、シンボルをスムースに操作できるようになることです。

アナログゲームは「名前」「数」「色」「形」などたくさんのシンボルの集まりであり、それらをルールに従ってプレイすることが、シンボル操作の練習になります。

 

シンボル操作を練習するアナログゲーム

たとえば、以前ご紹介した「雲の上のユニコーン」は、お子さんの数概念の獲得を促すのに最適です。

数概念を身につける「雲の上のユニコーン」

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またステージ2のお子さんについて、数概念と並んでチェックしておきたいのが空間認知能力です。

空間認知能力は、物の大きさや向き、あるいは奥行きなどといったものを正確に把握できているかどうか、ということです。

この能力が特異的に遅れている場合、書字や図画・工作が極端な苦手さを示すことが多いです。また片付けが出来なかったり物をなくしてしまうといった生活上の課題にも影響を与えます。

 お子さんの空間認知能力を測るのに最適なのが、「メイクンブレイク」です。

作業ができたら報告する「メイクンブレイク」

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指導者はオーバーリアクションで

ステージ2に入ったばかりのお子さんは、ゲームをプレイする中で何が自分にとって望ましい行動なのか、何が残念な行動なのか、十分理解できていないことが多いです。

従って、指導者はお子さんのプレイが望ましい結果を生みだしたら「やったね!上手にできたね」と積極的に声掛けしてするとともに、拍手やお子さんとハイタッチをしてあげるなど、ややオーバーリアクション気味に接してあげましょう。そうすることで、お子さんは「これは望ましい行動なんだ」ということが分かります。

(株)LITALICOのLeafで実践&名前をつける「ナンジャモンジャ」

Leafプログレスにてアナログゲーム療育を実践!

さる3月21日Leafプログレス所沢教室にて、アナログゲーム療育を実践させていただきました。

Leafプログレスは先日マザーズに上場した(株)LITALICOが運営する発達障害のあるお子さん向けの学習塾です。障害特性に応じた学習支援に加え、コミュニケーションや行動面のサポートにも力を入れておられます。

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お子さんに実践する前に、スタッフさん向けのプチ研修を実施。

Leafさんの特徴の一つとして、教室内にカメラが設置されており、このカメラを通じて、保護者さんがモニタでレッスン中のお子さんの様子を見られるようになっています。

保護者さんにとっては大変有り難い仕組みだと思いますが、指導する側にとっては中々に緊張感があります(汗)。

 

障害特性以上に見えてきたものは・・・

今回はLeafに通う発達障害のある小学4年生から中学1年生までの7人のお子さんが参加され、2時間で5種類のゲームを遊びました。

セッションを通じて特に印象に残ったのは、お子さんの障害特性や認知特性よりも、「集団に参加することへの不安感」でした。

たとえば、促してもゲームに参加しようとしなかったり、わざと他の子の失敗を馬鹿にするような発言をして自分を強く見せようとする子がいました。

過去に学校などで集団参加に失敗した体験があると、未知の集団に参加するときお子さんの中に「失敗して恥ずかしい思いをするんじゃないか」「他の子に馬鹿にされるんじゃないか」という不安が生まれ、その結果、失敗したくないから集団に参加しない、馬鹿にされたくないから他の子を馬鹿にするといった、自己防衛の動きが出ます。

こんなときは、子どもたちの中に「自分はこの場に受け入れられているんだ」「失敗してもいいんだ」という安心感を作ってあげることが大切です。

そうした安心感ができて防衛が解けると、子どもたちはそれまでとはうってかわって、積極的に課題に取り組んだり、コミュニケーションを活発に試みたりするのです。

 

謎生物に名前をつける「ナンジャモンジャ」

子どもたちが集団の中で安心して遊べる。今回、そんな場作りに一役買ってくれたのが、「ナンジャモンジャ」というゲームでした。

ナンジャモンジャのカードには、なんとも説明のしがたい奇妙な生物のイラストが描かれています。このカードを一枚ずつめくり、ひとりずつ順番にその生物に自由に名前をつけていきます。

めくっていくうち、先ほど名前をつけた生物のカードが再び出てくる事があります。そのときに先ほどつけた名前を一番早く言えたプレイヤーが、それまでめくったカードを取ることができます。

全てのカードをめくり終えたとき一番たくさんのカードを取った人が勝ちです。

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なんとも奇妙な「ナンジャモンジャ」の生物たち。

上の写真で、子どもたちがつけた名前は、左から「みどりん」「みどりモジャモジャ生物」「サンフランシスコ」「おばさん」。 

カードをめくったとき、名前のついたカードだったら「みどりん!」「サンフランシスコ!」といった具合に、素早く名前を言うのです。

特に「みどりん」と「みどりモジャモジャ生物」がまぎらわしく、言い間違いが続出して、みんな大笑いでした。

こうやって、失敗をしたことも含めてみんなで笑い合いながら遊ぶことができると、当初参加しなかった子も自然に輪の中に入ってきました。馬鹿にするようなことを言っていた子も、そうした発言がなくなって代わりに笑顔がでてきました。

このナンジャモンジャがきっかけになって、それ以降のゲームが大きく盛り上がり、子どもたちの熱気でこの季節なのに教室に冷房を入れなくてはならないくらいでした。

 

一番難しかったゲームは・・・

さて、ゲームが終了した後、子どもたちに「今日何のゲームが一番難しかった?」と聞くと、一番もりあがったはずの「ナンジャモンジャ」でした。

「ナンジャモンジャ」はとてもシンプルなゲームですが、実は「自由に名前をつける」という創作的な要素を含むコミュニケーションは、発達障害の中でも特にASDのあるお子さんには難しいことがあるのです。

笑顔で盛り上がっていた子どもたちでしたが、一人ひとりは必死で名前を考えていたんですね。でも、そうやって一生懸命考えた名前で、みんな楽しく盛り上がれたわけですから、きっと集団で過ごす自信もついたのではないかと思います。

 

親御さんたちの反応は・・・

後に教室長さんに伺ったことですが、こうした子どもたちの様子を、親御さんたちはカメラを通じて、笑顔で見ておられたとのこと。

終了後の私から親御さんへのフィードバックの時間では、「自宅でもやらせたいけれど、これらのゲームはどこで売っているのでしょうか」「普段の遊びではかんしゃくを起してしまって困っているんですが・・・」など、活発な質問をいただき、非常に高い関心を持っていただけたようです。

今回のLeafさんでの実践を通じて、発達障害のあるお子さんの場合、コミュニケーション能力の育成もさることながら、それ以前に「安心して他の子と楽しく遊べた」という経験が繰り返し出来る場を用意してあげることが大切であることを、改めて実感しました。

こうした場が増えるよう、今後ますます活動のフィールドを拡げていきたいと思っています。

数概念を身につける「雲の上のユニコーン」

数概念に遅れが見られるBくんのケース

前回の療育で、数概念の形成に課題があると思われた小学2年生Bくん。

今回は「雲の上のユニコーン」というゲームを使って、数概念の形成を促しました。

雲の上のユニコーン

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「雲の上のユニコーン」は、キラキラした宝石が子どもたちの興味を惹きつける人気のゲームで、この宝石をなるたけたくさん集めるのがプレイヤーたちの目的です。宝石を数える過程で楽しみながら数概念の獲得を促すことができます。

宝石をたくさん集めた人が勝ち

「雲の上のユニコーン」のルールを解説します。

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  • それぞれ1~3までのサイの目が刻まれた二つのサイコロがあります。
  • プレイヤーはまず水色のサイコロを振って出た目の数だけユニコーンを進めます。
  • 止まったコマがピンク色であれば、ピンクのサイコロを振り、出た目の数だけ宝石をもらえます。
  • 一番最初にゴールした人は宝石を4つもらうことができます。
  • 誰かがゴールしたらゲームは終了。宝石を一番多く集めた人が勝ちです。

Bくんの理解度をチェック

最初に、Bくんがどれくらい数の概念を理解しているかを調べるために、いくつか宝石を並べて数えさせてみました。

その結果、彼は2つまでであれば指で数えて正しく答えることができますが、3つ以上になると、数を数える指が飛んでしまい、正しくカウントすることが難しいことがわかりました。

そこで、私と、指導員の先生、Bくんの3人で「雲の上のユニコーン」を遊びながら、まずは1 ~3までの数の概念をしっかりと身につけてもらうことにしました。

Bくんがピンクのコマに止まったときは、箱に入った宝石を見せながら「いくつ取ったら良いかな?」と問いかけました。

最初は手当たり次第に宝石を取っていたBくんですが、私が「今でたサイコロの目はいくつ?」と問いかけ、Bくんが「2つ」答えるなど、その都度確認をしながらサイコロを取らせていくうち、やがて私の指示がなくとも、サイコロの目と同じ数だけの宝石を取れるようになりました。

「量の保存」の概念は形成されているか

このゲームを通じて、もう一つチェックしておきたかったのはBくんが「量の概念」をどれくらい身につけているか、ということです。

ゲームの中盤、宝石の獲得数が私が5つ、指導員さんが5つ、Bくんが7つとなったときに、「今一番たくさん宝石を持っているの誰?」と聞きました。Bくんは指導員さんを指差しました。

なぜBくんは間違ってしまったのでしょうか?

そのことを確かめるため、いったんゲームを中断して、子どもの認知能力を研究した心理学者ピアジェが行った、ある有名な検査を行いました。

雲の上のユニコーン

 

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Bくんに、上の写真のように「広い間隔で並べた5つの宝石」「狭い間隔で並べた6つの宝石」を2列に並べて提示し、「どちらの宝石が多い?」と聞きました。するとBくんは上段の5つの宝石の列を差しました。

実は、Bくんのように量の概念が充分発達していないお子さんの場合、みな同じ間違いをすることがピアジェの研究によって明らかになっています。

量の概念が充分発達していないお子さんの特徴として、「実際の数よりも見た目が優先する」ということがあります。上の実験では、子どもは宝石の数ではなく、並んでいるの列の長短を見て、長い方が多いと判断してしまうのです。

先のゲーム中、指導員さんの宝石が5つ、Bくんの宝石が7つであるにも関わらず、彼が指導員さんの宝石が一番多いと指差したのも、その直前に「指導員さんが3つの宝石を獲得した」という映像的なイメージが、実際の宝石の数よりも優先された可能性が高いと考えられます。

量の概念の形成を促す

ピアジェによれば、子どもが見た目に惑わされず、実数で正確に判断できるようになるのは7歳以降であるとされています。

Bくんはちょうど7歳ですから、上の実験で間違えてもそれほど心配する必要はないのですが、やがては正確に量を把握できるよう、療育を進めていきたいところです。

この点、「雲の上のユニコーン」は量の概念を身につけてもらう上で優れた教材です。ゲームが終わったあとで盤面をひっくり返すと、各プレイヤーごとに得た宝石を並べて順位を比較できるようになっているからです。

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このようにグラフ形式で提示すると、Bくんも誰が一番だったのかを理解することができます。こうして自分の順位を分かりやすく見せることで、少しずつ量概念の形成を促していくことができるのです。

「ありがとう」「どういたしまして」の練習もできる

「雲の上のユニコーン」はもう一つ特徴があります。「他の人にものをあげる」「受け取ったらお礼を言う」という練習ができるのです。

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写真のプレゼントマークのコマに止まったとき、サイコロを振った数だけ、他の人に宝石をあげげます。

このルールがあることでゲーム中で誰かに宝石をあげたり、受け取ったりする機会を作り出すことができるため、「宝石をもらった時は『ありがとう』と言う」または「『ありがとう』といわれたら『どういたしまして』と言う」といった、物のやりとりに関わる初歩的なソーシャルスキルトレーニングが行うことができます。

認知能力を踏まえたコミュニケーション療育を

Bくんの場合、「ありがとう」「どういたしまして」というコミュニケーションはとても上手にできました。そればかりか、「さっきこっちの人に宝石をあげたから、今度はこっちの人にあげる」といった具合に他者への平等さをも意識して振る舞うことができました。

このようにコミュニケーション面ではとても高い能力を見せるBくんですが、そんな彼にも前回の記事で示したように「順番が守れない」というコミュニケーション上の課題があります。その背景には数概念の形成の遅れがあり、いつ自分の順番が回ってくるのか把握するのが難しいという理由があります。

このように認知能力とコミュニケーション能力には密接な関わりがあります。従って、コミュニケーション上の課題を解決するためには、その背景にある認知能力をも意識して療育することが極めて重要なのです。

集団参加への勇気を取り戻す 「キャプテン・リノ」

 ゲームは楽しいばかりでなく、不安なもの

私がアナログゲームを使って発達障害の子どもたちの療育をしていると言うと、「ゲームの世界なら失敗しても怖くないから、お子さんも安心して取り組めますね」という感想をいただくことがあります。

私も最初はそう思っていたのですが、実際には違いました。

発達障害のあるお子さんたちを対象にアナログゲームを行う場合、まず最初に感じるのは彼らの強い不安感、緊張感です。この記事で取り上げたように、自分の不安感を隠して強さを誇示するため、わざと暴力的になる子もいます。

子どもたちのこうした不安・緊張の背景には、過去の失敗体験が大きく影響していると私は考えています。発達障害のあるお子さんは、注意や衝動の調整困難、あるいは認知の偏りといった障害特性により、同年代のお子さんとの遊びの中で失敗を繰り返し、笑われたり、集団から排除された結果「みんなで輪になって遊ぶ」ということに対して強い不安感を持っていることが多いのです。

集団遊びに不安感を感じるお子さんにとって、ゲームは楽しそうに見える反面、不安で恐ろしいものに見えています。ゲームは、自分の行動が成功したり失敗したりする様子が、他者の目にハッキリ映るからです。

ゲームに参加したがらない子どもたち

不安が強すぎて、そもそもゲームに参加しようとしないお子さんも一定割合います。理由を聞くと、「難しそう」「こういうの苦手だから」と答える子が多く、もっと率直に「負けるのが嫌だから」と言う子もいます。

こうした子たちは、いわば「集団参加への勇気が挫かれている状態」にあります。しかし、もし勇気を振り絞ってゲームに参加し「最初は不安だったけど、やってみたら楽しかった」という思いを持てたなら、その経験は別の場面、たとえば学校や地域で集団参加するときの勇気を取り戻すことに繋がるはずです。

見た目のインパクトNO.1 「キャプテン・リノ」

では、不安が強くゲームの輪に入ろうとしないお子さんに、どうしたら参加してもらえるのでしょうか。お子さん自身の過去の経験に根ざした困難ですから、小手先のテクニックではどうにもなりません。

こういうときは、お子さんの「怖い、やりたくない」という気持ちよりも、「面白そう、やってみたい」という気持ちが上回るようにするしかありません。一種の力勝負です。

ここでアナログゲームの本領が発揮されます。アナログゲームは本来は誰かに「面白い」と思ってもらえるため作られたものなのですから。

今回ご紹介するキャプテン・リノは、初対面の子どもたちが集まるゲームイベントなどで、ゲームに不安を感じているお子さんに興味をもってもらうためによく用いるゲームです。

プレイヤーごとに配られたカードを使って、高いタワーを組み立てて行きます。タワーを崩してしまった人が負けです。前の人が置いたカードにキャプテン・リノの描かれたマークがあると、キャプテン・リノ人形をそのカードの上におかなければならないため、難易度がグッと上がります。

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キャプテンリノのマークの入ったカードが置かれると、次の人はキャプテンリノ人形をカードの上に載せなければならない。ドキドキ。

上手く積み上げるとタワーの高さは1m以上になりすごい迫力があります。「いつ崩れるか・・・」と子どもたちが感じるスリルも最高潮になります。

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崩さずに積み上げると相当な高さに。見た目のインパクトはNO.1。

参加しない子は、まずは見学してもらう

ゲームが不安で参加を渋る子がいた場合、無理に参加させようとはせず、まずはほかの子がプレイしている様子を見学してもらいます。

積み上がるタワーのビジュアル的なインパクトや、そこに一喜一憂する子どもたちの歓声は、見学中のお子さんにとって、ゲームに興味を感じるきっかけとなります。

そして一度ゲームを見学することで、どうすれば成功でどうすると失敗なのかプレイイングに対する見通しがつけることができます。このことはお子さんの安心感に繋がります。

このように見学を通じてお子さんの興味と安心感を高めておければ、二回目のプレイの際、改めて促すことでゲームに参加してくれる可能性が高くなります。

高層マンションを組み立てていく「キャプテン・リノ」こちらも幅広い年齢層が遊べるゲームとしてゲーム会では定番です。

NPO法人EDGEで開催したアナログゲーム療育体験イベントの一幕。初対面同士、最初は緊張・不安の面持ちだった子どもたちが、キャプテン・リノでワッと盛り上がった。

最初不安だった子ほど意欲的に取組む

興味深いのは、最初不安感が強くゲームへの参加を渋っていた子ほど、一旦ゲームに参加すると誰よりもプレイを楽しみ、ゲーム会が終わる頃には「またやりたい!今度はいつ来てくれるの?」と言ってくれることです。

こういう時、その子は単にゲームが楽しかっただけでなく、不安を乗り越え集団に参加できたことへの喜びを感じているのです。この喜びが、人と関わる勇気を回復させることに繋がります。

このようにアナログゲームには、集団参加に対する不安を感じている子を、その不安を上回る興味で惹きつけて参加を促し、結果として人と関わる勇気を回復させる力があります。

この「勇気を回復させる」ことは、コミュニケーションスキルの獲得と並んで、アナログゲーム療育の重要な目的の一つだと考えています。

 

作業ができたら報告する「メイクンブレイク」

積み木課題をゲーム化

メイクンブレイクは、提示された見本どおりに積み木を積み上げ、時間内により多くの課題を完成させた人が勝ちとなるゲームです。

見本通りに積み木を積み上げることは、眼と手の協調性を高める目的で、発達障害のあるお子さんに最もよく用いられる療育課題の一つです。

メイクンブレイクは、その積み木課題にゲーム要素を取り入れ、よりお子さんが楽しめるように工夫されています。

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自分でタイマーをセットする

メイクンブレイクは、最初にお子さんがサイコロをふり、出た数字にあわせたタイマーを自分でセットします。

そしてスタートボタンを押し、積み木を組み立て始めます。見本通り完成したら「できました」と報告します。

指導者は、完成した積み木が見本通りであれば、次の課題を提示します。タイマーが切れるまで全部でいくつの課題ができたのかを競います。

実際のプレイの様子はすごろくやさん製作の動画を御覧ください。

 

お子さんの自主性を育む

メイクンブレイクを用いたトレーニングでは、指導者はできるだけお子さんにアドバイスしないようにすることが大切です。

「サイコロを振り、出た数字に合わせてタイマーをセットする。心の準備ができたらスタートボタンを押し、出された課題通りに積み木を組む。完成したら『できました』と報告する」

という一連の流れを、指示がなくとも自律してスピーディにできるようになることがこの課題の目標だからです。

自閉症のあるお子さんの中には、視覚認知に優れ、目で見たものを正確に描いたり、細かいパズルを素早く作れる子がいますが、そうした子の場合、メイクンブレイクで大人も驚くようなスピードで積み木を組み立てることができます。

ところが完成を報告する段階で、つまづいてしまうことが多々あります。

ほぼ見本通りにできているのに、積み木の位置や向きの些細なズレを修正することにこだわりすぎ、いつまで経っても「できました」と報告せず、そのまま時間切れになってしまうことが多いのです。

 

職場で現れるこだわりの強さ

この「ささいなことにこだわりすぎて作業が進まない」という問題は、自閉症のある大人の人が職場で働くときにしばしば見受けられることです。

以前、企業の人事担当者の方から、

「自閉症のある青年を雇って工場のラインで作業させているのだが、ほんのちょっとでも異常があるとすぐに緊急停止ボタンを押してしまう。そのため一日に何度も生産が止まってしまい、効率が悪くなって困っている」

というお話を聞いたことがあります。

異常があったらすぐにラインを停めないといけないのは確かなのですが、その自閉症のある青年の判断基準が厳密すぎるため、、結果的に生産効率が犠牲になってしまっているのです。

ちょうどメイクンブレイクで正しい積み方に厳密になりすぎ、得点の機会を逃してしまうのと同じ形です。

 

状況に応じた適切な判定を、「メイクンブレイク」で学ぶ

大切なことは、自分の基準で判定してしまうのではなく、その場で求められている基準を見て、そこにあわせて判定できるようになることです。

「メイクンブレイク」でその部分を指導することができます。

具体的には、ゲームを進めて行く上で、チェックが厳密すぎるお子さんがいた場合、その子順番を最後に回します。

その上で、他の子が課題を完成させるのを見せ、指導員が「これはちょっとズレすぎてるよ。やりなおし。」あるいは「うーんちょっとズレてるけどこれぐらいならOK」などと判定している場面に注目させます。

その際「さっきのはダメだけど、今くらいのズレならOKみたいだよ。」とアドバイスし、どのくらいの厳密さで組み立てれば良いのか、具体的にイメージを掴ませてあげます

こうした指導により、チェックが厳しすぎたお子さんはその基準を緩め、ほどほどのところで「できました」と報告できるようになります。その結果得点が増え、順位も上がってきます。

こうした経験をくりかえすことで自分独自の基準にこだわるお子さんに、その場その場で求められる基準があり、そこに合わせることで高いパフォーマンスが上げられるという意識をつけてもらうことができます。

その意識は、その子が将来働くときに必要になります。